レインドロップ
レインドロップ
更新日: 2023/06/02 21:46恋愛
本編
「私、結婚、、、するんだ。」
彼女と別れてから3年の月日が経とうとしている。
部屋のカレンダーを見ると改めて3年と言う年月が過ぎた事実が心に刺さる。
「色々あったね。」
付き合いださしてすぐのケンカ。理由など大した理由ではない。彼女が楽しみにしていた約束の日を僕は仕事の都合でドタキャンした。
付き合いはじめてしばらくたったある日、僕は仕事を理由にデートの誘いを断った。仕事が終わらずに残業し、上司と夜の街に繰り出した事もある。
そういう日に限って彼女はサプライズとばかりに僕の家で晩御飯を作って待っていた。
彼女からの結婚報告を聞いてから数ヵ月が過ぎ、
僕はいつものように休日のスーパーへ買い出しへと出かける。そこで目にするのは幸せそうに肩を並べて買い物をするカップル、子供と一緒に買い物をする夫婦。僕は逃げるように買い物を済ませて車を止めた屋上へと向かう。
「全部、俺が悪いんじゃないかよ。」
彼女との思い出が思い出される度に、同時に思い出される後悔。自分の都合で彼女をないがしろにした自分。程なくして去っていった彼女。当然だ。
せめて彼女にあの時、言えなかったお祝いの言葉を言おうか。。。いや、彼女は旦那となる人との時間を楽しんでいるだろう。
「メールで、いいか。」
僕からのメール。果たして読んでくれるだろうか。
読んでくれても、読んでくれなくても構わない。僕は僕の気持ちを伝えよう。乗り込んだ車を降りケータイを手に、スーパーの屋上駐車場にある自動販売機コーナーへ向かう。苦いブラックコーヒーを片手にベンチへ腰かけメールを打ち始める。
《このメールは果たして読まれるのか?
そんなことを思いながら、今、メールを打っています。》
5分、10分。。。だめだ。続かない。
お祝いのメッセージを打つと決めたのに言葉が出てこない。今更、彼女との思い出を書いたところで迷惑にしかならないだろう。ならば素直におめでとう。と打てばいいではないか。考えれば考えるほど打てなくなり、コーヒーも底をつく。
「くそっ。」
普段は飲まない苦いブラックコーヒーの缶をゴミ箱に入れると屋上の駐車場へと歩き出す。階下の広い駐車スペースには家族連れがワイワイと騒ぎながら買い物を終えて帰って行く様子が続いている。
自分の駐車スペースの近く、フェンスにもたれ掛かるとケータイを取り出してメールの続きを打とうと試みる。雑踏。風の音。車の音。館内アナウンスの声に僕のメールは続きを表示し始める。
どのくらいの時間が過ぎただろう。辺りは静かになり、風の音も聞こえなくなった。
彼女の幸せを願うメールを表示した画面にポツリ、ポツリと小さな水滴が落ちはじめ、僕はメールの最後、お祝いの言葉を入力する。
「これで、よし。」
ケータイの画面に《送信完了しました。》の文字が表示される。ポツリポツリとケータイの画面に落ちる水滴は曇天の空から落ちた雨粒だったのか、僕自身の涙なのか分からなくなった。
~終わり~
0彼女と別れてから3年の月日が経とうとしている。
部屋のカレンダーを見ると改めて3年と言う年月が過ぎた事実が心に刺さる。
「色々あったね。」
付き合いださしてすぐのケンカ。理由など大した理由ではない。彼女が楽しみにしていた約束の日を僕は仕事の都合でドタキャンした。
付き合いはじめてしばらくたったある日、僕は仕事を理由にデートの誘いを断った。仕事が終わらずに残業し、上司と夜の街に繰り出した事もある。
そういう日に限って彼女はサプライズとばかりに僕の家で晩御飯を作って待っていた。
彼女からの結婚報告を聞いてから数ヵ月が過ぎ、
僕はいつものように休日のスーパーへ買い出しへと出かける。そこで目にするのは幸せそうに肩を並べて買い物をするカップル、子供と一緒に買い物をする夫婦。僕は逃げるように買い物を済ませて車を止めた屋上へと向かう。
「全部、俺が悪いんじゃないかよ。」
彼女との思い出が思い出される度に、同時に思い出される後悔。自分の都合で彼女をないがしろにした自分。程なくして去っていった彼女。当然だ。
せめて彼女にあの時、言えなかったお祝いの言葉を言おうか。。。いや、彼女は旦那となる人との時間を楽しんでいるだろう。
「メールで、いいか。」
僕からのメール。果たして読んでくれるだろうか。
読んでくれても、読んでくれなくても構わない。僕は僕の気持ちを伝えよう。乗り込んだ車を降りケータイを手に、スーパーの屋上駐車場にある自動販売機コーナーへ向かう。苦いブラックコーヒーを片手にベンチへ腰かけメールを打ち始める。
《このメールは果たして読まれるのか?
そんなことを思いながら、今、メールを打っています。》
5分、10分。。。だめだ。続かない。
お祝いのメッセージを打つと決めたのに言葉が出てこない。今更、彼女との思い出を書いたところで迷惑にしかならないだろう。ならば素直におめでとう。と打てばいいではないか。考えれば考えるほど打てなくなり、コーヒーも底をつく。
「くそっ。」
普段は飲まない苦いブラックコーヒーの缶をゴミ箱に入れると屋上の駐車場へと歩き出す。階下の広い駐車スペースには家族連れがワイワイと騒ぎながら買い物を終えて帰って行く様子が続いている。
自分の駐車スペースの近く、フェンスにもたれ掛かるとケータイを取り出してメールの続きを打とうと試みる。雑踏。風の音。車の音。館内アナウンスの声に僕のメールは続きを表示し始める。
どのくらいの時間が過ぎただろう。辺りは静かになり、風の音も聞こえなくなった。
彼女の幸せを願うメールを表示した画面にポツリ、ポツリと小さな水滴が落ちはじめ、僕はメールの最後、お祝いの言葉を入力する。
「これで、よし。」
ケータイの画面に《送信完了しました。》の文字が表示される。ポツリポツリとケータイの画面に落ちる水滴は曇天の空から落ちた雨粒だったのか、僕自身の涙なのか分からなくなった。
~終わり~