日常の恐怖

作家: 狸寝入り
作家(かな):

日常の恐怖

更新日: 2023/06/02 21:46
ホラー

本編


これは、仮にA君という友人から聞いたお話しです……

とあるマンションに引っ越してまもなくたった頃、A君の四畳半の部屋には決まって夜の22時頃に歌が聞こえてくることがわかった。

窓を開けているからだろうと、気にせず過ごしていました。

毎回サビの部分を歌わないことや英語のよく分からない歌詞にモヤモヤを覚え始めたある日、歌の途中で「おい、何、入ってきてんだよ!」と男の語気を強めた口調の声がしました。

もう寝ようと電気を消していたのですが、どうにも気になって、その声に耳をすませます。

「おい、やめろって、痛い、ホンマに痛い」

そう声がして、静かになりました。

A君はどの部屋か気になりましたが、探るのも怖いと感じて布団に潜りました。

そのつぎの日から、歌声は聞こえることなく、日々が過ぎていきます。

あの時、やっぱり何かあったのかな?
と怖くなりつつ、開けっぱなしの自室のカーテンに手を掛けた時、「ま、う、まー」というような声がして、「えっ?」
と声を出して、窓の外をみました。

右隣の一つ下の階の窓だけカーテンが開いて光っていることに気がつきます。

そっと様子を伺っていると……

「また、歌ってるんか」

という声とそれに返事するように

「ま、まうー」

という会話が聞こえてきました。

驚いていると、その部屋の窓から人の顔がでてきて、辺りを伺う様子を見せます。

ヤバいっと感じて、部屋に顔を戻したA君はそのまま窓がしまる音を待って眠りにつきました。

その後、その家の人たちは引っ越していきましたが、あの時に見つかっていればA君はどうなっていたのかと、怖々とこの話を教えてくれました。
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