何年たっても鮮やかな紫色・・・

概要

今は空の上にいる大切な人との若いころの大切な思い出をふとした時にたどっている・・。
初読時の印象です。
その印象のまま現在と回想、2つのシーンで音を構成しました。

ふわりさん、素敵なお話を読ませてくださってありがとうございます。

語り手: まさと(長良真里)
語り手(かな): ながらまり

Twitter ID: masatonyarara
更新日: 2023/06/02 21:46

エピソード名: あなたは覚えていますか?

小説名: あなたは覚えていますか?
作家: ふわり
Twitter ID: fuwari3333


本編

あなたは覚えていますか?


その日も、どこへ連れられるのかわからないまま、
私はあなたについて行った。

春だというのに、まだ肌寒く、
静かに雨が降っていた。

どこへ行くのだろう?
あなたは無言のまま歩く。
いつものことだ。
私も黙って、あなたと並んで歩く。

いつの間にか、公園に来ていた。
初めて見る場所だ。
こんな雨の日に、どうして公園に?


ブランコや滑り台のある広場を抜けて
小さな小路を進むと、
突然、あなたは足を止めた。

あなたが私の手を取って導いた先には、
見事な藤棚があった。


「わ〜。きれい!こんなに長い藤のトンネル、初めて見た!」

高揚する私の横顔を、
あなたは満足そうに見つめていた。

「君に見せたくて」

その一言が嬉しい。
あなたが私のためにしてくれること、
ただそれが嬉しい。

「ありがとう」




ふと、懐かしくなって来てしまった。
あの頃と変わらず、紫色のトンネルを歩く。


「ここが、最後に来た場所だったね」



あなたは覚えていますか?


あなたとの思い出の場所。
あなたも見ているだろうか?
空の上から、この紫色を。
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