SENGOKU cristmas
SENGOKU cristmas
更新日: 2023/12/24 17:14歴史、時代、伝奇
本編
関ヶ原の戦いが終わり、徳川の世になって数年。
徳川秀忠の娘、千姫は、祖父である家康の指示で、豊臣秀吉の息子、豊臣秀頼の元に輿入れした。
現代でいえば、まだ小学生の年齢である千にとって、両親と離されたことはただ寂しく、徳川がいずれ日の本を背負って立つ秀頼に忠誠を誓う為に嫁に行けと言われても、理解などできなかった。
ただ、秀頼様も義母上様も家中の者も千を受け入れて下さり、優しくしてくれたのが救いだった。
ある雪の積もった冬の日、千は庭先で落ちていた松の葉を数本、鉢に刺していた。
「千?何をしておるのだ。」
「秀頼様。おじい様に聞いたのですが、おじい様が南蛮から来た者に聞いた話だと、南蛮では、師走の末に、南蛮の神様について説いていた者が生まれた日を祝うのだそうでございます。
確か、くりすます、とか言うのだそうです。」
「くりすます…?」
「その者の名前がきりすととか言うのだそうで、そこからとっているのだそうです。そして、木を飾るのだそうです。その南蛮人が、日の本にはその者のお国にある木が見つからなかったので、こうやって鉢に松の葉を刺していたのだそうです。」
「ほう。そういえば、南蛮から参った者が、神様の話をしていたな。そのきりすとという者の言っておる神様のことかもしれぬ。」
「南蛮では、その日に神様が祭られている寺に参ったり、家の者みんなでその日を祝うのだそうです。おじい様がそんな話をされていたのを思い出し、きりすとというのがどこの誰かも存じませんが、こうやって祝っているのでございます。」
「…父上や母上に会いたいか。」
「はい。」
「お千、きっといつか、そなたのおじい様はここを攻めてくるであろう。関ヶ原の戦の後に三成が罰されたように、私もおじい様に殺されるやもしれん。」
「そんな、私は豊臣と徳川が仲良くする為にここに来たのでございます!」
「そうだな。そうであればいいのだが。海の向こうは広い。わしらの知らない神様や知らない祭りもきっともっと多くあるのであろう。父上も朝鮮に兵を挙げたが失敗した。南蛮にはもっとすごい武器もあるだろう。日の本の中で争うている場合ではない。」
「はい!おじい様が言っておられましたが、そのくりすますに生まれた者は、神様を信じ、例え敵であっても許し、戦わないことを説いていたそうです。」
「くりすます、か。悪くない日かもしれんな。」
秀頼と千は微笑んだ。
千は思った。
この先、徳川と豊臣がどうなるかは分からない。
でも、きっと皆がいつまでも笑っていられますように。
少し雪を被った松の葉が、冬の淡い光で煌めいていた。
0徳川秀忠の娘、千姫は、祖父である家康の指示で、豊臣秀吉の息子、豊臣秀頼の元に輿入れした。
現代でいえば、まだ小学生の年齢である千にとって、両親と離されたことはただ寂しく、徳川がいずれ日の本を背負って立つ秀頼に忠誠を誓う為に嫁に行けと言われても、理解などできなかった。
ただ、秀頼様も義母上様も家中の者も千を受け入れて下さり、優しくしてくれたのが救いだった。
ある雪の積もった冬の日、千は庭先で落ちていた松の葉を数本、鉢に刺していた。
「千?何をしておるのだ。」
「秀頼様。おじい様に聞いたのですが、おじい様が南蛮から来た者に聞いた話だと、南蛮では、師走の末に、南蛮の神様について説いていた者が生まれた日を祝うのだそうでございます。
確か、くりすます、とか言うのだそうです。」
「くりすます…?」
「その者の名前がきりすととか言うのだそうで、そこからとっているのだそうです。そして、木を飾るのだそうです。その南蛮人が、日の本にはその者のお国にある木が見つからなかったので、こうやって鉢に松の葉を刺していたのだそうです。」
「ほう。そういえば、南蛮から参った者が、神様の話をしていたな。そのきりすとという者の言っておる神様のことかもしれぬ。」
「南蛮では、その日に神様が祭られている寺に参ったり、家の者みんなでその日を祝うのだそうです。おじい様がそんな話をされていたのを思い出し、きりすとというのがどこの誰かも存じませんが、こうやって祝っているのでございます。」
「…父上や母上に会いたいか。」
「はい。」
「お千、きっといつか、そなたのおじい様はここを攻めてくるであろう。関ヶ原の戦の後に三成が罰されたように、私もおじい様に殺されるやもしれん。」
「そんな、私は豊臣と徳川が仲良くする為にここに来たのでございます!」
「そうだな。そうであればいいのだが。海の向こうは広い。わしらの知らない神様や知らない祭りもきっともっと多くあるのであろう。父上も朝鮮に兵を挙げたが失敗した。南蛮にはもっとすごい武器もあるだろう。日の本の中で争うている場合ではない。」
「はい!おじい様が言っておられましたが、そのくりすますに生まれた者は、神様を信じ、例え敵であっても許し、戦わないことを説いていたそうです。」
「くりすます、か。悪くない日かもしれんな。」
秀頼と千は微笑んだ。
千は思った。
この先、徳川と豊臣がどうなるかは分からない。
でも、きっと皆がいつまでも笑っていられますように。
少し雪を被った松の葉が、冬の淡い光で煌めいていた。
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