聴くっショ作品を朗読してみた~白河 那由多・ぶどうパン~朗読:yukisige

概要

素敵な思い出話です。
ふと、私の子供の頃の思い出は何だろう?
子供たちは、何が思い出に残るのだろう?
と考えました。
こういうあったかい思い出を残せているのかな。

朗読承認ありがとうございました!

語り手: yukisige
語り手(かな):

Twitter ID: @yukisige13
更新日: 2023/06/02 21:46

エピソード名: ぶどうパン

小説名: ぶどうパン
作家: 白河 那由多
Twitter ID: nayuta9333


本編

「珈琲、飲もうか?」
子供の頃、バスに乗って駅前に買い物に行くと、母は必ずと言っていいほど喫茶店に行く。

私の家では、中学生になると珈琲を飲んでも良いと許しがでた。

珈琲は私にとって、大人の飲み物だった。
たまに飲めたコーヒー牛乳も美味しかったけど、インスタントコーヒーは、飲ませてもらえなかった。

「お待たせいたました。」
珈琲と一緒にテーブルに置かれたのは、白いお皿に、ちょこんとのせられた2個のぶどうパン。
ひとり1個のサービス。
時々、母は自分の分を私にくれた。
いつも行くのは午前中だから、モーニングサービスだったのかもしれない。

市販品ではない。
パン屋さんで売っているような、バターの風味がする小ぶりで丸いぶどうパン。

珈琲は私にとって、大人の飲み物。
この喫茶店は、階段を登った2階にある。
赤を基調とした内装は、とても落ち着いていて音楽が流れていた。
ここのぶどうパンが好きだった。

引越しをして、この喫茶店に行くことは無くなった。
この店が、まだあるかもわからない。
パン屋に行くことはあるが、ぶどうパンを買うことはない。
だけど、あのぶどうパンは好きだった。

珈琲をいれながら、ふと思い出す。
そんな朝、少し…幸せ。
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