【SS朗読】36 『てぶくろ』海月大和(作)
概要
日常がドラマになる瞬間ですね。
子どもの描写も巧みです。
読み終えた後は、私の気持ちも暖かくなりました。
海月大和様 承認ありがとうございました。
今後の創作活動も応援しております。
子どもの描写も巧みです。
読み終えた後は、私の気持ちも暖かくなりました。
海月大和様 承認ありがとうございました。
今後の創作活動も応援しております。
語り手: 吉史あん
語り手(かな): よしふみあん
Twitter ID: tsubuyakiaiueon
更新日: 2023/10/22 22:22
エピソード名: てぶくろ
小説名: てぶくろ
作家: 海月大和
Twitter ID: LittleYamato
本編
気付いたのは、スーパーのドアをくぐって少し歩いたときだった。
手袋がない。それも片方だけ。
上着のポケットにねじ込んだだけだったから、おそらく店の中で落としたのだろう。
ふぅ~っと白いため息を吐く。
かたっぽだけの手袋をまたポケットに押し込んだ。
ちょいちょい。
まさにそんな感じで、振り返りかけたぼくの上着を誰かが引っ張った。
「ん」
振り返ると、小さな男の子がぼくの手袋をぼくに突き出していた。
「ん!」
落ちてたとも、拾ったとも言わず、その子はただ手袋を突きつけてくる。
「ありがとう」
しゃがんで目線を合わせ、ぼくはお礼を言った。
手袋をつけたちっちゃな手から、手袋を受け取る。
すると、男の子は何を思ったのか、どういたしましてと言う代わりに、ぼくの頬を両手で挟んだ。
毛糸の柔らかい感触と温かさを感じたのは一秒足らず。
きょとんとするぼくに、男の子はイタズラが成功したときのような無邪気な笑顔を向けて、逃げるように店の中に戻っていった。
そしてその勢いのまま、母親らしき女性の足に後ろから抱き付いた。
微笑ましいその光景を見届けたぼくは、左右揃った手袋を嵌めて家路に着く。
暖かいのは、手だけじゃなかった。
手袋がない。それも片方だけ。
上着のポケットにねじ込んだだけだったから、おそらく店の中で落としたのだろう。
ふぅ~っと白いため息を吐く。
かたっぽだけの手袋をまたポケットに押し込んだ。
ちょいちょい。
まさにそんな感じで、振り返りかけたぼくの上着を誰かが引っ張った。
「ん」
振り返ると、小さな男の子がぼくの手袋をぼくに突き出していた。
「ん!」
落ちてたとも、拾ったとも言わず、その子はただ手袋を突きつけてくる。
「ありがとう」
しゃがんで目線を合わせ、ぼくはお礼を言った。
手袋をつけたちっちゃな手から、手袋を受け取る。
すると、男の子は何を思ったのか、どういたしましてと言う代わりに、ぼくの頬を両手で挟んだ。
毛糸の柔らかい感触と温かさを感じたのは一秒足らず。
きょとんとするぼくに、男の子はイタズラが成功したときのような無邪気な笑顔を向けて、逃げるように店の中に戻っていった。
そしてその勢いのまま、母親らしき女性の足に後ろから抱き付いた。
微笑ましいその光景を見届けたぼくは、左右揃った手袋を嵌めて家路に着く。
暖かいのは、手だけじゃなかった。