【朗読】二通目の聖夜代書動画【聴くッショ!】

概要

■あらすじ
サンタクロースはいるのか?きっとその問いに、ほとんどの大人はいないと答えるだろう。でも、そんなことはない。サンタクロースは、いる。これを読めばその理由がわかるかも。

語り手: スキヲカタル
語り手(かな):

Twitter ID: sukiokataru
更新日: 2023/12/24 07:39

エピソード名: 二通目の聖夜代書

小説名: 二通目の聖夜代書
作家: Kyoshi Tokitsu
Twitter ID: kyoshi_tokitsu


本編

 私は誰もが知る、赤い服を着て、大きな荷物を背負った、慈愛の髭をこんもりと蓄えた、あの人に頼まれてこのメッセエジを書くのである。サンタクロオス翁(おう)。彼は今、大忙しである。いや何、この季節に限ったことではない。実は彼は年がら年中、大忙しである。ただ、冬の、いち年の終わりに差し掛かると、彼の仕事が認知されるきっかけが生まれる、というだけのことなのだ。
 君も知っているだろう。サンタクロオス翁の仕事を。そう。人々にプレゼントを贈って回るという、あの途轍もなく大きな作業である。幼少期、十二月二十五日の朝になると枕元にプレゼントが置かれていた、という記憶が、もしかしたら君にもあるかもしれない。お礼の手紙は書いたか? だが、今はどうだ? サンタクロオス翁などいない、と君はもしかしたら信じているのかもしれないが、それは違うよ。サンタクロオス翁は存在している。だからこそ君にプレゼントが届いたのだ。
 いや違う、あれは両親の仕業だ、という者もいるだろう。そうだ。もしかするとそのプレゼントを幼い君の枕元に置いたのは両親かもしれない。だがね、君の両親というのはサンタクロオス翁と契約書の無い精神の契約をしていたのだよ。クリスマスが来たら、あの子の欲しがっているアレを、贈ってやって欲しい、とね。我々のような肉体を持たないサンタクロオス翁にとって、子供の欲しがる物質を送るのは少々骨が折れるからね。いや、見返りなんかないさ。クリスマスだから。それで十分だ。
 成長して後、私はプレゼントなんか貰っていないぞ、それでもサンタクロオスとかいう爺さんがいると言うのか! と、今度はそんな声が聞こえる。答えよう。そうだ。いる。タンパク質の肉体を持たないサンタクロオス翁が本当に我々に贈るプレゼントを知らないのか? 君はクリスマスの時期に、あちこちに飾られるツリイやイルミネエションを知っているだろう? あれを、綺麗だとは思わないか? あるいは、クリスマスだから、という理由で誰かと共に過ごしたことはないか? 楽しかったろう? 電飾輝く街を歩く。何か心が高揚しないか? 何、クリスマスに限らずとも、ふと心が軽くなる、穏やかな気持ちが訪れる、平穏の幸せを感じる、人に優しくしようと思える。そんな経験がないとは言わせないよ。サンタクロオス翁が私たちに本当に贈りたいものとは、それなんだよ。彼の担いでいる大きな袋には何が詰まっているか知っているかい? 子供の玩具ばかりじゃない。それはほんの一部さ。あの袋の中にはね、原初の幸いが詰まっているんだ。彼はそれを配るためにトナカイの橇で空を駆けるんだ。
 おっと、なんだ。今度は随分、科学的な意見が聞こえる。一夜でサンタクロオス翁が空を駆けるとソニックブウムで、えらいことになる? 我々の科学で彼を計ってはいけない。彼は物質的な存在じゃないんだからね。彼は複数の時間軸に、同時に存在できるんだ。だから安心してくれ、クリスマスにサンタクロオス翁が仕事をしても、町が壊滅するようなことはない。
 まあ、複雑な現象を考慮するのは止そうじゃないか。サンタクロオス翁は確かに存在している。ところで、君。気づいているか? 君もサンタクロオス翁と契約を交わしているのだ。人に優しく。何かを与えてみてはどうだ。理由なんかなくたっていいじゃないか。でも、どうしても理由が欲しいというなら、こんな理由はどうだ? クリスマスだから。一年に一度しか通じないけれどね。
さあ。今年のクリスマスに向けての私の仕事もそろそろ終わろうとしている。今年も年中無休のサンタクロオス翁を労う季節だ。これからも彼との契約を時々思い出してくれ。
 それじゃ、メリイクリスマス。
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