【朗読】そして眠りにつく 作:ながる 語り:テトミヤ【その他】

概要

ながる様の『そして眠りにつく』を読ませていただきました。
自由奔放で何処までも行ってしまいそうな君とずっと一緒に居たいのに、勇気が出なくて踏み出せないままの僕の夢のお話。

ながる様、素敵なお話をありがとうございました!

語り手: テトミヤ
語り手(かな): てとみや

Twitter ID: teto_miya
更新日: 2024/06/29 17:04

エピソード名: そして眠りにつく

小説名: そして眠りにつく
作家: ながる
Twitter ID: @nagal_narou


本編

 また同じ夢を見た。
 夢の中の君は少し奔放で、夜空に浮かぶ三日月のソファで話そうと僕の手を引いた。
 夢の中でさえリアリストな僕は「どうやって」と焦るのだけれど、君はそんなことをいう僕の方が解らないという顔をして、真白な翼をばさりと広げる。
 羽ばたきが呼ぶ風はいつも少しひやりとしていた。

 繋がれた手のおかげで、辛うじて僕の身体も空へと登って行く。重力から離れられない自分の重さがいつも心にのしかかっていた。
 翼を広げて、天と地の星の間を一緒に飛べればいいのに。風を作るのも、風を切るのもいつも君だけ。

「僕を置いていけばいい」
「どうして?」
「僕は重い」

 小首を傾げて、君は僕を引き寄せる。君が、近い。

「重くなんてないわ」
「嘘。手が離れれば、僕は落ちる」
「嘘じゃない。あなたが地から離れたくないのも知ってるけど」

 君は少し口を尖らせて、視線を外す。あぁ、次のセリフも、もう分かっているのに。

「一緒に行きたいのよ」

 子供を座らせるように僕を三日月に腰掛けさせ、君も隣に腰掛ける。三日月は少し沈んだようだ。

「あなたがいれば、どこまでも行ける」

 君の指差す先には幾万の星。だから。
 君を地上に留めて置きたくて、僕は翼を出せないのかもしれない。僕が錘にならないと、君はどこまでも行ってしまう。

 臆病な僕は君とどこまでも行く勇気がなくて、でも君とはいたいから。ジャングルジムの上、屋上、山の頂、飛んでいる飛行機、そして、月。徐々に上がる高度に胸がざわめく。
 いつか、行けるだろうか。君の指先が示すところ。並んで風を作れるだろうか。
 僕は地上の星を見下ろし、そして眠りにつく。
1