このお話はノンフィクションです~夢の中で出逢っているよ~
このお話はノンフィクションです~夢の中で出逢っているよ~
更新日: 2024/01/06 09:40恋愛
本編
…もしもし
うん、大丈夫だよ
めずらしいね、こんな時間に
キミから連絡がくるなんて
眠れないの?
俺?うん、まだ仕事してたよ
でもちょうど休憩しようと思ってたとこ
邪魔なんて思ってないよ
むしろ、君の声は俺の癒しだよ
声聴きたいなって思ってたから
キミも?嬉しいな
お互いの想いが通じたね
今日はおやすみだったんだよね?
ごめんね、予定合わせられなくて
何してたの?
うん、へぇ、そうなんだ
お友だちとお出かけしてたんだね
楽しかった?そっか、それはよかった
(彼女の話を聴いて相槌)
うん……、うん……、そっかぁ
はははっ、それはすごいね
あっ、もうこんな時間か
お喋りするのは楽しいんだけど
キミが寝不足になるのも困るね
俺のことは気にしなくていいよ
仕事しながら喋れるから
じゃあこうしよう
僕がある物語を話すよ
キミが眠るまで繋いでおくから
お布団入って
目を瞑って
俺の声だけに集中してごらん
OK?
(ここからは絵本の読み聞かせ風で)
……
これはどこか遠い国にある
深い深い森でのお話……
1人の少女がその森へとやってきました
その森は1年を通して深い霧に覆われ
1度迷い込めば2度と出られない
迷いの森と
人々に恐れられていました
ではナゼそんな恐ろしい森に
少女は1人でやってきたのでしょう
森の中は薄暗く
今日も今日とて霧はとてもとても深く
伸ばした自分の手が見えないほどでした
その少女はまっすぐ前を見据え
ただひたすらに歩き続けました
歩いて
歩いて
歩き続けると
突然目の前が拓け
綺麗な湖が姿を現したのです
少女は湖のほとりに立つと
ふぅ…と1つ溜息をつき
夜空を見上げました
そこには数多の星たちと
綺麗な満月が輝いていました
「…本当に来たのかい?」
誰もいないはずの森の奥から
低く落ち着いた声が聞こえました
彼女が声のする方へ目を向けると
湖の対岸に1人の男が立っていました
彼女はコクリと頷きました
「先日キミを助けたのは本当に
気まぐれだったんだよ」
「次はないと言ったはずだ」
「ただし、また私に会いたいなら…
もう二度と戻れなくてもいいなら
おいでとも伝えた」
「キミは今までの生活を捨てて
私とここで生きるということかい?」
彼女は再び頷きました
「私の正体もわかっているのだろう
それでもいいというのか?」
彼女は3度(みたび)頷きました
「そうか、ではこっちへおいで
そのまま私に向かって真っ直ぐ歩くんだ
キミの気持ちに嘘がないなら、
この湖の水面を渡れるはずだからね」
彼女は真っ直ぐ男を見つめ、
湖へと1歩踏み出しました…
……
……寝た…かな?
すーすーと寝息をたててる…
かわいいな
眠れてよかった
このお話はノンフィクションなんだよ
僕とキミが初めて夢の中で
出逢った時のお話なのだから…
キミは覚えていないだろうけどね…
おやすみ