なでしこの君へ〜第三話 恋蛍

作家: ふわり
作家(かな): ふわり

なでしこの君へ〜第三話 恋蛍

更新日: 2023/06/02 21:46
歴史、時代、伝奇

本編


※舞台は昭和初期の田舎町をイメージしてください。
2人の関係はご想像にお任せします。

※アドリブ不可。方言のみ可。
※SEはおまかせします。

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男 今夜、見せたいものがあるので、つきあってもらってもいいですか?

女 (不思議そうに)見せたいもの…?

男 見てのお楽しみです!じゃ、また6時に迎えに来ますね!

ーここまで回想ー


男 そう遠くないので、安心してください。

女 はい。勇さんを信頼してますから。(間)
あの…この前はありがとうございました。楽しかったです。

男 それなら良かった!こちらこそ、ありがとうございました。

女 あの…猿回し、初めて観ました!

男 僕もですよ!一緒に観れて良かった!

女 お猿さん、かわいかったです(笑)
ふふ。あのお猿さん、なんだか勇さんに似てませんでした?(笑)

男 えぇ?!似てましたか?なんだか恥ずかしいなぁ(笑)

男・女 (二人で笑う)

(間)

男 もうすぐ着きますよ。川のそばなので、足元、気をつけてくださいね。

女 川…?はい…。

(間)

男 着きました!この辺で見れるはず…
ふっ(ちょうちんの火を吹き消す)
あ!いた!あそこ…!

女 え…?

男 ほら、あそこをよく見て。

女 あ…!蛍? 光った!わぁ〜、すごい!
あ!見て!こっちにも!綺麗!

男 今日はたくさん出てますね。運が良い。

女 え…?

男 天候によっては見れないんですよ。蛍は蒸し暑くて風のない日に飛ぶんです。それも月の出ていない闇夜に。昼間は風があったから心配でしたが、止《や》んで良かった。

女 そうなんですね!勇さん、物知り!

男 蛍ってどうして光るか知ってますか?

女 いえ…どうしてなんですか?

男 オスが点灯しながら飛ぶのは、メスへの求愛なんですよ。
メスは葉の上で光って居場所を知らせているんです。

女 すごい!神秘的!

男 ですよね!短い命だから、必死なのかもしれませんね。

女 そうかもしれませんね。
あ…そういえば、この前、神様に、何をお願いしたんですか?

男 あ…いや…その…キミさんは?

女 私は秘密です(笑)

男 ずるいな〜(笑)

女 うふふ(笑)

男 あの…今日ここに誘ったのは、実は伝えたいことがあって…

女 え…?

男 実は先日の願い事は…あの…良かったら僕と…おつきあいしていただけませんか?

女 (ちょっと驚きながら)え?!(間)
はい…。私なんかでよろしければ、よろしくお願いします。

男 良かった!キミさんじゃなきゃ誘ってません。

女 ありがとうございます。あの…びっくりして、心臓が止まりそうです。

男 手、繋いでますから、安心してください。

女 はい…。
あの…私もずっと前から、勇さんのこと…好きでした…。

男 来年もまた、蛍、見に来ましょうね。再来年も、その次の年も。

女 はい…!

男 蛍の光が、2人を優しく包んでいた。

(三話完結)
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