聴くっショ!作品を朗読してみた~はちゃこ・プレゼント~朗読:yukisige

概要

「まだいかないで」
言葉は同じなのに、最初と最後でまったく響きが違います。
ギャップのある作品、好きです。

朗読承認ありがとうございました!

語り手: yukisige
語り手(かな):

Twitter ID: @yukisige13
更新日: 2023/06/02 21:46

エピソード名: プレゼント

小説名: プレゼント
作家: はちゃこ
Twitter ID: hacha_upa


本編

「早く死ねたらいいのに」と母が言う。
庭先に咲くポピーが、頷くように風に揺れる。
その言葉の重みを推し量ることもせず、私は答える。

「まだ、逝かないでよ」

母の意向に沿うよう強いられてきた人生。
人の手を借りずには生きられないほど、
年老いた今でも、それは続く。
私が欲しいものは、決して与えてくれなかったくせに
要らないものばかり、仰々しく押し付けてきては、
感謝の心が足りないと叱られた。
なら私も母の教え通り、
あなたにとって必要のないものを贈ろう。

「まだ、楽には逝かないでよ」

粗相の後始末の床に、そっと吐き捨てた言葉。
一人娘の手厚い介護は、近所でも折り紙付きだった。
母に一日でも長く生きてて欲しいと願うのは、
愛だろうか、憎しみだろうか。
それとも、私のエゴだろうか。

振り返ると、耳が遠いはずの母が、
恐ろしい形相でじっと私を睨みつけていた。
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