プレゼント
プレゼント
更新日: 2023/06/02 21:46現代ドラマ
本編
「早く死ねたらいいのに」と母が言う。
庭先に咲くポピーが、頷くように風に揺れる。
その言葉の重みを推し量ることもせず、私は答える。
「まだ、逝かないでよ」
母の意向に沿うよう強いられてきた人生。
人の手を借りずには生きられないほど、
年老いた今でも、それは続く。
私が欲しいものは、決して与えてくれなかったくせに
要らないものばかり、仰々しく押し付けてきては、
感謝の心が足りないと叱られた。
なら私も母の教え通り、
あなたにとって必要のないものを贈ろう。
「まだ、楽には逝かないでよ」
粗相の後始末の床に、そっと吐き捨てた言葉。
一人娘の手厚い介護は、近所でも折り紙付きだった。
母に一日でも長く生きてて欲しいと願うのは、
愛だろうか、憎しみだろうか。
それとも、私のエゴだろうか。
振り返ると、耳が遠いはずの母が、
恐ろしい形相でじっと私を睨みつけていた。
0庭先に咲くポピーが、頷くように風に揺れる。
その言葉の重みを推し量ることもせず、私は答える。
「まだ、逝かないでよ」
母の意向に沿うよう強いられてきた人生。
人の手を借りずには生きられないほど、
年老いた今でも、それは続く。
私が欲しいものは、決して与えてくれなかったくせに
要らないものばかり、仰々しく押し付けてきては、
感謝の心が足りないと叱られた。
なら私も母の教え通り、
あなたにとって必要のないものを贈ろう。
「まだ、楽には逝かないでよ」
粗相の後始末の床に、そっと吐き捨てた言葉。
一人娘の手厚い介護は、近所でも折り紙付きだった。
母に一日でも長く生きてて欲しいと願うのは、
愛だろうか、憎しみだろうか。
それとも、私のエゴだろうか。
振り返ると、耳が遠いはずの母が、
恐ろしい形相でじっと私を睨みつけていた。
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