『ふと目に留まった瞬間に怪奇は始まっているのだ…』背筋の凍る‼️日常ホラー

概要

骨董市で手に入れたラジオ。
周波数を合わせていると……

日常のふとした事から誘われる怪奇ホラー‼️
じっとりとした湿度をお楽しみ下さい。

語り手: ねこぽて
語り手(かな):

Twitter ID: neko_pote_ch31
更新日: 2023/06/02 21:46

エピソード名: 堂々巡り

小説名: 堂々巡り
作家: 狸寝入り
Twitter ID: haruru765


本編

梅雨の蒸し暑い夜の事、私は部屋で読書をしていた。

 夜だというのに暑さは変わらず、私はどうにも読書に集中できないでいる。

 どうしたものかと考えて、視線を部屋の端から端へとさまよわせた。

 四畳半の小さな空間はすぐに何があるか分かって、過ごしやすい。

 私の視線はすぐに骨董市で手に入れたラジオを、ロックオンしていた。

 部屋の隅に置かれたそいつを、アザラシの様に怠惰に寝そべったまま移動して掴む。

 買ってから一度もラジオとしての役目を果たしてないそれのスイッチなんかを適当に押していく。

 すると、ズズズっと妙な音を鳴らして、動き始めた。

 これはいい暇つぶしができそうだと、周波数を合わせるべくつまみを回していく。

『まもなく、午前零時をお知らせします』

 よし、動いたぞ。さて、どういう放送かな?

 座布団をくるめて枕にし天井を仰ぎ、ラジオを頭もとに降ろす。

『そこの俺、ラジオをを止めろ。さもなくばひどい目にあうぞ!』

叫ぶような声でそう、ラジオの主は声を出した。

 何だこの放送は? メタすぎないか?

『いいか? 忠告したからな? このラジオは危険だ』

 なんてばかばかしい事を言ってるんだ。

 私はラジオの周波数をまた、左回しにいじる。

『迷宮にようこそ! さて、出口のない旅にご案内します』

 これまたつまらなそうな放送だ。出口がない迷宮など、迷宮ではないだろう!

 ラジオに飽きた私は体を起こして、トイレに向かう。

 トイレを済まし、外の空気でも吸おうかと窓を開けて、私は顎が外れた。

窓の先は外ではなく、自室だった。

 そう、自室。つまり私の部屋なのだ。

 私が開いた口をふさごうと、手で顎を支えていると……

 ズズズっとまたラジオから、変な音がした。

『ああ、暇だ。暇すぎる。何をして時間をつぶすか……ふむ、ラジオがあるな使ってみるか……』

 この声、もしかして私なのか?

 先ほどの声も……

 もしかしてこのラジオを使うと、異世界に閉じ込められるのか?

 そして、別の世界の私も……

 私は声を上げようと、息を吸い込む。

「そこの俺、ラジオに触れるな! ひどい目にあうぞ」

 私はそう叫んだ。
0