私の隠れ家

作家: ふわり
作家(かな): ふわり

私の隠れ家

更新日: 2023/10/09 15:34
現代ドラマ

本編


いつものようにカウンターを通り過ぎ、左の奥の席に座る。入り口からは見えなくて、ここだけちょっと個室のような一画になっていて、お気に入りだ。

「いつもの、お願いします」

そう言えるくらい常連になるなんて、1年前は想像もしていなかった。
初めてここに来たのは、景色が色づき始めた頃。そう言えば、ちょうどこの席から外を眺めると、イチョウ並木が見える。昔はイチョウの葉、拾って集めてたなぁ。
そんなことを思い出してクスッと笑ったら、マスターが飲み物を運んできた。

「今日は良いことでもあったの?」

「いえ…ちょっと昔を思い出しちゃって」

「ゆうちゃんの子供の頃?かわいかったんだろうな。もちろん、今もかわいいけど」

「やだ、マスターったら。お世辞がうまいわね」

「僕はお世辞が言えるほど器用じゃないよ?」

「え…?」

「あ…!そんなことより、冷めないうちにどうぞ」

そう言ってマスターは戻って行った。
私はカップを両手で持って、じっくりとその温かさを楽しむ。一口飲むと、優しい甘さが広がる。
今日もいつもの味だ。
この優しいミルクティに一目惚れ…ならぬ一口惚れしてしまい、ここが私の隠れ家となった。

「はい、これ、サービス」

差し出されたお皿には、ハート型のクッキーが二つ。

自惚れても良いのかな…?
今日こそ、思い切って伝えてみよう。
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