短編版ロリコン勇者とのじゃロリ魔王

作家: 狸寝入り
作家(かな):

ロリコン勇者とのじゃロリ魔王

更新日: 2024/09/22 09:13
異世界ファンタジー

本編



「よくここまでこれたな、勇者よ」

 魔王城の最深部にたどり着いた勇者に、どこからか声が聞こえる。

「ふん、こそこそしてないで姿を現したらどうだ」

 辺りは薄暗く、かなりの広さがあった。

「フハハハハハ。勇敢だな勇者よ」

「つまらん世辞はいい、決着の時だ」

 勇者と呼ばれた男はそう言って、刀を構える。

「その前に提案なのだが、世界の半分を貴様の物にしてやる。だから、手を組まぬか? はっきり言って、我を倒せる可能性があるのは貴様だけなのだよ」

「ほう、この俺がそんなことでなびくとでも思っているのか?」

 辺りを警戒しながら、出方をうかがう。

「聞いたとこでは、助けた国の領土の最低でも四割は奪っているようではないか?」

「奪うなど人聞きの悪い、正当な報酬だ」

「ますます気に入った。どうだ、世界の半分だぞ? 手を組まぬか?」

「他の人間はどうする気だ?」

「知れたこと、皆殺しだ。まあ、貴様の家族くらいは生かしといてやろう」

 魔王の薄ら笑いが響く。

「考えるまでもない、姿を現せ魔王!」

 語気を強めて、魔王の言葉を切り捨てる。

「仕方ない……いくぞ、勇者よ」

 勇者の前に魔法陣が現れ、魔王が姿を現した。

「な……」

 その姿に勇者は言葉を失う。

「どうした勇者よ? 我こそ正真正銘。第、百五十代目魔王。ダリアセスコブプライムである」

「……可愛い」

「どうした、怖気ずいたのか?」

 刀を下ろした、勇者に勝ち誇った声をだす。どうやら、勇者のもらした声は聞こえてないようだ。

「俺の物になれ!」

 その言葉に魔王は少し固まり、

「ふぁぁ? 何を言っておるのだ?」

 狼狽した声を出し、一歩後ずさる。

 勇者は魔王を見据えて、

「その、俺の腰丈のほどの伸長。クリっとした目も、その銀色の長い髪もすべて俺好みだ。俺の妻になれ!」

 そう断言した。

「な、何お言っておるのだ。お主は」

「何って、俺の妻になれといったのだが……」

「じゃから、どうして、魔王の我が勇者と結婚などせねばならぬのじゃ!?」

 魔王は素の声のまま、慌てている。

「俺の妻になって、世界を作り直さないか?」

 そう言って、勇者は魔王に手を伸ばす。

 ドン!。

「魔王、覚悟」

 そのタイミングで、鎧を身にまとった三十人程度の集団が部屋に入ってきた。

「……なるほど、貴様これを狙って……」

 魔王がぽつりとつぶやく。

「何だ? この部屋に魔王がいると思ったが、娘を置いて逃げたのか?」

 集団の中のリーダーらしき人物が、そう口に出す。

「おい、貴様。この部屋には入るなと言ったはずだが?」

 勇者は声を出した男の前に行き、睨みつける。

「おぉ、怖い怖い。けどな、勇者さんよー手柄、独り占めは良くないんじゃないの?」

 男のセリフに他の物が、笑い声をあげた。

「で、魔王のいない今、貴様らはどうするつもりだ?」

 勇者は気にせず、そう問いかける。

「決まってんだろ! その娘で楽しんだ後、切り刻んで、さらし者よ」

 男はそう言って、笑い声をあげ、勇者の横を通り過ぎた。

「……クズめが」

 微かな鍔なりの後、男の両腕から血が噴き出す。

「いてーーー、腕が、腕が。おい、お、お前ら勇者が寝返ったぞ! 切り殺せ」

 男が悲鳴のような声で命令をし、残りの兵士が勇者に剣を向ける。

「おい、勇者。何をしておるんじゃ?」

 その様子に魔王が、驚いて声を出す。

「言っただろ? 世界を作り直さないかと。流石に俺一人では無理でも、お前とならできる気がするんでな!」

「うぉぉぉ」

 勇者を取り囲み、一斉に切りかかる兵団。

「ふん、四の型雷光一閃」

 取り囲まれた勇者の姿が一瞬光、取り囲んだ兵士たちが血しぶきを上げる。

「…………」

 その様子を両腕を切られた男は啞然とした様子で見ていた。 

 そしてそのまま意識を失い、倒れる。

「待たせたな魔王。世界を滅ぼすのは反対だが、平和の世を目指さないか?」

 勇者は魔王の前に行き、そう問いかけた。

「聞かせてくれ、その平和とは魔族のいない世界の事か?」

「違う」

 その問いかけに力ずよく返事をする。

「では、どういうことじゃ?」

「魔族と人が支え合って、子供たちが笑顔で暮らせる世界だ」

「じゃが、お主は我を倒しに来たのだろ?」

 魔王は、不思議そうに聞く。

「お前が、話の出来ぬ魔族ならな切っていた。だが、お前はこうして対話ができ、何より俺好みだ」

 その言葉に魔王はあきれた笑い声を出し……

「良かろう。我もこの長い戦には、嫌気がさしていたところじゃ。共に世界征服と行こうぞ」

 手を差し出した。

「平和のために」

 その手を強く握り返す。

 その後、この二人を止めるすべのない人類の降伏によって、世界は統一され勇者の指示のもと、勇者が報酬で手に入れていた土地に魔族が住むことになったのだった。

 (完)
0