手紙

作家: リコピン
作家(かな):

手紙

更新日: 2023/06/02 21:46
その他

本編


拝啓
お元気ですか?そちらの生活にはもう慣れましたか?君がいなくなってから、ぼくは君の面影ばかり見ている気がします。

君はおぼえていないかもしれないけど、幼稚園のころ、君がとなりに引っ越してきてぼくの家にあいさつにきた日、君はお母さんの影に隠れてじっとこちらを見ていたね。ぼくは君と仲良くなりたくてちょっとふざけてみせたら、君は笑ってくれた。その顔が太陽のように眩しく見えたの、ぼくはいまだに忘れられないよ。
次の日からぼくは、毎日のように君を遊びにさそっていろんな所に行ったよね。近所のだがし屋、学校の近くの公園……そうそう!お寺の柿をとろうとしておしょうさんにひどく叱られたこともあったっけ。
全部全部、ぼくから誘って、君はいつもぼくの後ろをついてきた。それは小学校に上がってからも変わらなかった。
小学校の入学式の日、ぼくと君は別々のクラスになっちゃって、君はぼくの手をギュッとにぎって泣き出してしまったの、おぼえてるかな?あのとき、君がなかなか泣き止んでくれないから、ぼくもいっしょに泣き出してしまったんだよね。2人して周りの大人みーんな困らせて、お母さんたちが飛んできたら、やっと泣き止んだ。

君はきっと不安だったんだよね。ぼくらはずっといっしょだったから。ぼくがさそって、君がついてくる。これがぼくらの日常だったし、あたりまえにつづいていくと思ってた。
だから中学一年の冬、初めて君に呼び出されて、ぼくはとってもおどろいたんだ。そして同時に、とってもうれしかった。ぼくはワクワクしながら待ち合わせの場所に向かったんだ。でも、君がそこに現れることはなかった……

君があの日、ぼくに渡すつもりだった手紙は今、ぼくの目の前にあります。君の気持ちはちゃんと伝わったよ。返事をどうしようか考えたんだけど、やっぱり直接あって伝えることにするよ。ちょっと遅くなっちゃうけど、待っててね。 敬具
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