『チ』と『デミ』と均衡
『チ』と『デミ』と均衡
更新日: 2023/06/02 21:46SF
本編
「あー、おもしろかったー!」
「なに読んでたん?」
「デミちゃんの最終巻!いやー、読後さわやかでよかった!」
「あぁそれ完結したんだ、自分も好きだよ。5巻くらいまでしか読んでないけど」
「ぜひぜひ続きも読んで!この世の真理に到達するから!」
「…そんな話だったっけ?のほほん日常系だと思ってたけど…」
「いやいや、割と序盤から伝承の由来とかしっかり分析してたって!」
「そういやそうだったかも、でもこの世の真理って…?まぁせっかくだし最初から読み直すわ」
「そうして!で、そっちはなに読んでるの?」
「ん」
「…あぁ、地動説のやつね!1巻だけ発売当時に読んだ!」
「これももう完結してるから読むといいよ。めっちゃおもろいから。特に中盤の…」
「あ、ネタバレ厳禁でお願いします」
「残念。じゃあ絶対読めな。電子書籍だから貸せないけど……ってどうした?ぼーっとして」
「んー、いやね?デミちゃんで、実際に観測されるまではあらゆる分岐ごとの世界が実際に存在してるって話があってさ」
「いよいよ俺の思ってた話のイメージとだいぶ違う…ってか人に言っといてネタバレ…」
「ごめんて。でもでも!これってそっちの話で当てはめたら面白いかなって思って」
「どういうこと?」
「それって天動説の世の中で地動説を証明する人たちの話じゃん?でも、どっちかだけが本当とかじゃなくて、実際に天動説が正しい世界線も存在してたんじゃないかって話」
「えーと…天動説のままでまかり通ってるパラレルワールドってこと?」
「そうそう!しかも、そっちの世界では実際に天動説が正しいことが立証されてるってわけ」
「地動説はどうなってるのさ?」
「そりゃあ、もう荒唐無稽な学説、よくて都市伝説扱いよ、むしろ存在すらしないか!」
「ふーん、でも実際に地動説の方が正しいから天動説からくつがえったわけだろ?」
「そうなんだけどー!要は、昔は天動説が正しいって人が大勢いたから世界は天動説っていわれてたんでしょう?」
「まぁ…まぁ…はい」
「その時点では実際に世界は天動説で正しかったんだけど、『あれ、地動説の方が正しくね?』って思い始めた人がどんどん増えてきたから、世の摂理やら法則が地動説に合わせて書き換えられたってわけ!」
「誰に」
「そりゃあ…いわゆる神様ってやつよ!」
「ふわっとしてんなぁ」
「妄想ですからね!」
「はいはい…。じゃあせっかくだから妄想に乗るけど、天動説がメジャーだったころの時代は、実際に仕組みとしても天動説が正しかったとして、そんな中で『いや地動説だ』って初めに言い出したやつがいるってことだろ?それはどういうきっかけだったわけ?」
「うーん、単純な計算違いとか…?」
「はた迷惑すぎるだろ…」
「あっ!じゃあ誰かがあえて流したデマだったとか!!」
「どうしてそう思うの?」
「ホントだよ。デミちゃん以外にもSF作品の読みすぎじゃないか?」
「いーじゃん面白いんだから!ほら、よく地球は上位存在の実験場であるみたいな設定あるじゃん?あんな感じでさ!」
「なに、発端は人間ですらないわけだ?」
「そうそう!ネット社会の今ならともかく、新説を一から広めるなんて昔は大変だったに決まってるじゃん?」
「たしかに」
「実際に天動説が地動説にひっくり返されるのだって長い時間かかってるしな」
「そうそう、だから人知を超えた存在とかがいて、従来の通説をねじまげるためにデマを流したりさ?」
「そういう存在がいるとして、なんでわざわざそんなことするんだよ」
「そりゃあ暇だからだよ」
「やっぱそんなところじゃない?なんせ地球は大きな実験場だからね」
「でも上位存在ってことは、どうやって人類に働きかけるんだろうな?人間に化けたり、それか当時だったらやっぱ神託みたいな感じでか?」
「どうかな~。案外、気付かないうちに当時の有識者の会話に紛れ込んでちょろっと唆したりとかの方が効果ありそうじゃない?『ここおかしくないか?』とかってさ」
「ちょっとしたホラーだな」
「気づかれないから大丈夫なんだよね」
「そこが人知を超えてるゆえんだよね!」
「だからさ、今の世の中でも『天動説が正しい』って意見が逆転すれば、もう一度法則をひっくり返せるってことじゃない?」
「もしそうだとしたら、今の世の中じゃあ簡単でしょ?ネットの拡散力なんか当時と比べたら段違いだもん」
「そうだよな、匿名の掲示板にちょこっと書き続けるだけでも誰かの目に触れるもんな」
「いやぁそれが逆に難しくて。不特定多数がいきなり見れる場所だとそれだけで信憑性に欠けて見向きもされないんだよね」
「そういうものなのか」
「いきなり一対多数はだめだよ。結局のところ、今も昔も草の根作戦が一番効果的なんだよね」
「ふーん、なまじ発達しちゃっても大変なんだね」
「まぁ時間はあるからいいんだけどさ、よかったらよろしく」
「よろしくって、もう既にやったことあるのかよ。たった今の思いつきかと思ってた」
「…え?おれ?今思いついたただの妄想だよ?変なこと言わないでよ……え?」
「え?」
0「なに読んでたん?」
「デミちゃんの最終巻!いやー、読後さわやかでよかった!」
「あぁそれ完結したんだ、自分も好きだよ。5巻くらいまでしか読んでないけど」
「ぜひぜひ続きも読んで!この世の真理に到達するから!」
「…そんな話だったっけ?のほほん日常系だと思ってたけど…」
「いやいや、割と序盤から伝承の由来とかしっかり分析してたって!」
「そういやそうだったかも、でもこの世の真理って…?まぁせっかくだし最初から読み直すわ」
「そうして!で、そっちはなに読んでるの?」
「ん」
「…あぁ、地動説のやつね!1巻だけ発売当時に読んだ!」
「これももう完結してるから読むといいよ。めっちゃおもろいから。特に中盤の…」
「あ、ネタバレ厳禁でお願いします」
「残念。じゃあ絶対読めな。電子書籍だから貸せないけど……ってどうした?ぼーっとして」
「んー、いやね?デミちゃんで、実際に観測されるまではあらゆる分岐ごとの世界が実際に存在してるって話があってさ」
「いよいよ俺の思ってた話のイメージとだいぶ違う…ってか人に言っといてネタバレ…」
「ごめんて。でもでも!これってそっちの話で当てはめたら面白いかなって思って」
「どういうこと?」
「それって天動説の世の中で地動説を証明する人たちの話じゃん?でも、どっちかだけが本当とかじゃなくて、実際に天動説が正しい世界線も存在してたんじゃないかって話」
「えーと…天動説のままでまかり通ってるパラレルワールドってこと?」
「そうそう!しかも、そっちの世界では実際に天動説が正しいことが立証されてるってわけ」
「地動説はどうなってるのさ?」
「そりゃあ、もう荒唐無稽な学説、よくて都市伝説扱いよ、むしろ存在すらしないか!」
「ふーん、でも実際に地動説の方が正しいから天動説からくつがえったわけだろ?」
「そうなんだけどー!要は、昔は天動説が正しいって人が大勢いたから世界は天動説っていわれてたんでしょう?」
「まぁ…まぁ…はい」
「その時点では実際に世界は天動説で正しかったんだけど、『あれ、地動説の方が正しくね?』って思い始めた人がどんどん増えてきたから、世の摂理やら法則が地動説に合わせて書き換えられたってわけ!」
「誰に」
「そりゃあ…いわゆる神様ってやつよ!」
「ふわっとしてんなぁ」
「妄想ですからね!」
「はいはい…。じゃあせっかくだから妄想に乗るけど、天動説がメジャーだったころの時代は、実際に仕組みとしても天動説が正しかったとして、そんな中で『いや地動説だ』って初めに言い出したやつがいるってことだろ?それはどういうきっかけだったわけ?」
「うーん、単純な計算違いとか…?」
「はた迷惑すぎるだろ…」
「あっ!じゃあ誰かがあえて流したデマだったとか!!」
「どうしてそう思うの?」
「ホントだよ。デミちゃん以外にもSF作品の読みすぎじゃないか?」
「いーじゃん面白いんだから!ほら、よく地球は上位存在の実験場であるみたいな設定あるじゃん?あんな感じでさ!」
「なに、発端は人間ですらないわけだ?」
「そうそう!ネット社会の今ならともかく、新説を一から広めるなんて昔は大変だったに決まってるじゃん?」
「たしかに」
「実際に天動説が地動説にひっくり返されるのだって長い時間かかってるしな」
「そうそう、だから人知を超えた存在とかがいて、従来の通説をねじまげるためにデマを流したりさ?」
「そういう存在がいるとして、なんでわざわざそんなことするんだよ」
「そりゃあ暇だからだよ」
「やっぱそんなところじゃない?なんせ地球は大きな実験場だからね」
「でも上位存在ってことは、どうやって人類に働きかけるんだろうな?人間に化けたり、それか当時だったらやっぱ神託みたいな感じでか?」
「どうかな~。案外、気付かないうちに当時の有識者の会話に紛れ込んでちょろっと唆したりとかの方が効果ありそうじゃない?『ここおかしくないか?』とかってさ」
「ちょっとしたホラーだな」
「気づかれないから大丈夫なんだよね」
「そこが人知を超えてるゆえんだよね!」
「だからさ、今の世の中でも『天動説が正しい』って意見が逆転すれば、もう一度法則をひっくり返せるってことじゃない?」
「もしそうだとしたら、今の世の中じゃあ簡単でしょ?ネットの拡散力なんか当時と比べたら段違いだもん」
「そうだよな、匿名の掲示板にちょこっと書き続けるだけでも誰かの目に触れるもんな」
「いやぁそれが逆に難しくて。不特定多数がいきなり見れる場所だとそれだけで信憑性に欠けて見向きもされないんだよね」
「そういうものなのか」
「いきなり一対多数はだめだよ。結局のところ、今も昔も草の根作戦が一番効果的なんだよね」
「ふーん、なまじ発達しちゃっても大変なんだね」
「まぁ時間はあるからいいんだけどさ、よかったらよろしく」
「よろしくって、もう既にやったことあるのかよ。たった今の思いつきかと思ってた」
「…え?おれ?今思いついたただの妄想だよ?変なこと言わないでよ……え?」
「え?」