どれどれ ぽんぽん に きいてみよう

作家: 浜風 帆
作家(かな): はまかぜ ほ

どれどれ ぽんぽん に きいてみよう

更新日: 2023/06/02 21:46
詩、童話

本編


 はるの あしおとが きこえはじめた うららかな ひ。
 おひるごはんを いっぱい のこしてしまった ななちゃんに おかあさんが いいました。

「もうすぐ ようちえんも おしまい。しょうがくせいに なるのよ。そしたら きゅうしょくがでるんだからね、ちゃんと たべなさい」

 ななちゃんも、ちょっと がっこうの きゅうしょくが しんぱいでした。

「それに、もっと、ちゃんと たべないと おおきくなれないわよ」 

 いつも おかあさんに いわれます。
 だけど、ななちゃんは ききません。
 そこで おかあさんは、「どれどれ ポンポンに きいてみよう」と、ななちゃんの おなかに みみをあて、

「もっと たべてよーって いってるよ」といいました。

 ななちゃんは「ポンポンが しゃべるわけないよ」といって はしって にげました。
 だけど、ちょっぴり ほんとうに しゃべったら どうしよう。とも、おもいました。



 そこで ななちゃんは、ほんとうに、ポンポンから、こえが きこえるのか、
 じぶんの おなかに みみを つけようと がんばりました。
 うーん、うーん、からだを、かがめたり、ひねったり。でも、おなかに みみは つかないなー。
 そのうち、ごろーんと いっかいてん。

 どすん!!

「イタタタタタ」と、ななちゃんは うった あたまを なでていると
「イタタタタ からだ ひねっちゃったよ」

 と どこかから こえが きこえてきました。

 みみをすますと

「もう、ななちゃん きをつけてよね」

 と じぶんの おなかから こえが きこえてきたのでした。

「ああーー、ポンポンが しゃべった」



「ぼく ななちゃんの ポンポン。あー、まだ なにか たべたいな。
 そーだ アイスクリーム たべようよ」

 ポンポンが いいました。

「プリンもいいなー、クッキー、ラムネ、グミ、かりんとう それに おだんごも いいなー」

 ポンポンは うれしそうに いいました。

「わーーーー」ななちゃんは うれしくなりました。

 だって ななちゃんのポンポンも やっぱり おかし だいすき だったんですもの。


 さっそく おかあさんに ポンポンも おかし たべたいって いってるよ というと。

「まだ だめ。おひる たべた ばっかりでしょ。おやつまで がまん」

 っていわれました。


 そのひの よる ななちゃんが ごはんを たべていると みんなの ポンポン から いろんな こえが きこえてきました。
 ごはんを ガツガツ たべていた、おにいちゃんの ポンポン からは

「もっと ゆっくり よくかんでたべてよー」

 ダイエットで やさいしか たべていなかった、おかあさんの ポンポン からは

「もっと いろいろ たべたいなー」

 おさけを のんでいた おとうさんの ポンポン からは

「♩ああ~♫ いいきぶん~♪」

 ようきな うたが きこえてきました。でも……

「シクシク つかれたな~ しんどいな~」

 って こえも きこえてきました。



 つぎのひ。
 きょうは おかあさんと こうえんに あそびに きました。
 いっぱい あそんで つかれたので おやつのクッキーをたべて きゅうけいです。
 ななちゃんは こうえん で あそんでいるとき ぽんぽんに きいてみました。

「クッキー おいしいね。ごはんも いつも おやつだったら いいのにね。にがてな ブロッコリーも おやつだったら いっぱい たべるのにね」
「そうだねー」

 とポンポンも こたえてくれました。

 ななちゃんが 2まいめの クッキーを たべはじめたとき、はとの たいぐん が こうえんに やってきました。

「プロップ、おなかすいた。プルップ、おなかすいた。プルップ、おなかすいた。プルップ、おかかすいた。プロップ、おなかすいた。プルップ、おなかすいた。プルップ、おなかすいた。プルップ、おかかすいた……」 
 
 はとの ポンポンの だいがっしょう。
 そして はとの たいぐんは ななちゃんに だんだん ちかづいてきます。
 ななちゃんは びっくりして クッキーを ポロっと おとしてしまいました。 
 はとのうごきが いっしゅん とまり、 パッと みんなが、 こっちをみました。

 そして……

「おなかすいた。おなかすいた。おなかすいた。おなかすいた。おなかすいた……」

 と すごい いきおいで ちかづいてきたのです。 

「きゃーーー」と ななちゃんは にげだしました。



 やっとのおもいで こうえんの なかを にげて くると こんどは

「うま、うま、うま、うま」

 って こえが きこえてきまた。

 こえのほう を さがすと しげみのなかで ちいさなこねこが おかあさんの おっぱいを いっしょうけんめい のんで いました。

 ……かわいいーなー。
 ……なんだか いいなー。

 って ななちゃんは おもいました。

 するとこんどは

「ギューーーーーーーーーーーーー」

 という すごいおとが きこえてきました。
 ポンポンが いいました。

「おかあさん ねこの おなかのなかは からっぽだね」

 また、おかあさん ねこの おなかが ギューーーーーーー となりました。それでも おかあさん ねこは いっしょうけんめい おちちを あげています。



 それから、こうえんの なかを いろいろ あるくと いろんな ところのポンポンから 

「おなかすいたー」

 って こえが きこえてきました。
 アリさんが いっぱい にもつを はこびながら

「おなかすいたな」

 カブトムシさんが きの じゅえきを さがしながら

「おなかすいたなー」

 すずめのこ たちが でんせんのうえから

「おなかすいた。おなかすいた。おなかすいた」

 とおおくの ほうから カラスの なきごえとともに

「おなかすいたーー。おなかすいたーー」

 と カラスのポンポンの こえが きこえました。


 ななちゃんが あしを とめると ポンポンが いいました。

「ぼくも おなかすいたな。ほんとうは ブロッコリー も おにくも ちゃんとごはん たべたいなー。あー、おなかすいたー」

 それを きいた ななちゃんは かんがえました。
 そして そのひのばん、ちょっとだけ ちょーっとだけ ブロッコリーを たべてみることに したのでした。


 !!


 わたし こんな あじだって しらなかった。
 
「ね、おいしいでしょ」

 ポンポンが うれしそうに いいました。  
 そのひ、ななちゃんは ニコニコ きれいに ごはんを ぜんぶたべました。
 みんなと いっしょに ニコニコ「ごちそうさまでした」 と いいました。

「あー おなか いっぱい」

 それから、しばらくのあいだ、ポンポンと いっしょに いろんな ものを たべてみました。

 やいたおさかな ぎゅうにゅうに トマト なすびに からあげ。ポークビーンズに たきこみごはん すのものに おつけものに なっとう。おとうさんの おつまみだって あじみしてみました。

 ちょっとずつ ちょっとずつ だったけど ポンポンと いっしょに ふだん たべなかったものも たべてみて いろんな あじが あるってわかって ビックリ。 

 ポンポンがわらって、ななちゃんも いっしょに わらって たのしくなって きたのでした。



 そんなこんなで もうすぐ ようちえんの そつぎょうが ちかづいたころには ななちゃんも いろいろ たべれるように なっていました。

「あー、おなかいっぱい。おいしかった」

 きょうも、げんきに ごちそうさまを します。
 そして、さいごは やっぱり これこれ デザートです。
 ポンポンといっしょに、ウ、シ、シ とわらって たべます。

「アイスクリーム おいしー」 

 ななちゃんの かおに えがおの はなが さきます。

「ごはんを ちゃんと たべてると おこられないで ほめられるから。アイスクリーム もっと もっと おししいね」

 ポンポンにも えがおの はなが さきます。


「わたし、ごはん だいすきーー」


 ポンポンは それをきいて あんしんしました。

「ななちゃん。もう ぼくが いなくても だいじょうぶだね」

 と ちいさく ちいさく つぶやきました。そして

「じゃあね。またね ななちゃん。そつぎょう おめでとう」

 と ぽんぽん が いいました。

「ずっと いっしょにいるから だいじにしてね」

 それからは ポンポンの こえは きこえなく なったけど
 だけど たまに てを おなかにのせると あんしんして 

「ギュルル〜」

 って へんじするのでした。



おしまい
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