七色の欠片

作家: 詩月 七夜
作家(かな):

七色の欠片

更新日: 2023/06/02 21:46
詩、童話

本編


嵐が去ったある夏の日の夕暮れ
わたしは雲の峰に浮かぶ虹を見つけた
それはいまにも消えてしまいそうな
小さな七色の欠片だった

歩みを止めたわたしの目に鮮やかに焼き付いて
欠片は静かに溶けていった
夏が見せてくれた空の奇跡
たぶん きっと
もう少し顔を上げるのが遅かったなら
それは本当に幻になっていたのだろう

わたしは再び歩き始めた
上を向いて歩いて行こう
下ばかり俯かずに
いつか見たあの七色の欠片に
また出会えるかも知れないから
0