朗読【星降る夜に駆け出して】

概要

流れ星、それは地球に降り注ぐ無数の塵のようなもの

落ちてくる流れ星を、本当に流れ星にするために
星降る夜に駆け出して、私は引き金を引いた

語り手: 白河 那由多
語り手(かな): しらかわ なゆた

Twitter ID: nayuta9333
更新日: 2024/10/21 16:03

エピソード名: 星降る夜に駆け出して

小説名: 星降る夜に駆け出して
作家: 紅いココア
Twitter ID: akai_kokoa


本編

空には予報通り、無数の流れ星が降り注ぐ
普段見慣れた街道も、今日だけは普段と違う空気を纏っている
そんな、満天の星の降る夜に私は駆け出した
降り注ぐ星の明かりに、立ち向かうように
あの輝く星が、誰かの足元に落下する前に
頭上にあるはずの空が、私達を目掛けて落ちてくるように感じて走り出す
そんな私の姿は、空を見上げる彼等の瞳には映らない
頭上で繰り広げられる、世紀の天体ショーに釘付けられた瞳には
走り抜ける私の事など、気づくはずがないのだ
二度と訪れることのない、そんな夜を前に
ただ駆け出していく私の姿を気に留める者など誰もいない
そんな彼らを横目で見ながら、私はただひたすらに走り抜ける
星の落ちてこない場所に向かって、これまで暮らした街から逃げ出すように
けれど本当は自分でも分かってる
空なんて落ちてこないって理解している
世界の終わりなんて、来るはずないって分かってる
何故ならば、そんな未来にさせないために私達が居るのだから
それでも、最初からそう考えていた訳ではなかった
本当は、私は逃げ出したかった
どうしても、近づいてくる星が恐ろしかったから
最初の頃は、私と同じ様に逃げ出そうと考える人も少なくはなかった
そんな中で、空が落ちてくる最後まで足搔き続けようと決めた人々がいた
足搔き続けた世界に、もっと素敵な光景が広がる可能性を見出した者だって居る
それが例え無謀だと言われながらも、ほんの僅かな希望を見出した人々が居た
私はそんな彼らに憧れ、今ここにいる
世界は、無数の星で瞬いているのだから
この場所も又、そんな輝く世界の一つなのだろう
そして、これから先もきっと続いてく
いつか、あの流れ星のように燃え尽きるその時まで
生命の灯火で輝き続けるのだろう
ただその場所から、私は逃げ出しただけの話
ただ少し、高い場所から人々の姿を守るために
落ちてくる流れ星を、本当に流れ星にするために
星降る夜に駆け出して、私は引き金を引いた
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