朗読版『雨の唄』

概要

ひのき屋「雨の唄」をモチーフにしたお話を朗読しました。

語り手: 西野いつき
語り手(かな):

Twitter ID: itsuki_nishino
更新日: 2023/06/02 21:46

エピソード名: 雨の唄

小説名: 雨の唄
作家: ふわり
Twitter ID: fuwari3333


本編

あの頃と変わってない。
一番奥の席に座る。

「ホットココアください」

言いすぎちゃったかなぁ。
喧嘩するのは何年ぶりだろう?
ううん、まともな会話だって久しぶり。
どうして、こうなっちゃったんだろう…

仕事が忙しいのはお互い様。
私も最近、手抜きになってた。
いつからだろう?
二人で決めたルールがうやむやになってしまったのは。
最近はどれも守れていない。
結婚して十年。
髪型を変えても新しい服を買っても気づかない。
私はいない存在と同じ?

バカね私…
喧嘩したのに、あの人と出会った喫茶店に来ちゃうなんて。

コーヒーが苦手な私が頼むのは、いつもホットココア。
そういえば、初めて出会った日もホットココアを飲んでいた。
あの日も雨が降っていた。
そんなことを思い出しながらホットココアを飲んでいたら…

ー入店のベルー

あっ…
どうして、ここだってわかったの?

そう。(微笑)

ううん、私も悪かった。
ごめんね。

うん。迎えに来てくれてありがとう。

相変わらず不器用な彼。

慌てて飛び出してきたから傘は持ってこなかった。
迎えに来たはずの彼も傘は一つだけ。

相合傘なんて何年ぶりだろう?
照れ臭そうに傘をさす彼の腕をそっと掴んで寄り添った。
雨の日も悪くない。

ぬくもりを感じながら、ふと思った。
やっぱり、この人を選んで、良かった。

改めて気づかせてくれた雨の日のことを、
私は忘れない。

あなたと寄り添い歩きましょう。
あなたと二人、傘の中。
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