眠り続ける夢の国
眠り続ける夢の国
更新日: 2024/02/29 15:08詩、童話
本編
むかしむかし。
それはそれは寒いひとつの国がありました。もともと寒い地方ではありましたが、寒い理由はもうひとつありました。
『国中が眠りについている』のです。
王様も王妃様も王子様もお姫様も、大臣も兵隊さんもみんな眠っているのです。
もちろん、町のパン屋さんもおもちゃ屋さんも宿屋だってみんな眠っています。
その様子を見た旅人は恐れ、いつしか『眠り病に支配された国』として噂は広がって行きました。
そんな王国にも眠っていない住人がひとりだけいました。王宮に棲(す)む精霊です。
あるとき、眠り続ける王国に渡り鳥が1羽、ふわりと王宮に降り立ちます。
渡り鳥は精霊を見つけ、話しかけます。
「ここは寒いね。人々の声が聞こえない。」
「そう、もうずっとこのまま。」
精霊は少し寂しそうに渡り鳥に答えました。
精霊は渡り鳥にこの王国で起きている事を話すと、
「やっぱり、私がいるから、、、なのかな。」
と渡り鳥に問いかけました。すると渡り鳥は
「まさか、あなたがいる事が原因なら私も同じように眠っている事でしょう。」
と答えました。精霊は少し微笑んで、
「それもそうですね。」
と渡り鳥と話をしていました。それから渡り鳥と精霊はたくさん話をしました。
「あなたは、眠ったりはしないのかい?」「私は眠った事がないのかもしれません。」
「あなたはずっとこのままここにいるつもりかい?」
「私は王宮に棲む精霊だから。ここから離れる訳にはいかないのです。」
「けれども、みんな眠ってしまっているよ。もしよければ私と旅をしてみないかい?」
「え?旅を?」
「そう、私は渡り鳥。場所から場所へ、季節から季節を渡る渡り鳥。」
「素敵!」
「渡り渡って、巡り巡って、またここに帰って来ればいいんじゃないかな。」
「そうしようか。お願い出来るかな?」「任せておくれよ。あなたが疲れた時は私の背中で休むといい。」
こうして、王宮に棲む精霊と渡り鳥は一緒に旅をすることになりました。
それから程なくして寒かった王国にも暖かさが戻り、人々は目を覚ますようになりました。
木々や草花が芽吹き、失われた時間を取り戻すように花が咲き、目覚めた人々にも笑顔が広がりました。
精霊は問いかけます。
「あなたは、、、」
すると渡り鳥はこう言いました。
「私は神より遣われし渡り鳥。巡り巡ってあなたと共に旅をする渡り鳥。」
精霊は少し驚いた顔をしましたが
「神のお遣いでしたか。」
と渡り鳥に話します。
「ええ、また来年あの場所へ帰ります。しばらくしたらまた、お迎えにあがりますよ。」
渡り鳥が精霊に言葉を返すと、精霊は満面の笑みを浮かべながら
「それまで待っていますね。」
と、渡り鳥との旅を続けるのでした。
こうして王国に旅をした渡り鳥と精霊が帰って来たあと、寒い寒い眠り続ける夢の国はまた、眠りにつきます。それでもまた、渡り鳥と精霊の旅立ちと共に王国や人々は目覚め、芽吹きの季節を迎えるのです。
人々の笑顔は絶えることなく、王国も末永く続いて行きました。渡り鳥と精霊の旅が、季節を知らせる四季の始まりだったのかもしれませんね。
さてさて、お話している間に、渡り鳥と精霊がまた王国に帰って来たようです。しばらくの間、眠りにつくといたしましょうか。
ゆっくり、ゆっくり、、、
おやすみなさい。
おしまい
0それはそれは寒いひとつの国がありました。もともと寒い地方ではありましたが、寒い理由はもうひとつありました。
『国中が眠りについている』のです。
王様も王妃様も王子様もお姫様も、大臣も兵隊さんもみんな眠っているのです。
もちろん、町のパン屋さんもおもちゃ屋さんも宿屋だってみんな眠っています。
その様子を見た旅人は恐れ、いつしか『眠り病に支配された国』として噂は広がって行きました。
そんな王国にも眠っていない住人がひとりだけいました。王宮に棲(す)む精霊です。
あるとき、眠り続ける王国に渡り鳥が1羽、ふわりと王宮に降り立ちます。
渡り鳥は精霊を見つけ、話しかけます。
「ここは寒いね。人々の声が聞こえない。」
「そう、もうずっとこのまま。」
精霊は少し寂しそうに渡り鳥に答えました。
精霊は渡り鳥にこの王国で起きている事を話すと、
「やっぱり、私がいるから、、、なのかな。」
と渡り鳥に問いかけました。すると渡り鳥は
「まさか、あなたがいる事が原因なら私も同じように眠っている事でしょう。」
と答えました。精霊は少し微笑んで、
「それもそうですね。」
と渡り鳥と話をしていました。それから渡り鳥と精霊はたくさん話をしました。
「あなたは、眠ったりはしないのかい?」「私は眠った事がないのかもしれません。」
「あなたはずっとこのままここにいるつもりかい?」
「私は王宮に棲む精霊だから。ここから離れる訳にはいかないのです。」
「けれども、みんな眠ってしまっているよ。もしよければ私と旅をしてみないかい?」
「え?旅を?」
「そう、私は渡り鳥。場所から場所へ、季節から季節を渡る渡り鳥。」
「素敵!」
「渡り渡って、巡り巡って、またここに帰って来ればいいんじゃないかな。」
「そうしようか。お願い出来るかな?」「任せておくれよ。あなたが疲れた時は私の背中で休むといい。」
こうして、王宮に棲む精霊と渡り鳥は一緒に旅をすることになりました。
それから程なくして寒かった王国にも暖かさが戻り、人々は目を覚ますようになりました。
木々や草花が芽吹き、失われた時間を取り戻すように花が咲き、目覚めた人々にも笑顔が広がりました。
精霊は問いかけます。
「あなたは、、、」
すると渡り鳥はこう言いました。
「私は神より遣われし渡り鳥。巡り巡ってあなたと共に旅をする渡り鳥。」
精霊は少し驚いた顔をしましたが
「神のお遣いでしたか。」
と渡り鳥に話します。
「ええ、また来年あの場所へ帰ります。しばらくしたらまた、お迎えにあがりますよ。」
渡り鳥が精霊に言葉を返すと、精霊は満面の笑みを浮かべながら
「それまで待っていますね。」
と、渡り鳥との旅を続けるのでした。
こうして王国に旅をした渡り鳥と精霊が帰って来たあと、寒い寒い眠り続ける夢の国はまた、眠りにつきます。それでもまた、渡り鳥と精霊の旅立ちと共に王国や人々は目覚め、芽吹きの季節を迎えるのです。
人々の笑顔は絶えることなく、王国も末永く続いて行きました。渡り鳥と精霊の旅が、季節を知らせる四季の始まりだったのかもしれませんね。
さてさて、お話している間に、渡り鳥と精霊がまた王国に帰って来たようです。しばらくの間、眠りにつくといたしましょうか。
ゆっくり、ゆっくり、、、
おやすみなさい。
おしまい