僕とカバ🦛
僕とカバ🦛
更新日: 2023/09/03 14:14詩、童話
本編
小学校の低学年のころ
毎年、秋になると動物園に行った
私は動物園が好きではなかった
あのどこからともなく漂ってくる動物のにおいが嫌いだった
それでも動物園に行くのは楽しみだった
入園と同時に毎年、お菓子の袋をもらえファンタが飲めるからだ
父は仕事で家にいないことが多く
動物園に私を連れてくると大はしゃぎだ
あれを見ろ、これを見ろと言ってはペンギンやゴリラの前に連れて行くと
カメラを向けて私と動物たちをカメラに納めていく
そんな父を見るのが私は好きだ
そして私は父におねだりをする
ファンタが飲みたい
父は喜び勇んでファンタを買いに行く
母は私に果汁100%ジュースしか飲ませない
赤紫色のファンタは
母の私には与えないリストの筆頭だ
だからファンタは、こうして父と二人で出かけるときの私の楽しみだ
ファンタを待つ私を父はカバ舎の前においていった
カバが寝ている
カバのにおいがする
カバと目が合う
じっと私を見ている
カバが大きく口を開けた
冷たいものが私の手の中にするりと入ってきた
私の手には瓶に入ったファンタがあり
隣には満足げに煙草を吹かす父がいた
私はカバに目をやった
やはりカバは大きな口を開けて私を見ている
私はカバと目を合わせながらファンタを飲む
カバの味がする
匂ってくるようなカバの味がする
大好きなファンタを残す私を見て父はちょっと寂しそうだった
今でもファンタを見るとあのカバを思い出す
あの目を、あの味を
あのカバの血を
カバを飲んだあの日を
あれからファンタが飲めない
0毎年、秋になると動物園に行った
私は動物園が好きではなかった
あのどこからともなく漂ってくる動物のにおいが嫌いだった
それでも動物園に行くのは楽しみだった
入園と同時に毎年、お菓子の袋をもらえファンタが飲めるからだ
父は仕事で家にいないことが多く
動物園に私を連れてくると大はしゃぎだ
あれを見ろ、これを見ろと言ってはペンギンやゴリラの前に連れて行くと
カメラを向けて私と動物たちをカメラに納めていく
そんな父を見るのが私は好きだ
そして私は父におねだりをする
ファンタが飲みたい
父は喜び勇んでファンタを買いに行く
母は私に果汁100%ジュースしか飲ませない
赤紫色のファンタは
母の私には与えないリストの筆頭だ
だからファンタは、こうして父と二人で出かけるときの私の楽しみだ
ファンタを待つ私を父はカバ舎の前においていった
カバが寝ている
カバのにおいがする
カバと目が合う
じっと私を見ている
カバが大きく口を開けた
冷たいものが私の手の中にするりと入ってきた
私の手には瓶に入ったファンタがあり
隣には満足げに煙草を吹かす父がいた
私はカバに目をやった
やはりカバは大きな口を開けて私を見ている
私はカバと目を合わせながらファンタを飲む
カバの味がする
匂ってくるようなカバの味がする
大好きなファンタを残す私を見て父はちょっと寂しそうだった
今でもファンタを見るとあのカバを思い出す
あの目を、あの味を
あのカバの血を
カバを飲んだあの日を
あれからファンタが飲めない