朗読【ペンネーム】

概要

あれから10年以上経ち、私の元にまた一通の手紙が届いた。
「夢を叶えました。もしよければ、わたしの書いたお話をみにきてください」短く綴られた文章。

私は胸が熱くなった。とうとうやったね、おめでとう。早くそう言って肩を叩いてやりたい。

語り手: 白河 那由多
語り手(かな): しらかわ なゆた

Twitter ID: nayuta9333
更新日: 2023/09/24 15:46

エピソード名: ペンネーム

小説名: ペンネーム
作家: 夕霧
Twitter ID: U78218775


本編

 脚本家を目指してるんだと彼女は言った
 文字をなぞるしなやかな指、コロコロと鈴を鳴らすような耳に馴染む綺麗な声。その声を好きだと思った。
 彼女は、いつか叶えたい夢なんだと笑いながらお気に入りの本を抱えて夏の照りつけるような日差しの中を軽やかに歩き出した。
 その後ろ姿を目で追いながら、その夢が叶う瞬間を是非見させてくれないか?なんてつい声をかけていた。
 彼女も驚いた顔をしていたが、私も自分がそんな事を言い出すとは思わず驚いていた。
 私の顔を見た彼女は可笑しそうにコロコロと可愛らしく笑い、うん、見てて!必ず叶えるから!と言った。とても大人びたその表情に、この子は夢を信じて努力のできる子だ、と私は確信をもてた。
 私は彼女の夢が叶う瞬間を心待ちに余生を過ごすこととしよう。
 私は治療のために飛行機で行く距離の生家へ引越すことになった
このことを話すと彼女は引越し当日に泣きながらお気に入りの本と手紙を渡してきた。
 絶対に夢を叶えるから。わたしが書いたお話をみにきてください!
 手紙の中身は彼女が必死に考えていた自分のペンネームだった。
 あれから10年以上経ち、私の元にまた一通の手紙が届いた。
 「夢を叶えました。もしよければ、わたしの書いたお話をみにきてください」短く綴られた文章。文末には彼女が引っ越す間際に私に渡してくれた手紙に書かれていたペンネームがあった。
 私は胸が熱くなった。とうとうやったね、おめでとう。早くそう言って肩を叩いてやりたい。
 昔よりも体力のなくなった体を人に助けてもらいながら、彼女の叶えた夢を見に私は彼女の元へ訪ねた。
 彼女から貰ったお気に入りの本と手紙を大切に抱えながら 
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