冬~君の面影
冬~君の面影
更新日: 2023/12/03 08:54恋愛
本編
揺れる汽車の中、窓の外をふとみる。
雪が降り落ちるのが見えていた。
君の住む街が近づいてきたとそう思える。
鞄から手紙を取り出して、何度も読み返した内容にまた目を通す。
『優斗(はると)くん。今日はまた発見をしました。雪って積もり続けると、座ることができるんです! 優斗くんは知ってましたか? それと、この間の手紙の事……私は嬉しいです。ずっと待ってますね』
その文字に彼女の顔を思い浮かべる。
三年前に引っ越してしまった僕の初恋の人。みつあみの髪型がすごく似合っていて、笑うとコロコロと鈴の音がなるように綺麗な声で笑う愛しい女の子。
僕は中学を卒業を機に、彼女に一緒に住もうと手紙をだした。
これはそのときの返事の物だ。
小学校で出会って、中学の間はずっと手紙でやり取りをしていた。
気持ちはずっと変わらなかった。
彼女も同じでそれがとても嬉しい。
腕時計で時刻を確認する。
午後十八時。
約束の時間には間に合いそうだ。
塾の帰り、僕はいまの全てを捨てて、彼女の住む東北まで行ける汽車に乗った。
そして、いまに至る。
汽車が何もないところで、速度を落として、ゆっくりと停車した。
『お急ぎのところ誠に申し訳ありません。雪の影響により、しばらく停車します』
その言葉にまた、窓の外をみる。
外は真っ白で、ホワイトアウトという状態だった。
早く動いてくれ、僕は窓の外を睨み付ける。
意味なんてない、だけどそうしてしまうくらいに僕は早く彼女の元に行きたかった。
携帯もスマホもない僕は、彼女との連絡手段がいまはない。
だから約束の二十一時までに駅に着かなくてはいけないのだ。
僕は少しの不安と、期待を胸に汽車が動くのを待つ。
☆☆☆ ☆☆☆
目的の駅に着く頃には、日付が変わってしまっていた。
音のしない木造の駅に僕は一人で降り立つ。
奥に見える改札とそこの中にあるはずの待合室目指す。
改札には人かおらず、待合室も明かりが消えていた。
白い息を吐きながら、横開きのドアに手を掛けて中にはいる。
温かな空気が外に逃げ出していく。
部屋のなかに彼女の姿はなく、呆然と入り口で動けなくなる。
もう、帰ってしまったのだろうか?
もう、会うことはできないのだろうか?
「優斗くん? かな?」
後ろから男の声で名前を呼ばれて、びっくっとしてしまう。
「え? あ、そうですけど……」
振り返った先には駅員さんがいて、手に何かを持っていた。
「良かった。本当に着たね。実は女の子からこの手紙を預かっていたんだ」
そう言って、手に持った物を渡してくれる。
僕はそれを受け取って、驚いた。
彼女からの手紙だ。
急いで開封して、目を通す。
『今日は会えなかったね? もうたぶん会うことはできないかもしれないの。私、海外に引っ越すことになったの。優斗くんと一緒に暮らして、大人になりたかった。でも、それは許されなかったから……』
そこまで読んで、僕は涙が溢れそうになってしまう。
「ご家族の方が迎えに着てね、その手紙を君に渡して欲しいって頼まれたんだよ。あ、君、まちなさい」
僕は走り出していた。
溢れる涙を拭わず、雪の道を走っていく。
もう会えない、だけどこの先も変わることのない彼女への思い。
雄叫びのようなひどい声をだしてしまう。
どこまでも続いている気がする真っ白な坂を下っていく。
(完)
0雪が降り落ちるのが見えていた。
君の住む街が近づいてきたとそう思える。
鞄から手紙を取り出して、何度も読み返した内容にまた目を通す。
『優斗(はると)くん。今日はまた発見をしました。雪って積もり続けると、座ることができるんです! 優斗くんは知ってましたか? それと、この間の手紙の事……私は嬉しいです。ずっと待ってますね』
その文字に彼女の顔を思い浮かべる。
三年前に引っ越してしまった僕の初恋の人。みつあみの髪型がすごく似合っていて、笑うとコロコロと鈴の音がなるように綺麗な声で笑う愛しい女の子。
僕は中学を卒業を機に、彼女に一緒に住もうと手紙をだした。
これはそのときの返事の物だ。
小学校で出会って、中学の間はずっと手紙でやり取りをしていた。
気持ちはずっと変わらなかった。
彼女も同じでそれがとても嬉しい。
腕時計で時刻を確認する。
午後十八時。
約束の時間には間に合いそうだ。
塾の帰り、僕はいまの全てを捨てて、彼女の住む東北まで行ける汽車に乗った。
そして、いまに至る。
汽車が何もないところで、速度を落として、ゆっくりと停車した。
『お急ぎのところ誠に申し訳ありません。雪の影響により、しばらく停車します』
その言葉にまた、窓の外をみる。
外は真っ白で、ホワイトアウトという状態だった。
早く動いてくれ、僕は窓の外を睨み付ける。
意味なんてない、だけどそうしてしまうくらいに僕は早く彼女の元に行きたかった。
携帯もスマホもない僕は、彼女との連絡手段がいまはない。
だから約束の二十一時までに駅に着かなくてはいけないのだ。
僕は少しの不安と、期待を胸に汽車が動くのを待つ。
☆☆☆ ☆☆☆
目的の駅に着く頃には、日付が変わってしまっていた。
音のしない木造の駅に僕は一人で降り立つ。
奥に見える改札とそこの中にあるはずの待合室目指す。
改札には人かおらず、待合室も明かりが消えていた。
白い息を吐きながら、横開きのドアに手を掛けて中にはいる。
温かな空気が外に逃げ出していく。
部屋のなかに彼女の姿はなく、呆然と入り口で動けなくなる。
もう、帰ってしまったのだろうか?
もう、会うことはできないのだろうか?
「優斗くん? かな?」
後ろから男の声で名前を呼ばれて、びっくっとしてしまう。
「え? あ、そうですけど……」
振り返った先には駅員さんがいて、手に何かを持っていた。
「良かった。本当に着たね。実は女の子からこの手紙を預かっていたんだ」
そう言って、手に持った物を渡してくれる。
僕はそれを受け取って、驚いた。
彼女からの手紙だ。
急いで開封して、目を通す。
『今日は会えなかったね? もうたぶん会うことはできないかもしれないの。私、海外に引っ越すことになったの。優斗くんと一緒に暮らして、大人になりたかった。でも、それは許されなかったから……』
そこまで読んで、僕は涙が溢れそうになってしまう。
「ご家族の方が迎えに着てね、その手紙を君に渡して欲しいって頼まれたんだよ。あ、君、まちなさい」
僕は走り出していた。
溢れる涙を拭わず、雪の道を走っていく。
もう会えない、だけどこの先も変わることのない彼女への思い。
雄叫びのようなひどい声をだしてしまう。
どこまでも続いている気がする真っ白な坂を下っていく。
(完)