衛生局活動記録
衛生局活動記録
更新日: 2024/04/05 16:08現代ファンタジー
本編
休日、私はとあるファミリイレストランを訪れていた。入り口に近い席に腰を下ろし、パスタを食べながら休暇を満喫していると、大柄な一人の男が入ってきた。
「いらっしゃいませ。何名様ですか」
「え? わからんけどいっぱい」
ぞろぞろとその男のグルウプが入ってきた。店員が、なん人か分からぬうちは席に案内できないと説明するのも聞かず、男たちは勝手に席を確保しだした。
「ここ、ええやん、おい、あっちも座れるぞ」
「お客様、困ります。そこはお客様が席を離れているだけで、空いているわけではありません。とにかく、何名様か確定するまでは、お待ちになってください」
どうやらこの客たちはまともな人間ではないようだ。私は徐々に“時間外労働”の予兆を感じ始めていた。
「あ? お客様は神様だろう!」
とうとう言った! 時間外労働が確定した瞬間であった。
「お客様はア、カミシャマアアアアアアアア」
男は天を仰ぎ、超高電圧をかけられたフラワアロックのごとく身をよじりながら口から激臭を伴ったウンコのような塊を吐き出し始めた。やがてその物質は男を包み込み、見上げる程の大きさにまで成長すると、悪臭ゴオレムとなってカミサマカミサマと金切り声を上げながら店内を暴れまわり始めた。
「出たぞお! カミサマだあ!」
誰かがそう叫んだのをきっかけに店内はたちまち大混乱に陥(おちい)った。ウンコゴオレムを前にした店員の女性は気の毒にも怯えていた。私は鞄から衛生局の社員証を取り出し、彼女のもとへ駆けつけた。
「落ち着いてください。衛生局の者です。すぐに駆除を行ないますので安心してください。貴方たちは厨房に避難してください。あのウンコ人形は臭くて、うるさいだけで、基本的にはなんにもできやしませんので厨房に居れば安全です。駆除が終わるまでは決して客席に出てこないようにしてください」
そう言い残して私は車へ戻り、契約武器の入った長い箱を取り出すと、本部へ連絡を入れた。
「こちらエエジェント、サエキ。汚物出現。武器の使用許可を願います」
「場所を特定。汚物反応確認。契約武器を解錠(かいじょう)しました。速やかに駆除してください」
私は箱から一振りの刀を取り出し、店へ駆け戻った。店内には肥(こえ)溜(だ)めを濃縮したかのような臭(にお)いが充満していた。
「私ハア、カミシャマアアアアア。同じのオカワリイイイイイイイ」
糞尿の巨人は意味の分からぬことを不快な周波数で叫びながら店内にウンコをまき散らしていた。汚らしい。大迷惑だ。私は鞘(さや)を払って契約武器を解放した。
私が契約しているのは「妖刀・寂鴉(さびがらす)」。一見なんの変哲もない刀に見えるが、これは触れたもの全てを急速に劣化、失活させることができるのだ。私は寂鴉を正眼(せいがん)に構え、ウンコ大魔神の注意を引くべく叫んだ。
「おいコラ、くそったれ糞尿達磨(だるま)!」
「アアアアアア? 不適切発言ンンン! 炎上させてやるウウウウウウウ」
汚物巨人は口から火炎を吐いた。私は身をひるがえしてスウプバアの陰に隠れた。まずい、早く駆除しなくては火災になる。振り下ろされる巨大な腕から逃れ、横に払った一閃で私は人糞大明神の腕を切り落とした。落ちた腕はたちまち崩れ、砂となり、ウンコゴオレムは切られた腕の断面を不思議そうに眺めていたが、やがてそこから劣化の浸食が始まったことを知ると怯えた声で泣き始めた。
「お客様ハア、カミサマだろうがアアアアイイイイイイイ。店長をおおお出せええええええええええ」
その叫びが終わらぬうちに巨体の全ては朽ち、砂となった。後にはその核となっていた男が気抜けのした顔でうずくまっていた。
私は本部に駆除が終わったことを告げ、清掃班を要請した。厨房のスタッフたちに声をかけると、彼らは鬨(とき)の声をあげ、男を取り囲み、フライ返し、オタマ、寸胴鍋、思い思いの道具でシバき始めた。その後、店は汚物保険で綺麗に修繕(しゅうぜん)され、ほどなくして業務を再開した。警察に引き渡された糞尿男はその後、五年間の飲食店無給労働を言い渡されるのであった。
0「いらっしゃいませ。何名様ですか」
「え? わからんけどいっぱい」
ぞろぞろとその男のグルウプが入ってきた。店員が、なん人か分からぬうちは席に案内できないと説明するのも聞かず、男たちは勝手に席を確保しだした。
「ここ、ええやん、おい、あっちも座れるぞ」
「お客様、困ります。そこはお客様が席を離れているだけで、空いているわけではありません。とにかく、何名様か確定するまでは、お待ちになってください」
どうやらこの客たちはまともな人間ではないようだ。私は徐々に“時間外労働”の予兆を感じ始めていた。
「あ? お客様は神様だろう!」
とうとう言った! 時間外労働が確定した瞬間であった。
「お客様はア、カミシャマアアアアアアアア」
男は天を仰ぎ、超高電圧をかけられたフラワアロックのごとく身をよじりながら口から激臭を伴ったウンコのような塊を吐き出し始めた。やがてその物質は男を包み込み、見上げる程の大きさにまで成長すると、悪臭ゴオレムとなってカミサマカミサマと金切り声を上げながら店内を暴れまわり始めた。
「出たぞお! カミサマだあ!」
誰かがそう叫んだのをきっかけに店内はたちまち大混乱に陥(おちい)った。ウンコゴオレムを前にした店員の女性は気の毒にも怯えていた。私は鞄から衛生局の社員証を取り出し、彼女のもとへ駆けつけた。
「落ち着いてください。衛生局の者です。すぐに駆除を行ないますので安心してください。貴方たちは厨房に避難してください。あのウンコ人形は臭くて、うるさいだけで、基本的にはなんにもできやしませんので厨房に居れば安全です。駆除が終わるまでは決して客席に出てこないようにしてください」
そう言い残して私は車へ戻り、契約武器の入った長い箱を取り出すと、本部へ連絡を入れた。
「こちらエエジェント、サエキ。汚物出現。武器の使用許可を願います」
「場所を特定。汚物反応確認。契約武器を解錠(かいじょう)しました。速やかに駆除してください」
私は箱から一振りの刀を取り出し、店へ駆け戻った。店内には肥(こえ)溜(だ)めを濃縮したかのような臭(にお)いが充満していた。
「私ハア、カミシャマアアアアア。同じのオカワリイイイイイイイ」
糞尿の巨人は意味の分からぬことを不快な周波数で叫びながら店内にウンコをまき散らしていた。汚らしい。大迷惑だ。私は鞘(さや)を払って契約武器を解放した。
私が契約しているのは「妖刀・寂鴉(さびがらす)」。一見なんの変哲もない刀に見えるが、これは触れたもの全てを急速に劣化、失活させることができるのだ。私は寂鴉を正眼(せいがん)に構え、ウンコ大魔神の注意を引くべく叫んだ。
「おいコラ、くそったれ糞尿達磨(だるま)!」
「アアアアアア? 不適切発言ンンン! 炎上させてやるウウウウウウウ」
汚物巨人は口から火炎を吐いた。私は身をひるがえしてスウプバアの陰に隠れた。まずい、早く駆除しなくては火災になる。振り下ろされる巨大な腕から逃れ、横に払った一閃で私は人糞大明神の腕を切り落とした。落ちた腕はたちまち崩れ、砂となり、ウンコゴオレムは切られた腕の断面を不思議そうに眺めていたが、やがてそこから劣化の浸食が始まったことを知ると怯えた声で泣き始めた。
「お客様ハア、カミサマだろうがアアアアイイイイイイイ。店長をおおお出せええええええええええ」
その叫びが終わらぬうちに巨体の全ては朽ち、砂となった。後にはその核となっていた男が気抜けのした顔でうずくまっていた。
私は本部に駆除が終わったことを告げ、清掃班を要請した。厨房のスタッフたちに声をかけると、彼らは鬨(とき)の声をあげ、男を取り囲み、フライ返し、オタマ、寸胴鍋、思い思いの道具でシバき始めた。その後、店は汚物保険で綺麗に修繕(しゅうぜん)され、ほどなくして業務を再開した。警察に引き渡された糞尿男はその後、五年間の飲食店無給労働を言い渡されるのであった。