雨の唄〜10年目の紫陽花
雨の唄〜10年目の紫陽花
更新日: 2023/06/02 21:46現代ドラマ
本編
「なんだよ…ったく…」
喧嘩なんて何年ぶりだろう?
何年ぶり…?
俺はふと、まともに会話したのはいつだったのか考えた。
あいつが怒るのも無理はないか…
転職してからというもの、あいつとはすれ違いが多くなった。
結婚した時に二人で決めたルールも、いつの間にかうやむやになっていた。
いや…そうさせたのは俺か…
毎日、朝食は一緒に食べること。
週末は一緒に買い物に行くこと。
月に一度は二人で外食。
どれももう、守れていない。
俺もついカッとして、文句を言ってしまった。
今までちゃんと言わなかった自分が悪いのに、
売り言葉に買い言葉で不満をぶつけてしまった。
テーブルには、冷えた目玉焼きと、
グラスに花が生けてあった。
「この花…紫陽花だよな…」
(何かに気づいたように)
「今日って何日だ?」
カレンダーに目をやった瞬間、今日が結婚記念日だったことを思い出した。
「しまった…!」
結婚記念日を忘れるなんて、そりゃあ怒るに決まってる。
気づかない俺が悪かった。
でも、アイツもアイツだ…
それならそうとはっきり言えば良いのに…
アイツ…どこに行ったんだ?
アイツの行く所なんて、いつも気にも留めていなかった。
俺は一生懸命、アイツの行きそうな所を考えた。
だめだ…わからない…。
俺はアイツのこと、何もわかっていなかったんだ…。
諦めて帰ってくるのを待とうかと思ったが、ふと、1つだけ思い出した。
もしかして、あそこかも…。
待っていても時間の無駄だ。
一か八か行ってみよう。
もし、あの場所にアイツがいたら、仲直りしよう。
きっとアイツもそう思ってるはずだから。
外は小雨が降っていたが、そんなことはおかまいなしに、俺はあの場所へ向かった。
それは、アイツと初めて出会った場所。
あの日も、雨が降っていた。
ー入店のベルー
「あっ…
どうして、ここだってわかったの?」
「いや…その…ここしか浮かばなくて…」
「そう。(微笑)」
「ごめん…言い過ぎた…」
「ううん、私も悪かった。
ごめんね」
「帰ろう」
「うん。迎えに来てくれてありがとう」
相変わらず不器用な彼。
慌てて飛び出してきたから傘は持ってこなかった。
迎えに来たはずの彼も傘は一つだけ。
「ん…!」
「うん…」
相合傘なんて何年ぶりだろう?
照れ臭さを隠しきれないまま、黙って傘をさした。
アイツが腕をそっと掴んで寄り添った。
雨の日も悪くない。
「紫陽花…浮気なんてしてないからな」
「やだ…(笑)そんなこと気にしてたの?紫陽花はね、他にも意味があるのよ」
「知ってるよ。家族、だろ?
結婚記念日、忘れててごめん」
「覚えてたの?」
「だって、結婚式のブーケ、紫陽花だったろ?」
「よく覚えてるね(笑)もう忘れてるかと思ってた。紫陽花、好きなのよね」
「うん。なぁ、これからもよろしくな」
「ふふ。はい。こちらこそ」
ぬくもりを感じながら、ふと思った。
やっぱり、コイツを選んで、良かった。
改めて気づかせてくれた雨の日のことを、
俺は忘れない。
あなたと寄り添い歩きましょう。
あなたと二人、傘の中。
0喧嘩なんて何年ぶりだろう?
何年ぶり…?
俺はふと、まともに会話したのはいつだったのか考えた。
あいつが怒るのも無理はないか…
転職してからというもの、あいつとはすれ違いが多くなった。
結婚した時に二人で決めたルールも、いつの間にかうやむやになっていた。
いや…そうさせたのは俺か…
毎日、朝食は一緒に食べること。
週末は一緒に買い物に行くこと。
月に一度は二人で外食。
どれももう、守れていない。
俺もついカッとして、文句を言ってしまった。
今までちゃんと言わなかった自分が悪いのに、
売り言葉に買い言葉で不満をぶつけてしまった。
テーブルには、冷えた目玉焼きと、
グラスに花が生けてあった。
「この花…紫陽花だよな…」
(何かに気づいたように)
「今日って何日だ?」
カレンダーに目をやった瞬間、今日が結婚記念日だったことを思い出した。
「しまった…!」
結婚記念日を忘れるなんて、そりゃあ怒るに決まってる。
気づかない俺が悪かった。
でも、アイツもアイツだ…
それならそうとはっきり言えば良いのに…
アイツ…どこに行ったんだ?
アイツの行く所なんて、いつも気にも留めていなかった。
俺は一生懸命、アイツの行きそうな所を考えた。
だめだ…わからない…。
俺はアイツのこと、何もわかっていなかったんだ…。
諦めて帰ってくるのを待とうかと思ったが、ふと、1つだけ思い出した。
もしかして、あそこかも…。
待っていても時間の無駄だ。
一か八か行ってみよう。
もし、あの場所にアイツがいたら、仲直りしよう。
きっとアイツもそう思ってるはずだから。
外は小雨が降っていたが、そんなことはおかまいなしに、俺はあの場所へ向かった。
それは、アイツと初めて出会った場所。
あの日も、雨が降っていた。
ー入店のベルー
「あっ…
どうして、ここだってわかったの?」
「いや…その…ここしか浮かばなくて…」
「そう。(微笑)」
「ごめん…言い過ぎた…」
「ううん、私も悪かった。
ごめんね」
「帰ろう」
「うん。迎えに来てくれてありがとう」
相変わらず不器用な彼。
慌てて飛び出してきたから傘は持ってこなかった。
迎えに来たはずの彼も傘は一つだけ。
「ん…!」
「うん…」
相合傘なんて何年ぶりだろう?
照れ臭さを隠しきれないまま、黙って傘をさした。
アイツが腕をそっと掴んで寄り添った。
雨の日も悪くない。
「紫陽花…浮気なんてしてないからな」
「やだ…(笑)そんなこと気にしてたの?紫陽花はね、他にも意味があるのよ」
「知ってるよ。家族、だろ?
結婚記念日、忘れててごめん」
「覚えてたの?」
「だって、結婚式のブーケ、紫陽花だったろ?」
「よく覚えてるね(笑)もう忘れてるかと思ってた。紫陽花、好きなのよね」
「うん。なぁ、これからもよろしくな」
「ふふ。はい。こちらこそ」
ぬくもりを感じながら、ふと思った。
やっぱり、コイツを選んで、良かった。
改めて気づかせてくれた雨の日のことを、
俺は忘れない。
あなたと寄り添い歩きましょう。
あなたと二人、傘の中。