森のなか
森のなか
更新日: 2023/06/02 21:46現代ファンタジー
本編
目覚めたら森のなかにいた。森は湿ったやわらかな女の腹みたいで歩くたびに足が森に沈んでぬれた。なま温かい濃密な蒸気を吸いこむと肺じゅうに森が孵化しそうだ。森は暗かった。遠くで小鳥が鳴いていた。けどほんのかすかだ。身の危険を感じる気配はない。
丸一日森をあるいた。最初に目覚めた所でたち往生していた。仰ぐと、天は高くせりあがった樹々の真ん中に針の穴みたいにあった。
「ようやく見つけました」
最後の乾パンをゆっくり味わって食べられる切り株をみつけ腰をおろしたときだった。かれはまるで高級ホテルの給仕長のように背筋を行儀よく伸ばして立っていた。
体長はおよそ五十㎝。尾はその半分よりややなが。漫画のように太っていた。だがつぶらでうるんだ黒ボタンの目はやはりアライグマだった。名刺を渡された。《森の案内人、鼓直》。鼓直は栗でもあらうみたいに黒くまがった爪を揉んでいた。
ぼくが乾パンをかじっている間、腰に魚籠をさげた鼓直は下の渓流に降りていって竿をたらした。四匹の岩魚と三匹の鮎と一匹の肥えた山女魚をつりあげた。大漁だった。
「どうですか、これからいつまたべられるかわかりません、ここですこし召し上がっておいたら。塩焼きにできますが」
五匹を塩で焼いてもらい岩魚を新聞紙に包んでもらった。鮎は食べた。おいしかった。
元気になった。ぼくは鮎を食べながら、よく人は音楽や絵や演劇や小説やテレビから元気をもらったなどというがそれはテイのいい嘘だ。そもそも元気とは他者からもらったり他者に与えたりするものじゃない。食べた魚がぼくのからだを温めるのと同じく自分のからだの内がわから湧きでるものだ。思った。
鼓直はぼくが魚を食べているあいだくろいまがったかぎ爪を器用につかって一匹の肥えた山女魚の腹を割いてあら塩をていねいに塗りこんだ。鼓直はこしにまだ五匹さげていた。家族への土産だそうである。
ぼくと鼓直は出発した。ぼくらは森を東へ進んだ。すそ野からのびる山やまの尾根に谿にそってひたすらあるいた。
鼓直は急に立ちどまってくろくまがった爪を口にチュっとふくんだ。それから唾液でぬれてかがやく爪を天にかざした。
「ふりだしますね」鼓直はいった。
「ええ、たしかに風が生あたたかくなってきているように感じます」ぼくはいってみた。実際のところまったくわからなかった。
「すこし、辛抱していただきたいのですが」
鼓直は家庭の事情を話し始めた。
最近、人が森に致死率のたかいウィルスを持ちこんだ。先日生まれた赤ん坊が罹患した。この獲れたばかりの肥えた山女魚をぜひ家に届けたい。しばらくひとりで森のなかをすすんではくれまいか。その間ずっと鼓直はいんぎんにくろい爪を揉んでいた。
「できるかぎりはやく戻ってきます」
鼓直は森のなかに消えた。
雨がふりだした。雨は滝のようになった。
結局その日、鼓直は戻ってこなかった。どしゃぶりの森を一日じゅう歩いた。鼓直にいわれたとおりコンパスを確認し東へと進んだ。雨はまるで鉋が柱をなめるようにぼくの体温を確実に削っていった。
三日経っても雨はやまなかった。リュックの魚の塩焼きはもうなかった。
鼓直が離れてから四日目か五日目かあるいは実際はまだ三日目だったかもしれない。森と森をつなぐ接着面のような森の境界にたどりついたのはその日の昼過ぎだった。
突然に森は終わった。そこはまるで夢中で読みすすめる物語が暗喩も文脈も句読点さえも理不尽に奪いとられてしまったような森の境界だった。そこは断崖だった。
うつ伏せになって崖の底をみおろした。底はゆっくりと流れていた。崖の底まで蜘蛛の巣のような膜が何層も濃くなっていた。熊や鹿やイノシシの死骸が、非常口のような格好のヒトが、引っかかっていた。
「たいへんお待たせしました」
ふりむくと、鼓直が立っていた。鼓直は谷底について説明をした。
この谷底をのぞいてみえる濃い霧のようなものはしろい糸のような生きものです。あるいはそれは、しろい糸のような生きものの巣かもしれません。しろい糸のような生きものの実体やその生態はこの森のだれも知りません。だれも知ろうとしません。みてわかるとおりしろい部分のすべてが生きものです。しろい糸のような生きものは、谷底に横たわる川のようにみえる巨大なひとつの個体かもしれません。あるいは無数のちいさなほそい糸状の虫のような生きものの集合体かもしれません。まだだれにもその正体はわかっておりません。ですが、森の住民にとってしろい糸のような生きものがなんであれ、しろい糸のような生きものも私たちとおなじ森の一部です。このふちから落ちれば、しろい糸のような生きもののうえで、皮と肉と骨は溶かされ骨髄をゆっくりと吸われ死にたえます。
「ではこの谷、渡りますよ」
ありえない話だった。谷の向こうの森へは距離にして百メートル強。谷間には皮と骨と肉と溶かし骨髄をすって生きるしろい糸のような生きものが横たわっている。
鼓直は咳をしてポッケから名作童話「よだかの列車」を取りだし読みはじめた。
ぼくと鼓直はよだかの列車に乗りこんでいて猛スピードで断崖をはいおりていた。しろい糸のような生きものの、ねばねばした糸をひく河を掻きわけ、まだ息のある動物をよだかの列車にひきいれて命をすくった。白骨化した生きものの墓(はか)をこさえカラフルな草花をそえて供養しがけをのぼりはじめた。気がつくと谷のこちら側に渡っていた。
「うしろはふりむかないでください」
谷を振り返ろうとしたぼくを鼓直は窘めた。
「うしろをふりむかないでください。どのようなうしろも絶対に。なにがおこってもふりむかないでください。鼓は森の前へと案内することはできます。ですがうしろへふりかえるものは見捨てます。それが森ですので」
ぼくはうなずいた。
こっちの森は存外にあたたかかった。森が大気中の水ぶんを大きくすって白キノコのようにふくれていた。鼓直はさっき朗読したつづきを熱心に黙読していた。それからまたくろいかぎ爪を口にふくみ空にかざした。
「ふってきますね」ぼくは鼓直にいった。
よだかの列車のランドリー室で乾燥させたカッパを着た。あたたかかった。
先と同じふりの雨がはじまった。雨足は強くなった。濁流が足下に流れていた。
ぼくと鼓直は足をすくわれないように土砂ぶりの山野をかき分けてすすんだ。雨の森はまるで龍の腹のなかのようだ。完全に太陽を拒絶していた。鼓直が魁をぼくが殿を務めた。ときに交替しふたりで森をすすんだ。
気がつくとぼくは鼓直とはぐれていた。どこかぼくはすでに振り向いていたのかもしれない。どのみちひとりで進むしかない。
夜になっていた。洞をみつけそこで夜を明かすことにした。
夜の洞はぼくの想像をはるかに超えていた。夜の洞は完璧な闇をつくりだしていた。ぼくは黒に閉じこめられた。ぼくはどこへもいけなかった。漆黒のなか感覚はまひした。手を叩いても反響しない。音をとらえるふたつの耳が闇のどこかに漂っている。洞の闇は音も手の感触も瞬きも冷たさも怯えからくる寒さも汗も尿意もぼくの実体から発せられる思念も思念を発する実体を構築しているはずの観念もすべてのみこんだ。闇にのまれぼくは洞に同化した。洞のぼくは観念の総合体となった。ぼくは感覚も恐怖も時間も場所も概念も摂理もない時空を超越した。ぼくはいまどこにいる。ボクハダレダ。キミハダレダ。
洞で気をうしなったままぼくはふかいねむりに落ちた。
朝、めざめると腹がもう半分割かれていた。
夢の途中だった。夢のなかでぼくの腹はすでに半分割かれていてさらに腹のもう半分が割かれぼくが目覚めたのか、はたまたその腹とはぼくとは違ったほかのだれかの腹でぼくはそのだれかの腹が割かれるのをただじっと真横で眺めていただけなのか、そこまでは思いだせない。奇妙な夢だった。目覚めたぼくははらを触るとくっついていた。
雨は絶え間なくふっていた。息苦しいということだけがたしかで目覚めたここが洞なのかいまがいつとかぼくはわからない。正直いって目覚めたのがこのぼくなのか? それすらぼくにはわからない。すると突然、すさまじい恐怖におそわれた。この雨の森は生きていてぼくという存在をさき… ゆっくりと咀嚼しのみこんでいる! ぼくの腰をかみくだく音が聞こえる! ぼくは気をうしなった。
目覚めたら森のなかにいた。森はしめったやわらかな女の腹みたいであるくたびに足が森に沈んでぬれた。なま温かい濃密な蒸気をすいこむと肺じゅうに森が孵化しそうで怖かった。
森は暗かった。遠くで獣がかすかに吼えている。ぼくは恐ろしくて身震いした。
それからぼくは恐怖のなか森をさまよいあるいた。ぼくはその夜、結局、目覚めた所で天をあおぐことになった。高くせりあがった樹々はまるで夜の森を覆う牢獄のようだ。
「ようやく見つけたわ」
かのじょは小さな嘴でいった。
「やれやれだわ。ずいぶんと探したんだから」
小鳥は黒ビーズの目でぼくの胸ポッケをしめした。《森の案内人、鼓直》と書かれた葉っぱが一枚、はらはらと落ちた。
「化かされたのよ。間抜けね、ニンゲンって」
唖然としていると、こっちじゃなくてあっち、といってかのじょはぼくの手をとって雨ふる森のそとへと連れだした。
0丸一日森をあるいた。最初に目覚めた所でたち往生していた。仰ぐと、天は高くせりあがった樹々の真ん中に針の穴みたいにあった。
「ようやく見つけました」
最後の乾パンをゆっくり味わって食べられる切り株をみつけ腰をおろしたときだった。かれはまるで高級ホテルの給仕長のように背筋を行儀よく伸ばして立っていた。
体長はおよそ五十㎝。尾はその半分よりややなが。漫画のように太っていた。だがつぶらでうるんだ黒ボタンの目はやはりアライグマだった。名刺を渡された。《森の案内人、鼓直》。鼓直は栗でもあらうみたいに黒くまがった爪を揉んでいた。
ぼくが乾パンをかじっている間、腰に魚籠をさげた鼓直は下の渓流に降りていって竿をたらした。四匹の岩魚と三匹の鮎と一匹の肥えた山女魚をつりあげた。大漁だった。
「どうですか、これからいつまたべられるかわかりません、ここですこし召し上がっておいたら。塩焼きにできますが」
五匹を塩で焼いてもらい岩魚を新聞紙に包んでもらった。鮎は食べた。おいしかった。
元気になった。ぼくは鮎を食べながら、よく人は音楽や絵や演劇や小説やテレビから元気をもらったなどというがそれはテイのいい嘘だ。そもそも元気とは他者からもらったり他者に与えたりするものじゃない。食べた魚がぼくのからだを温めるのと同じく自分のからだの内がわから湧きでるものだ。思った。
鼓直はぼくが魚を食べているあいだくろいまがったかぎ爪を器用につかって一匹の肥えた山女魚の腹を割いてあら塩をていねいに塗りこんだ。鼓直はこしにまだ五匹さげていた。家族への土産だそうである。
ぼくと鼓直は出発した。ぼくらは森を東へ進んだ。すそ野からのびる山やまの尾根に谿にそってひたすらあるいた。
鼓直は急に立ちどまってくろくまがった爪を口にチュっとふくんだ。それから唾液でぬれてかがやく爪を天にかざした。
「ふりだしますね」鼓直はいった。
「ええ、たしかに風が生あたたかくなってきているように感じます」ぼくはいってみた。実際のところまったくわからなかった。
「すこし、辛抱していただきたいのですが」
鼓直は家庭の事情を話し始めた。
最近、人が森に致死率のたかいウィルスを持ちこんだ。先日生まれた赤ん坊が罹患した。この獲れたばかりの肥えた山女魚をぜひ家に届けたい。しばらくひとりで森のなかをすすんではくれまいか。その間ずっと鼓直はいんぎんにくろい爪を揉んでいた。
「できるかぎりはやく戻ってきます」
鼓直は森のなかに消えた。
雨がふりだした。雨は滝のようになった。
結局その日、鼓直は戻ってこなかった。どしゃぶりの森を一日じゅう歩いた。鼓直にいわれたとおりコンパスを確認し東へと進んだ。雨はまるで鉋が柱をなめるようにぼくの体温を確実に削っていった。
三日経っても雨はやまなかった。リュックの魚の塩焼きはもうなかった。
鼓直が離れてから四日目か五日目かあるいは実際はまだ三日目だったかもしれない。森と森をつなぐ接着面のような森の境界にたどりついたのはその日の昼過ぎだった。
突然に森は終わった。そこはまるで夢中で読みすすめる物語が暗喩も文脈も句読点さえも理不尽に奪いとられてしまったような森の境界だった。そこは断崖だった。
うつ伏せになって崖の底をみおろした。底はゆっくりと流れていた。崖の底まで蜘蛛の巣のような膜が何層も濃くなっていた。熊や鹿やイノシシの死骸が、非常口のような格好のヒトが、引っかかっていた。
「たいへんお待たせしました」
ふりむくと、鼓直が立っていた。鼓直は谷底について説明をした。
この谷底をのぞいてみえる濃い霧のようなものはしろい糸のような生きものです。あるいはそれは、しろい糸のような生きものの巣かもしれません。しろい糸のような生きものの実体やその生態はこの森のだれも知りません。だれも知ろうとしません。みてわかるとおりしろい部分のすべてが生きものです。しろい糸のような生きものは、谷底に横たわる川のようにみえる巨大なひとつの個体かもしれません。あるいは無数のちいさなほそい糸状の虫のような生きものの集合体かもしれません。まだだれにもその正体はわかっておりません。ですが、森の住民にとってしろい糸のような生きものがなんであれ、しろい糸のような生きものも私たちとおなじ森の一部です。このふちから落ちれば、しろい糸のような生きもののうえで、皮と肉と骨は溶かされ骨髄をゆっくりと吸われ死にたえます。
「ではこの谷、渡りますよ」
ありえない話だった。谷の向こうの森へは距離にして百メートル強。谷間には皮と骨と肉と溶かし骨髄をすって生きるしろい糸のような生きものが横たわっている。
鼓直は咳をしてポッケから名作童話「よだかの列車」を取りだし読みはじめた。
ぼくと鼓直はよだかの列車に乗りこんでいて猛スピードで断崖をはいおりていた。しろい糸のような生きものの、ねばねばした糸をひく河を掻きわけ、まだ息のある動物をよだかの列車にひきいれて命をすくった。白骨化した生きものの墓(はか)をこさえカラフルな草花をそえて供養しがけをのぼりはじめた。気がつくと谷のこちら側に渡っていた。
「うしろはふりむかないでください」
谷を振り返ろうとしたぼくを鼓直は窘めた。
「うしろをふりむかないでください。どのようなうしろも絶対に。なにがおこってもふりむかないでください。鼓は森の前へと案内することはできます。ですがうしろへふりかえるものは見捨てます。それが森ですので」
ぼくはうなずいた。
こっちの森は存外にあたたかかった。森が大気中の水ぶんを大きくすって白キノコのようにふくれていた。鼓直はさっき朗読したつづきを熱心に黙読していた。それからまたくろいかぎ爪を口にふくみ空にかざした。
「ふってきますね」ぼくは鼓直にいった。
よだかの列車のランドリー室で乾燥させたカッパを着た。あたたかかった。
先と同じふりの雨がはじまった。雨足は強くなった。濁流が足下に流れていた。
ぼくと鼓直は足をすくわれないように土砂ぶりの山野をかき分けてすすんだ。雨の森はまるで龍の腹のなかのようだ。完全に太陽を拒絶していた。鼓直が魁をぼくが殿を務めた。ときに交替しふたりで森をすすんだ。
気がつくとぼくは鼓直とはぐれていた。どこかぼくはすでに振り向いていたのかもしれない。どのみちひとりで進むしかない。
夜になっていた。洞をみつけそこで夜を明かすことにした。
夜の洞はぼくの想像をはるかに超えていた。夜の洞は完璧な闇をつくりだしていた。ぼくは黒に閉じこめられた。ぼくはどこへもいけなかった。漆黒のなか感覚はまひした。手を叩いても反響しない。音をとらえるふたつの耳が闇のどこかに漂っている。洞の闇は音も手の感触も瞬きも冷たさも怯えからくる寒さも汗も尿意もぼくの実体から発せられる思念も思念を発する実体を構築しているはずの観念もすべてのみこんだ。闇にのまれぼくは洞に同化した。洞のぼくは観念の総合体となった。ぼくは感覚も恐怖も時間も場所も概念も摂理もない時空を超越した。ぼくはいまどこにいる。ボクハダレダ。キミハダレダ。
洞で気をうしなったままぼくはふかいねむりに落ちた。
朝、めざめると腹がもう半分割かれていた。
夢の途中だった。夢のなかでぼくの腹はすでに半分割かれていてさらに腹のもう半分が割かれぼくが目覚めたのか、はたまたその腹とはぼくとは違ったほかのだれかの腹でぼくはそのだれかの腹が割かれるのをただじっと真横で眺めていただけなのか、そこまでは思いだせない。奇妙な夢だった。目覚めたぼくははらを触るとくっついていた。
雨は絶え間なくふっていた。息苦しいということだけがたしかで目覚めたここが洞なのかいまがいつとかぼくはわからない。正直いって目覚めたのがこのぼくなのか? それすらぼくにはわからない。すると突然、すさまじい恐怖におそわれた。この雨の森は生きていてぼくという存在をさき… ゆっくりと咀嚼しのみこんでいる! ぼくの腰をかみくだく音が聞こえる! ぼくは気をうしなった。
目覚めたら森のなかにいた。森はしめったやわらかな女の腹みたいであるくたびに足が森に沈んでぬれた。なま温かい濃密な蒸気をすいこむと肺じゅうに森が孵化しそうで怖かった。
森は暗かった。遠くで獣がかすかに吼えている。ぼくは恐ろしくて身震いした。
それからぼくは恐怖のなか森をさまよいあるいた。ぼくはその夜、結局、目覚めた所で天をあおぐことになった。高くせりあがった樹々はまるで夜の森を覆う牢獄のようだ。
「ようやく見つけたわ」
かのじょは小さな嘴でいった。
「やれやれだわ。ずいぶんと探したんだから」
小鳥は黒ビーズの目でぼくの胸ポッケをしめした。《森の案内人、鼓直》と書かれた葉っぱが一枚、はらはらと落ちた。
「化かされたのよ。間抜けね、ニンゲンって」
唖然としていると、こっちじゃなくてあっち、といってかのじょはぼくの手をとって雨ふる森のそとへと連れだした。