【朗読】作:はちゃこ「きりとりせん」

概要

紙石鹸のように、やわらかく、やさしいお話です。
飛んで行った爪を、必死になって探しますが、
そういう時は、案外見つからないですよね。
見つからないものを、そんなに神経質になって探さなくてもいいのかと。
気にしなくてもいいんだと語りかけてくれる
素敵な短編小説を朗読させていただきました。

作者のはちゃこ 様、#台本はちゃこ 朗読許可いただきましてありがとうございました。
多くの人がこの作品を朗読してくれたらいいな、そして聴いてくれた人に届けばいいなと願って。


───────────────────

はっぱ子
YouTube  : https://youtube.com/@happako_
stand .fm :https://stand.fm/channels/6279e9aefd1be6fc46658e52
Twitter   : https://twitter.com/happako_

───────────────────

語り手: はっぱ子
語り手(かな): はっぱこ

Twitter ID: happako_
更新日: 2023/10/18 05:01

エピソード名: きりとりせん

小説名: きりとりせん
作家: はちゃこ
Twitter ID: hacha_upa


本編

息子の爪を切る。
あのころは紙石鹸のように薄かった爪が
今は私の手のなかで、ぱちんと音を立てる。
膝の上でおさまっていた手足は、もうはみ出るほど窮屈で。
指先をじっと見つめて、すうすうと上下する背中が熱い。

日常に溶けていく名もなき時間に
私は黙々と、きりとりせんをひいていく。
積み重ねてきた日々との、小さな決別
なんてタイトルをつけながら。

さようなら、小さかったあなた。
過ぎゆく春が、レースのカーテンを揺らす。
ぱちんと、とんでいったちいさな欠片は
目を凝らしても、もう見あたらなかった。
1