青白いボタンと黒い猫

作家: 夕霧
作家(かな): ゆうぎり

青白いボタンと黒い猫

更新日: 2024/12/18 22:42
詩、童話

本編


夜の帷《とばり》に、猫が一匹。

「まーお。こんばんわ」

大きく伸びをして、あくびを一つ。

「まーお。こんばんわ。良い夜だね」

夜の帷《とばり》に、猫がもう一匹。
帷《とばり》に散らばる星を蹴飛ばしご挨拶。

「なーご。今日はボタンが見当たらないね」

「んなーご。帷の裏側に隠れちゃったのさ」

前足で器用に顔を洗い、尻尾を揺らしてあくびを二つ。
流れる星を目で追って、猫が二匹、目を光らせる。

「まーお!追いかけようか」

「まーお!面白そう!」

猫が二匹、夜の帷《とばり》を走り出す。
流れる星を追いかけて、猫は何かに気づいたようだ。

「おわぁ。こいつはなんだ?」

「おわぁ。夜の帷《とばり》の裾《すそ》だ」

前足で器用に帷《とばり》を開き、そっと中をのぞき込む。

「まーお!なんてこった。夜の裏側だ!」

夜の帷《とばり》の裏側は、昼の帷が降りていた。
青白い空に、白くたなびく雲、さんさんと輝く白いボタン。
昼の帷《とばり》に入り込み、眩しそうに目をぱちくり。

「なーご。ここは夜と違って星がないぞ」

「んなーご。それになんだか暑くて眩しいや」

猫が二匹、白いボタンの光を避けて、雲の下へ。

「まーお。雲の下は涼しいや」

「まーお。でも、なんだか湿っぽいぞ」

しっとり濡れた毛並みを舐めて、雲の下から這い出した。

「おわぉ。もうたまらん。昼の帷《とばり》は眩しすぎる」

「おわぁ。夜の帷へ戻ろうか」

猫が二匹、昼の帷《とばり》から逃げ出して、夜の帷へ帰ってきた。

「なーご。やっぱり夜が一番いいね」

「んなーご。見て。青白いボタンが光っているよ」

夜の帷《とばり》に青白いボタンが穏やかに輝く。

「まーお。綺麗だね」

「まーお。夜はこうでなくっちゃ」

猫が二匹、夜の帷《とばり》で大きく伸びる。
青白いボタンは、ゆらりゆらりと夜を照らす。
0