【聴く小説】未来お知らせします/朗読カリエ エリカ

概要

行きつけの店のラジオから突然、変な内容が流れて……


【聴くっショ!より抜粋】


著:狸寝入り様/@haruru765
朗読:カリエ エリカ/@lovebeel2

語り手: カリエ エリカ
語り手(かな): かりええりか

Twitter ID: lovebeel2
更新日: 2023/06/02 21:46

エピソード名: 未来お知らせします

小説名: 未来お知らせします
作家: 狸寝入り
Twitter ID: haruru765


本編

私には行きつけの喫茶店がある。

 その店はカウンター席が五席ほどの小さな店で、老齢のマスターが一人で切り盛りしていた。

 今日もその店で引き立てのコーヒーを飲んで仕事の疲れをいやしていると、背後から声が聞こえて、危うくコーヒーをこぼしそうになってしまう。

 その声の正体は、窓枠に置かれた古い型式のラジオだった。

 ノイズ交じりに男の声がする。

「マスター、ラジオがついてますよ?」

 この店に来て初めての事に驚きながらも、マスターに声をかけた。

「……」

 マスターは何も答えず、カップを拭いている。

 聞えなかったのかな?

 まぁ、そこまで気にしなくていいか……

 そう思いまたカップを傾けて、優雅な香りを楽しむ。

 ここのブレンドは酸味と甘みのバランスが私の好みで、この一杯のために仕事を頑張れてると言ってもいいくらいだ。

 それに他のお客さんを見たことがないのも、貸し切りみたいで気分が良かった。

 少ししてまた、ラジオから声が聞こえてくる。

 今度は耳を澄ませてみた。

『……七月二十八日晴れ……』

 何だ天気予報か……

 何か面白い番組でも聞けるかと思ったが、期待外れだった。

 カップを置いて、スマホの通知をチェックする。

 天気予報は雨になっている。

 このラジオと意見が違うな……

 何とはなしに、振り向いて外を見る。

 天気は良く晴れている。

 徹夜明けの目にはつらいくらいだ。

『加藤沙織さんが本日、午前八時に刃物で刺されて死亡します』

 その言葉にゾッとした。

 私と同じ名前だ。いや、偶然の一致かもしれないけど、しますは変じゃないかな?

 気味が悪くなって、マスターにお勘定を頼んで、足早に帰宅することにした。

・・・・・・・・・・

 この春から住み始めたワンルームマンションの下にたどり着いた。

 何事もなかった……当たり前だよね?

 自室に入って電気をつけながら、テレビの前に置かれたベッドに腰を掛けた。

 テレビの電源を入れて、ザッピングをしながら目的のニュースをつける。

 これで明日も会社の話題についていけるな。

 興味深いニュースがやっていた。どうやらこの街で殺人事件が起きて、犯人が逃げているようだ。

 念のために、玄関をもう一度確認しよう……

 立ち上がって、違和感に気が付いた。

 足元から生暖かい風がしている。

 私は恐る恐る数歩前に進み、ゆっくりと下を向く。

 ――誰かと目が合った。
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