朗読【猫の手貸すにゃー】

概要

そっと差し伸べられる手になれますように。

諦めて、みんなも心の手を探してみるにゃ。
難しい時は猫の手貸すにゃー。

そっと、貸すにゃー。

語り手: 白河 那由多
語り手(かな): しらかわ なゆた

Twitter ID: nayuta9333
更新日: 2023/11/08 15:30

エピソード名: 猫の手貸すにゃー

小説名: 猫の手貸すにゃー
作家: 浜風 帆
Twitter ID: @HamakazeHo


本編

「猫の手貸すにゃー」

手にゃ

ぎゅっと、握って、開いて、握って、開いて。
手にゃ、手があるにゃ。

いざとなったらシャキーンと爪も出てくる僕の手にゃ。
握って、開いて、握って、開いて。
僕の手があるにゃ。

周りの人間もいろんな手があるにゃ。

温かい手、冷たい手。
柔らかい手、皺皺の手。
日焼けした手、白い手。
大きな手、小さな手。

いろんな手があるにゃ。
手、手、手、手にゃ。



お料理する手。
顔を洗う手。
スマホをタッチする手。
パソコンで仕事する手。
大きな荷物を運ぶ力強い手。
小さな作業をする繊細な手。

とても役に立つにゃ。
手、手、手、手にゃ。


そっと差し伸べる手。
強く突き放す手。

優しく包み込む手。
暴力で周りを傷つける手。

怖くて震える手。
力強く引っ張る手。

僕は、優しい手がいいにゃ。
優しく撫でてくれる手がいいにゃ。
手、手、手にゃ。




手がにゃい。手がある。
ここに手がにゃい。だけど手はある。

手があるにゃ。大事な手が、心に生えているにゃ。

君はきっとわかっているはずなんだにゃ。

いろんな手に支えられ、いろんな手に傷つけられ、
いろんな手に励まされ、いろんな手に冷たくされ。
いろんな形の手があることを。

いっぱい心に手の生えている人もいるにゃ。
その手で、いっぱい良いことをする人も、悪いことをする人も。


君の手はどんな手をしているのかにゃ?
いろんな手がある。ほんとにいろんな手がある。
だから、たまに自分の手を、心の手を見つめて欲しいにゃ。

震える手に優しく手を添えてあげたかにゃ?
冷え切った手を包んで温めて上げたかにゃ?
意気地のない時、そっと優しく背中を押してあげたかにゃ?

そもそも、心の手は生えているのかにゃ?
見つからない時、そんな時は、よく探して欲しいにゃ。
きっとどこかに隠れて震えているはずなんだにゃ。

そして、優しくギュッと自分で握って欲しいんだにゃ。
優しくギュッと。もう少し。勇気が出るまでもう少し。

私は猫、僕は猫。
それでも、今。
心の手にそっと押され、この文(ふみ)を書いているんだにゃ。
そっと差し伸べられる手になれますように。



猫に言われたら終わりなんだにゃ。
諦めて、みんなも心の手を探してみるにゃ。
難しい時は猫の手貸すにゃー。

そっと、貸すにゃー。


Fin
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