【SS朗読】35『 鳥居の先に何が見える?~五十・幽霊観光~』稲荷玄八(作)/竜庵・吉史あん(語り)
概要
ホラージャンルとタイトルに魅かれ覗きみたら…
好きです
面白~い
こうした作品を朗読できるのは楽しいですね。
『鳥居の先に何が見える?』シリーズは100話完結してます。
1つ1つまるで違う世界がありますので、是非お読みください。
稲荷玄八様 承認ありがとうございました。
今後発表される作品も楽しみにしております。
YouTubeチャンネル
ショートショート異空間333歩
案内人 吉史あん
好きです
面白~い
こうした作品を朗読できるのは楽しいですね。
『鳥居の先に何が見える?』シリーズは100話完結してます。
1つ1つまるで違う世界がありますので、是非お読みください。
稲荷玄八様 承認ありがとうございました。
今後発表される作品も楽しみにしております。
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案内人 吉史あん
語り手: 吉史あん
語り手(かな): よしふみあん
Twitter ID: tsubuyakiaiueon
更新日: 2023/10/22 22:22
エピソード名: 鳥居の先になにが見える? ~五十・幽霊観光~
小説名: 鳥居の先になにが見える? ~五十・幽霊観光~
作家: 稲荷玄八
Twitter ID: @hibimanimani
本編
「おい、本当に大丈夫だろうな!?」
「大丈夫だって、心配症だなー」
「お前がそんな軽いノリだから心配にもなるんだろうが!」
「はいはい、心配内でちゅよー? 怖いなら手でも繋いでまちゅかー?」
「おちょくりすぎだろ! 本当に見えないんだろうな?」
「見えないから安心して任せてちょーって。ほらじゃあ、いくよーん!」
俺は今、廃墟の前にいる。
理由は肝試しをするためだ、不本意ながら。仲間内で遊んでた時、罰ゲームをしようという流れになり、最下位だった俺と、ブービー賞だった佐藤が一緒にいくはめになったのである。
「いやー、肝試しなんて久しぶりだからワクワクするねぇ」
「そうかぁ? 所詮子供の遊びだろ下らない」
「僕ら中学生だし、まだまだ子供だと思うんだけどなぁ」
佐藤は、及び腰な俺とは対照的に余裕綽々の笑みを浮かべている。無性に負けた気分になるので、強がって怖くないフリをしてみたが、正直帰りたくて仕方ない。
「幽霊みれると良いなぁ」
「おい! 幽霊出ねぇって話だっただろうが!」
「確かにここには曰く付きの話はないけどさ。こんだけ朽ちた場所なら一人や二人いてもおかしくなくなーぃ?」
「おかしくなくなくない!」
「変な日本語ぉ」
「てめえなあっ!」
怒り狂う俺をよそに、佐藤は幽霊の数えかたって一匹? 一体? と真剣に考え込んでいやがる。くそ、調子狂うな。
「あーもう! とにかく早くいって早く終わらすぞ、あんまり遅いとあいつらに馬鹿にされる!」
「そーだねぇ。昨日仕込んだって言ってた地下室のエロ本取ってくるんだっけぇ?」
「もっとましなもん仕込めよなぁあいつらも」
「ましなもんってなにぃ?」
「……木刀とか?」
「似たようなもんじゃん」
「どこがだっ!」
俺達はやいのやいの言いながらも先へと進んだ。騒ぎながら進めば他に気が散ることもなく、すんなりと目的地に着く。
「エロ本、エロ本っと。……なんか言ってて虚しくなるな」
「あったよー。熟女達の饗宴、昼下がりの情事だってぇ」
「うわーセンスの欠片もねぇチョイスだなそれ。よし、目的のもんも手に入れたしさっさと帰ろーぜ」
「何もなくて残ー念」
「幽霊なんていねーってことよ。おら、とっととかえ――」
俺が振り向いた瞬間言葉を失う。
佐藤の背後に白い人影。しかも二つ。
よっぽど驚いた顔をしていたのだろう、いぶかしみつつ奴も振り返り、同じく絶句。
夜の闇にぼうっと浮かぶようにゆらめくそれは明らかに人形。だがこの世ならざる存在であると肌が感じている。
「に、にげ……」
佐藤が震えた声をあげた瞬間、白い人影がものすごい勢いで動き出した。
「「うわああぁっ!?!?!?」」
同時に叫んで、俺達は一目散に出口を目指す。途中エロ本をおとしたがそんなこと気にしてる場合じゃなかった。追い付かれたら絶対死ぬ! 走ることに夢中になって声は掛け合わなかったが、俺達はきっとそんな風に同じことを考えていたと思う。
気が付けば、廃墟から少しはなれた場所にあるコンビニだった。息の上がった俺達をみて店員は怪訝そうな視線を向けてきたが知ったこっちゃない。
「見たぁ?」
「見た……見えちゃったよ!」
「びっくりしたねぇ」
「お前でも叫び声とかあげんのな、笑ったわ」
「僕を何だと思ってる訳さ。どーする、証拠落としちゃったけどぉ?」
「今さら戻るのも嫌だが馬鹿にされんのもやだからな。買ってけばいいだろ」
「えっとなんだっけ、タイトルぅ?」
「熟女達の饗宴、昼下がりの食事じゃなかったか?」
結局、本が間違っていたのでちゃんといってないことがバレて馬鹿にされた。タイトルしってんだからいいだろといってもどっかで盗み見たんだろととりつく島もない。だから俺達は言わせておくことにした。
あの時見た白い人影のことは喋らなかった。言ったところで信じてもらえるはずもなく、正直俺達二人が見た幻覚だったんじゃないかとさえ思ってる。
ただ、その真意を確かめにいく勇気は今のところ。俺にも佐藤にもない。
「おい、どういうことだ! 完全に見られてただろあれ!」
「あれーおかしいなー。偽装は完璧なはずなのに」
「ああもう、現地の人間に姿は見られちゃいけないって大原則なのに、どうするんだよ!」
「それは大丈夫じゃないかな?」
「なんで?」
「僕らが過去に観光に来たなんて無効に分かるはずないし、それに」
「それに?」
「彼らには僕ら、幽霊にしか見えなかったと思うから」
「……それってつまり、この時代の人間がみてる幽霊って」
「大丈夫だって、心配症だなー」
「お前がそんな軽いノリだから心配にもなるんだろうが!」
「はいはい、心配内でちゅよー? 怖いなら手でも繋いでまちゅかー?」
「おちょくりすぎだろ! 本当に見えないんだろうな?」
「見えないから安心して任せてちょーって。ほらじゃあ、いくよーん!」
俺は今、廃墟の前にいる。
理由は肝試しをするためだ、不本意ながら。仲間内で遊んでた時、罰ゲームをしようという流れになり、最下位だった俺と、ブービー賞だった佐藤が一緒にいくはめになったのである。
「いやー、肝試しなんて久しぶりだからワクワクするねぇ」
「そうかぁ? 所詮子供の遊びだろ下らない」
「僕ら中学生だし、まだまだ子供だと思うんだけどなぁ」
佐藤は、及び腰な俺とは対照的に余裕綽々の笑みを浮かべている。無性に負けた気分になるので、強がって怖くないフリをしてみたが、正直帰りたくて仕方ない。
「幽霊みれると良いなぁ」
「おい! 幽霊出ねぇって話だっただろうが!」
「確かにここには曰く付きの話はないけどさ。こんだけ朽ちた場所なら一人や二人いてもおかしくなくなーぃ?」
「おかしくなくなくない!」
「変な日本語ぉ」
「てめえなあっ!」
怒り狂う俺をよそに、佐藤は幽霊の数えかたって一匹? 一体? と真剣に考え込んでいやがる。くそ、調子狂うな。
「あーもう! とにかく早くいって早く終わらすぞ、あんまり遅いとあいつらに馬鹿にされる!」
「そーだねぇ。昨日仕込んだって言ってた地下室のエロ本取ってくるんだっけぇ?」
「もっとましなもん仕込めよなぁあいつらも」
「ましなもんってなにぃ?」
「……木刀とか?」
「似たようなもんじゃん」
「どこがだっ!」
俺達はやいのやいの言いながらも先へと進んだ。騒ぎながら進めば他に気が散ることもなく、すんなりと目的地に着く。
「エロ本、エロ本っと。……なんか言ってて虚しくなるな」
「あったよー。熟女達の饗宴、昼下がりの情事だってぇ」
「うわーセンスの欠片もねぇチョイスだなそれ。よし、目的のもんも手に入れたしさっさと帰ろーぜ」
「何もなくて残ー念」
「幽霊なんていねーってことよ。おら、とっととかえ――」
俺が振り向いた瞬間言葉を失う。
佐藤の背後に白い人影。しかも二つ。
よっぽど驚いた顔をしていたのだろう、いぶかしみつつ奴も振り返り、同じく絶句。
夜の闇にぼうっと浮かぶようにゆらめくそれは明らかに人形。だがこの世ならざる存在であると肌が感じている。
「に、にげ……」
佐藤が震えた声をあげた瞬間、白い人影がものすごい勢いで動き出した。
「「うわああぁっ!?!?!?」」
同時に叫んで、俺達は一目散に出口を目指す。途中エロ本をおとしたがそんなこと気にしてる場合じゃなかった。追い付かれたら絶対死ぬ! 走ることに夢中になって声は掛け合わなかったが、俺達はきっとそんな風に同じことを考えていたと思う。
気が付けば、廃墟から少しはなれた場所にあるコンビニだった。息の上がった俺達をみて店員は怪訝そうな視線を向けてきたが知ったこっちゃない。
「見たぁ?」
「見た……見えちゃったよ!」
「びっくりしたねぇ」
「お前でも叫び声とかあげんのな、笑ったわ」
「僕を何だと思ってる訳さ。どーする、証拠落としちゃったけどぉ?」
「今さら戻るのも嫌だが馬鹿にされんのもやだからな。買ってけばいいだろ」
「えっとなんだっけ、タイトルぅ?」
「熟女達の饗宴、昼下がりの食事じゃなかったか?」
結局、本が間違っていたのでちゃんといってないことがバレて馬鹿にされた。タイトルしってんだからいいだろといってもどっかで盗み見たんだろととりつく島もない。だから俺達は言わせておくことにした。
あの時見た白い人影のことは喋らなかった。言ったところで信じてもらえるはずもなく、正直俺達二人が見た幻覚だったんじゃないかとさえ思ってる。
ただ、その真意を確かめにいく勇気は今のところ。俺にも佐藤にもない。
「おい、どういうことだ! 完全に見られてただろあれ!」
「あれーおかしいなー。偽装は完璧なはずなのに」
「ああもう、現地の人間に姿は見られちゃいけないって大原則なのに、どうするんだよ!」
「それは大丈夫じゃないかな?」
「なんで?」
「僕らが過去に観光に来たなんて無効に分かるはずないし、それに」
「それに?」
「彼らには僕ら、幽霊にしか見えなかったと思うから」
「……それってつまり、この時代の人間がみてる幽霊って」