【聴く小説】遠い雪解け/朗読カリエ エリカ
概要
あの人は、ちゃんと春を連れて来てくれるのだろうか…。
【聴くっショ!より抜粋】
著:トガシテツヤ様/@Togashi_Design
朗読:カリエ エリカ/@lovebeel2
【聴くっショ!より抜粋】
著:トガシテツヤ様/@Togashi_Design
朗読:カリエ エリカ/@lovebeel2
語り手: カリエ エリカ
語り手(かな): かりええりか
Twitter ID: lovebeel2
更新日: 2023/06/02 21:46
エピソード名: 遠い雪解け
小説名: 遠い雪解け
作家: トガシテツヤ
Twitter ID: Togashi_Design
本編
「冬は……苦手です」
そう言ってしまったことを、今さらながら後悔した。でも、本音だから仕方ない。私は冷え性だし、雪かきも面倒だし、「嫌い」と言わなかっただけ、まだ気を遣った方だ。
「では、雪が解ける頃に、またお会いしましょう」
その人はくるりと背を向け、まっすぐ歩いて行った。その後姿を思い出すと、少しだけ胸が苦しくなる。
――嘘でも、好きって言えばよかったかな……。
ピリッと冷えた空気の中で、私は両手に「ふぅ」っと息を吹きかけた。
地面に積もった雪が街灯の光を跳ね返し、闇夜をぼうっと淡く照らしている。
北海道の冬は長い。雪解けなんて、永遠に来ないんじゃないかと思えてしまう。
「ちゃんと、春を連れて来てくれるかな」
鈍色(にびいろ)の空からは、あの人が連れて来た雪が、ただ降っていた。
そう言ってしまったことを、今さらながら後悔した。でも、本音だから仕方ない。私は冷え性だし、雪かきも面倒だし、「嫌い」と言わなかっただけ、まだ気を遣った方だ。
「では、雪が解ける頃に、またお会いしましょう」
その人はくるりと背を向け、まっすぐ歩いて行った。その後姿を思い出すと、少しだけ胸が苦しくなる。
――嘘でも、好きって言えばよかったかな……。
ピリッと冷えた空気の中で、私は両手に「ふぅ」っと息を吹きかけた。
地面に積もった雪が街灯の光を跳ね返し、闇夜をぼうっと淡く照らしている。
北海道の冬は長い。雪解けなんて、永遠に来ないんじゃないかと思えてしまう。
「ちゃんと、春を連れて来てくれるかな」
鈍色(にびいろ)の空からは、あの人が連れて来た雪が、ただ降っていた。