宅配便
宅配便
更新日: 2023/08/19 21:45ホラー
本編
私は今、すごくうきうきしている。
明後日に彼が海外から帰ってくるのだ。
そして、このマンションで二人で暮らしていく。
ダイニングテーブルの前に置かれた椅子に座って、婚約指輪を照明にあてる。
キラキラと光を反射させるイミテーションの指輪だが、私にとってはすごく大切な宝物。
これから彼のために料理をもっと覚えて、胃袋もみたさないとね?
節約レシピの本のページをゆっくりとめくり、テーブルに置いた缶ビールをひとくち飲む。
一人暮らしを始めた頃からこうやって、夜に本を読みながらお酒を飲むのが習慣となっている。
この習慣も明日までかな? 彼はお酒を飲まないし、付き合わせるのは悪いから……
そんなことを考えていると、インターホンがなった。
時刻は23時をまわっていて、お客さんにしては遅すぎる。
私は警戒しながら、リビングにあるモニターに視線を向けた。
ドアの前に紺色の作業着を着た男? が立っている。
帽子を目深にかぶっているので顔はみえないし、怪しいから居留守をしようと思って無視を決め込んだ。
続けてインターホンが鳴ることはなかったので、あきらめて帰ってくれたのだろう。
私はそう考えて、眠ることにした。
次の日の23時、またインターホンが鳴った。
昨日と同じ人物が立っている。
「宅配便です、宅配便です」
モニターについたスピーカーから、そんな声がポツポツと聞こえてきた。
気持ち悪い、なんなの?
私は恐怖を感じて、警察に電話をかける。
「もしもし、どうされましたか?」
「家のドアの前に、変な人がいるんです……」
「分かりました。すぐ確認にうかがいます」
私が女性だからか、すぐにそう言ってくれます。
ですが、その後駆けつけてくれた警察官に不審な人は周り見当たりませんと言われました。
疲れた私はそのまま眠りにつきます。
明日には彼に会えると考えながら……
次の日、彼からの連絡がありませんでした。
もしかしたら飛行機のトラブルかとテレビを確認します。
彼がいる国から日本へ向かう便が行方をくらましたと報道されていました。
そんな……まさか……。
私はスマホを握って、彼が飛行機に乗っていない事を願いました。
ですがいっこうに連絡はなく、時間だけが過ぎていきます。
そのまま夜を迎えて、あの時間になりました。
ピンポーン、ピンポーン。
ドン、ドン、ドン。
「宅配便です、宅配便です」
その声がどことなく彼に似ていることに気がつきました。
もしかして、イタズラ?
でも、彼はそういうイタズラする人ではないはずです。
でも、もしかして彼なら早く会いたい。
私は覚悟を決めて玄関に行き、ドアを開きました。
「宅配便です、宅配便です」
その人物はぶつぶつと言い続けています。
私は声がでなくなりました。
その人物は真っ黒な影のような見た目で、口はおろか目もありません。
黙ってドアを閉めようとしたところで、その異様なものは小さな箱を私に渡そうとしてきました。
私は押し付けられるようにその箱を受け取って、ドアを急いで閉めます。
何、これ……。
手のひらにおさまるくらいの箱を見ながら、玄関に座り込みます。
その箱の上にリボンで留められたメモを見つけました。
恐怖を感じながらも、そのメモを開いて目を通します。
萩村柚、僕の最愛の人。どうかこの箱を彼女のもとに……。と短い文とこのマンションの住所が書かれていました。
彼の字だ。私は胸の鼓動が早くなるのを感じながら、箱を開きます。
中にはダイヤの指輪が輝いていました。
0明後日に彼が海外から帰ってくるのだ。
そして、このマンションで二人で暮らしていく。
ダイニングテーブルの前に置かれた椅子に座って、婚約指輪を照明にあてる。
キラキラと光を反射させるイミテーションの指輪だが、私にとってはすごく大切な宝物。
これから彼のために料理をもっと覚えて、胃袋もみたさないとね?
節約レシピの本のページをゆっくりとめくり、テーブルに置いた缶ビールをひとくち飲む。
一人暮らしを始めた頃からこうやって、夜に本を読みながらお酒を飲むのが習慣となっている。
この習慣も明日までかな? 彼はお酒を飲まないし、付き合わせるのは悪いから……
そんなことを考えていると、インターホンがなった。
時刻は23時をまわっていて、お客さんにしては遅すぎる。
私は警戒しながら、リビングにあるモニターに視線を向けた。
ドアの前に紺色の作業着を着た男? が立っている。
帽子を目深にかぶっているので顔はみえないし、怪しいから居留守をしようと思って無視を決め込んだ。
続けてインターホンが鳴ることはなかったので、あきらめて帰ってくれたのだろう。
私はそう考えて、眠ることにした。
次の日の23時、またインターホンが鳴った。
昨日と同じ人物が立っている。
「宅配便です、宅配便です」
モニターについたスピーカーから、そんな声がポツポツと聞こえてきた。
気持ち悪い、なんなの?
私は恐怖を感じて、警察に電話をかける。
「もしもし、どうされましたか?」
「家のドアの前に、変な人がいるんです……」
「分かりました。すぐ確認にうかがいます」
私が女性だからか、すぐにそう言ってくれます。
ですが、その後駆けつけてくれた警察官に不審な人は周り見当たりませんと言われました。
疲れた私はそのまま眠りにつきます。
明日には彼に会えると考えながら……
次の日、彼からの連絡がありませんでした。
もしかしたら飛行機のトラブルかとテレビを確認します。
彼がいる国から日本へ向かう便が行方をくらましたと報道されていました。
そんな……まさか……。
私はスマホを握って、彼が飛行機に乗っていない事を願いました。
ですがいっこうに連絡はなく、時間だけが過ぎていきます。
そのまま夜を迎えて、あの時間になりました。
ピンポーン、ピンポーン。
ドン、ドン、ドン。
「宅配便です、宅配便です」
その声がどことなく彼に似ていることに気がつきました。
もしかして、イタズラ?
でも、彼はそういうイタズラする人ではないはずです。
でも、もしかして彼なら早く会いたい。
私は覚悟を決めて玄関に行き、ドアを開きました。
「宅配便です、宅配便です」
その人物はぶつぶつと言い続けています。
私は声がでなくなりました。
その人物は真っ黒な影のような見た目で、口はおろか目もありません。
黙ってドアを閉めようとしたところで、その異様なものは小さな箱を私に渡そうとしてきました。
私は押し付けられるようにその箱を受け取って、ドアを急いで閉めます。
何、これ……。
手のひらにおさまるくらいの箱を見ながら、玄関に座り込みます。
その箱の上にリボンで留められたメモを見つけました。
恐怖を感じながらも、そのメモを開いて目を通します。
萩村柚、僕の最愛の人。どうかこの箱を彼女のもとに……。と短い文とこのマンションの住所が書かれていました。
彼の字だ。私は胸の鼓動が早くなるのを感じながら、箱を開きます。
中にはダイヤの指輪が輝いていました。