星空列車
公開現代ファンタジー
概要
友人に頼まれ、30年前に廃止になった鉄道路線を見に来ると…。
本編
「ここだ、間違いない」
30年前の地図を見ながら、友人は自信満々に言う。
「駅の跡も、線路の跡も見当たらないけど……」
「まぁ、30年も経ったらこんなもんだよ」
僕が住む北海道の田舎に、東京から遊びに来た友人が「絶対に連れて行って」と唯一リクエストした場所がここだ。何でも、30年前に廃止になった鉄道路線があり、その時の線路と駅がここにあったと言うのだが、あるのは原っぱと、水溜まりみたいな小さな池だけ。いくら30年前とは言え、ここまで何の形跡もないと、場所を間違えているとしか思えない。
「やっぱり違うんじゃないの?」
僕の言葉を無視して、友人はぶつぶつと何かを呟きながら池の周りを回り始めた。僕は「何してるんだろうなぁ」と呆れながらその様子を見ていた。
「夜になったらもう一度連れて来てくれ」
「はぁ? 夜なんてこの辺は真っ暗だよ? 熊が出るかもしれないし……」
渋る僕に友人は「頼むよ」と手を合わせた。
夜になり、僕と友人はもう一度同じ場所に来た。予想通り真っ暗で、車のヘッドライトを付けたままにすると、友人は池の方へすたすたと歩いて行った。
「おいおい! 落ちないでくれよー!」
そう声をかけると、友人は「大丈夫大丈夫」と言いながら、ヘッドライトに照らされた池の淵に立つ。
僕は奇妙なことに気付いた。昼間に来た時よりも、池が大きくなっている。それと、池に映った星空だ。思わず空を見上げると……。
――曇ってる……池に星空が映るはずがない!
「帰ろう!」
僕は怖くなり、大声で叫んだ。しかし、友人は池の淵から動かない。もう一度「ねぇ! 帰ろうよ!」と叫ぶと、友人は「静かに! もう少しだから!」と叫び返す。
すると突然、辺りがぼうっと明るくなった。
――なんだ?
周りをきょろきょろと見渡した瞬間、轟音と共に池から列車が飛び出して来た。驚いて尻もちをつく僕をよそに、友人は列車に乗り込む。
「先に帰るね! じゃあ!」
満面の笑みで手を振る友人を乗せたまま、列車は一直線に夜空へと駆け上がった。
列車が走り去った後には、雲一つない、満天の星空が広がっていた。
30年前の地図を見ながら、友人は自信満々に言う。
「駅の跡も、線路の跡も見当たらないけど……」
「まぁ、30年も経ったらこんなもんだよ」
僕が住む北海道の田舎に、東京から遊びに来た友人が「絶対に連れて行って」と唯一リクエストした場所がここだ。何でも、30年前に廃止になった鉄道路線があり、その時の線路と駅がここにあったと言うのだが、あるのは原っぱと、水溜まりみたいな小さな池だけ。いくら30年前とは言え、ここまで何の形跡もないと、場所を間違えているとしか思えない。
「やっぱり違うんじゃないの?」
僕の言葉を無視して、友人はぶつぶつと何かを呟きながら池の周りを回り始めた。僕は「何してるんだろうなぁ」と呆れながらその様子を見ていた。
「夜になったらもう一度連れて来てくれ」
「はぁ? 夜なんてこの辺は真っ暗だよ? 熊が出るかもしれないし……」
渋る僕に友人は「頼むよ」と手を合わせた。
夜になり、僕と友人はもう一度同じ場所に来た。予想通り真っ暗で、車のヘッドライトを付けたままにすると、友人は池の方へすたすたと歩いて行った。
「おいおい! 落ちないでくれよー!」
そう声をかけると、友人は「大丈夫大丈夫」と言いながら、ヘッドライトに照らされた池の淵に立つ。
僕は奇妙なことに気付いた。昼間に来た時よりも、池が大きくなっている。それと、池に映った星空だ。思わず空を見上げると……。
――曇ってる……池に星空が映るはずがない!
「帰ろう!」
僕は怖くなり、大声で叫んだ。しかし、友人は池の淵から動かない。もう一度「ねぇ! 帰ろうよ!」と叫ぶと、友人は「静かに! もう少しだから!」と叫び返す。
すると突然、辺りがぼうっと明るくなった。
――なんだ?
周りをきょろきょろと見渡した瞬間、轟音と共に池から列車が飛び出して来た。驚いて尻もちをつく僕をよそに、友人は列車に乗り込む。
「先に帰るね! じゃあ!」
満面の笑みで手を振る友人を乗せたまま、列車は一直線に夜空へと駆け上がった。
列車が走り去った後には、雲一つない、満天の星空が広がっていた。