「悲しいのです」
「悲しいのです」
更新日: 2023/06/02 21:46異世界ファンタジー
本編
道端に落ちた蝉(せみ)の翅(はね)
既に主は地に還(かえ)り
取り残された「夏の夢」
羽搏(はば)いた昔日の蒼穹(そら)に
翅は声無く呟いた
悲しいのです
悲しいのです
降りしきる雪片は無情の美
その中で身動きしない古びた電柱は
背負った歳月に押し潰されそう
老いた木の身体で冬の嵐に打ちひしがれ
言葉を紡(つむ)がぬその身を嘆き
やがて朽ちるように倒れ伏す
命の綱たる電線が上げるのは
風を切り裂く金切り声
悲しいのです
悲しいのです
明滅する命脈に
か細く繋ぐ|呼吸音(さいごのあがき)
視界は細く霞みゆく
だから囲む人々の顔も見えない
遠くから聞こえる呼び声も
やがては糸のように断ち切れる
囲む皆が口にする
「逝かないで」という餞別に
微笑むしか答えが無い
悲しいのです
悲しいのです
ただ悲しいのです
1既に主は地に還(かえ)り
取り残された「夏の夢」
羽搏(はば)いた昔日の蒼穹(そら)に
翅は声無く呟いた
悲しいのです
悲しいのです
降りしきる雪片は無情の美
その中で身動きしない古びた電柱は
背負った歳月に押し潰されそう
老いた木の身体で冬の嵐に打ちひしがれ
言葉を紡(つむ)がぬその身を嘆き
やがて朽ちるように倒れ伏す
命の綱たる電線が上げるのは
風を切り裂く金切り声
悲しいのです
悲しいのです
明滅する命脈に
か細く繋ぐ|呼吸音(さいごのあがき)
視界は細く霞みゆく
だから囲む人々の顔も見えない
遠くから聞こえる呼び声も
やがては糸のように断ち切れる
囲む皆が口にする
「逝かないで」という餞別に
微笑むしか答えが無い
悲しいのです
悲しいのです
ただ悲しいのです
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