Sleeping Princess

作家: 穂志上ケイ
作家(かな):

Sleeping Princess

更新日: 2023/06/02 21:46
ラブコメ

本編


 眠り病。それは数百万人に一人かかる病気だ。この病気は一日の半分。つまり12時間を寝て過ごす病気だ。ただ眠っってしまうタイミングは不定期である為、手助けや対処が難しいとされる。
 しかしこの病気には治療法がある。
 それは……。

 ■■■

 この学校には少し変わったやつがいる。
 雪花萌夢。
 そいつはおかしな事にずっと寝ているのだ。
 そのため誰かと親しくしている所を誰も見たことがないらしい。
 多少不真面目な俺だがそいつの話を聞いて驚いた。まさか俺より不真面目なやつがいるなんてな。
 さっきも言ったがやつは学校では殆ど寝ていて、たまに起きている事もあるがそれは本当に希。体育などの授業も参加せず全て見学。ただのサボり魔という訳でもなく、単純にどこか体が悪いののかとの噂もあるが真相は誰も知らない。
 そんなおかしくミステリアスな女に俺は今、……付き纏われている。

 原因は遡る事3日前。

「おい、東堂!てめえどういうつもりだよ!」
「……何が?」
「とぼけんじゃね!俺の彼女を取りやがって」
「あ〜。あの胸でか女か」
「ちっ!覚悟しろよ。ぜっていボコボコにーー」
 主人公は男にパンチを喰らわせた。
「て、てめえ、やりやがーー」
 またも主人公は男を殴る。(ここで主人公が性格上自分勝手である事がわかる)
 そんな中、一人の女の子が
「なんだお前?」
「……」
 だが少女は何も答えずただこちらに歩いてくる。
 そして少女は男(主人公)に寄りかかる。
(なんだこいつ。ふらふらしやがって)
 ここに霞んだ視線で主人公を見るヒロイン。
「おい。……寝てやがる」
 こいつは何しにきたんだ。突然きたと思えば俺に寄りかかって寝るなんて。
 そんな事を思っていると男がこちらに向かって殴りかかってくる。
 まったく、こんな状況でも俺に襲い掛かってくるなんて。男して恥だな。
 俺は女を抱え持ち、向かってくる男に蹴りを一発入れた。
 流石の男も攻撃を何発もくらってる為ダウンした。
 さてと面倒なやつは片付いた。だがこの女……。

「……ん。ここは……」
 ベットから目を覚ますヒロイン。
「あら起きたのね」
 目線を移すヒロイン。その先には女性教師が。
「また途中で寝ちゃったみたいよ」
「そうですか」無表情
 ベットから出ようとすると毛布の上に何故か飴玉が置かれてあった。
「……飴」
 袋から取り出し飴を口に運ぶ。
「甘い」
 
「やっぱ喧嘩の後に飴は最高だ〜」

 翌日
「いてて。やっぱソファーじゃ安眠はできないな」
 保健室に入ってくる主人公。
「おっ、今日は若作り教師がいない。これでしばらくはベットで寝れるな」
 しかしベットに向かうと先約が。
 すうすうと寝息を立てえて眠る少女の姿が。
「こいつは、昨日の……」
 すると部屋に誰かが入ってくる。
「誰かいるの?」
 げっ、この声は若作り教師。
「あら、サボり魔の東堂君じゃない。居眠りにでもしにきたの?それとも……」
「何勘違いしてるか知らないけど、単純にサボりにきただけだ」
「そう、でもベットはその子優先なの」
「へー、それは俺が熱を出しててもか?」
「あら、何ちゃらは風邪をひかないって聞いたけど」
「こ、この若作りめ。俺が馬鹿だってのか!」
「そんな事一言も言ってないわ。それとその若作りってのやめて。まだ20代よ!」
「いや、もう30手前なのに20代って言い張るのはキツいだろ」小声で
「ん?何か言ったかしら?」
「何でもねーよ。それじゃあ俺は戻る」
「それは残念。もう少し話ていけばいいのに」
「誰があんたなんかと」
「いいえ、私じゃないわ。この子とよ」
 振り返るとさっきまで寝ていた少女が体を起こしていた。
「それじゃあ暫くの間その子の事よろしくね〜。あっ、あと変な事はしないように!」
「ちょ、おい!」
 そう言い残し教師は部屋を出て行った。
 何でこんな事に。
 俺はポケットから飴を取り出し、口に運ぶ。
「あっ、それ」
「あ?ったく。ほらやるよ」
「飴。……もしかして昨日の人?」
「東堂修也だ」
「東堂、修也。修也……ありがと」
「いきなり呼び捨てかよ。てかお礼いうならあんな所に来て眠るんじゃねーよ」
「私もできるならそうしたい」
「どういう意味だよ」
「それは……」
 すると彼女は突然眠り出した。
「お、おい」
 少女に呼びかけるが帰ってくるのはすうすうと聞こえる寝息だけ。
「何なんだよ、こいつ」

 ■■■
 翌日。
「な、何だよ」
 廊下を歩いていると目の前に少女が現れ、道を塞いできた。
「話があるの」
「悪いが聞く気は無い。俺も忙しいからな」
「ま、待って」
「……」
 それからというもの俺はあいつに会うたび話があると迫られ、更には付き纏われる始末だ。
 まったく、何なんだよあいつは。
 俺は昨日同様サボるために保健室へと向かった。
「げっ」
 入ると少女の姿が。
「……やっと来た」
「お前、待ってたのか」
「うん」
「何でそこまでするんだ」
「……分からない。でもあなたなら話てもいいって思ったの」
「はあ〜」
 俺は教室の中に入り、彼女と対面するように座った。
「それで話ってなんだよ」
「……実は私眠り病なの」
 その言葉を聞いて思わず立ち上がっってしまった。
「どうしたの?」
「い、いや何でもない」
「そう。それで眠り病って知ってる?」(ここで座る描写)
「……聞いた事はある。最近有名人がその病気だって発表したやつ……」
「この病気は一種の睡眠障害で前兆が無く突然そうなっちゃうの。皆んな気がついてないだけでそういう障害になってる人もいるんだけど私のは別なの」
「何が違うんだよ」
「私のは突然眠っちゃうの」
「それだと他のやつと一緒じゃないのか?眠たくなって居眠りしちゃう感じの」
「一度寝ちゃうといつ起きるか分からないの。それに連続じゃないけど最低12時間はそうなっちゃう」
「お前が病気だっていうのは分かった。けどそれを俺に話て何になる?」
「……分からない。こんな気持ち初めてだから」
「じゃあ聞くがお前はこの病気を治したいと思ってるのか?」
「分からない。だって生まれてからずっとこうだったし。それにこの病気の治し方は」
 そう、この眠り病は治る。
 ただ少し変わった方法でしか治らない。
 それは愛する者とのキスだ。
「私は好きって感情が分からないの。だからこの病気は多分一生治らないと思うの」
 一生治らない、か。
 じゃあなんでお前はそんな悲しそうな顔してるんだよ。
 まあでも。
「じゃあな。俺には関係ない話だ」
「ま、待って」
「離せ」
「駄目。絶対に離さない」
「……」
 俺は彼女がつかんできてもお構い無く、歩き出した。
「今の私じゃこの病気は治せない。でもこの話をできた修也となら治せる気がするの」
「ただの願望だな。そんな事に俺を巻き込むな」
「願望でもいい。だってこうでもしないと先に進めないから!だからこの手は離さない」
「……ちっ。分かったらかその手離せ」
「えっ?」
「ほら、話せよ」
「あ、うん」
「はあ〜。今のお前に足りないのは体験だ。だから感情をだせなかったりする。その手助けをしてやるだけだ」
「いいの?」
「あんだけ頼んどいて何なんだよ」
「だ、だって本当に手伝ってくれるなんて思ってなかったから」
「あれだけ熱心にされたら放っておける方がおかしいだろ。それに……」
「それに?」
「な、なんでもない。それよりだ。俺がするのはただしあくまで手助けだ。後は頑張って自分でその、相手を見つけろ」
「う、うん」
「それじゃあ週末開けとけよ」
「えっ?」

 週末
「ったく。あいつ遅すぎだろ」
 時刻は午後三時。待ち合わせの時間にしては遅いが、あいつのの待ち合わせはこの時間帯でないといけない。
「お待たせ」
 待っていると視線外から突然彼女が現れた。
「おう、やっと来たか」
「待った?」
「ああ、15分も待った」
「そっか。じゃあ早く行こ」
 俺を待たせた事を特に気にせず、目的地へと歩き始める少女。
 まあ別にあいつが悪い訳じゃねーしな。
「ほら、ふらふらするな。ちゃんと俺に捕まれ」
「……ありがと」
 彼女は俺の腕に抱きつき、歩き出した。
 俺とこいつは手伝うに当たってある程度のルールを決めた。
 一つはこいつが起きている時のみ係る事。
 もう一つは一緒に行動する時は俺に寄り添う事。これは突然眠ってしまい危険が及ばない為だ。
「高校生、2枚」
「っ!は、はい。2500円になります」
 俺は財布から金を取り出し、受付に払った。
「私も払う」
「後でいい。それよりいくぞ」
 チケットを受け取り、館内へと入った。
「あれに乗るぞ」
「メリーゴーランド?」
 二人乗りに腰掛け、動くのを待った。
 にしてもこいつ、改めて見るとちっせーな。ジェットコースターとか乗ったら飛んでいくんじゃねーのか?
 そんな事を考えていると機械が動き出した。
 意外にスピード出るんだな。
 1分ほどで機械は止まり、出口へと向かった。
「凄く、楽しかった」
「そ、そうか。それは良かったな」
 全然楽しそうな感じじゃねーんだけどな。
「修也は楽しかった?」
「普通だな」
「そう。……次じゃああれに行こ」
 目線を移すとお化け屋敷と書かれていた。
「ああ」
 お化け屋敷に入る。
「暗いからはぐれるなよ」
「うん」
 中に入ると意外にも暗く、目の前をしっかり見ることができない。
 俺は腕をしっかり掴んでいる事を確認し、歩き出した。
 ここから何回かお化けが出てくる場面を描く。しかしそあまり驚かない。
 そして出口付近にて。
 最後のお化けが出てくる。
 しかし主人公の顔にビビり、戻って行ってしまう。
「意外に怖かった」
「お化け屋敷は苦手か?」
「うん」
「じゃあ無理に行かなくて良かっただろ」
「でも修也と一緒に行きたかったから」
「ふん、それでも無理する必要ないだろ」
「そうかも。けど面白いものが見れたから満足」
軽く微笑む少女。
 こいつ笑うんだな。
「東堂、次行こ」
「そうだな」

「おい、ジェットコースターで寝るな。飛んでいくぞ!」
 だが結局乗り終わっても起きる事はなく、閉館間際で目を覚ました。
「あれ、もう終わり?」
「ああ、寝てたからな」
「……そう」
「また来ればいい。それにこれから色々な所に行くんだから」
「そうだね」

 こうして俺とこの眠り姫との生活が始まった。
 ワクワクしそうな事
 やってみたかった事
 とにかく思いつく事を片っ端からやっていった。
「ここで寝たらずぶ濡れになるぞ」(水族館のふれあい広場にて
「分かった。……」
 バシャン。
「お、おい!」
 急いで彼女を回収するから俺。
「お、おはよ」
「ったく何してんだよ。ふっ」
「……修也笑った」
「笑っちゃ悪いかよ」
「全然。でも笑った所初めてみたから」
「っ!そ、そんな事ねーよ。それよりほら顔拭け」
「ありがと」

 こんな事を繰り返しているうちにある変化が訪れた。
 それはあるカフェに入った日だった。
「本当にこれ食べるのか?」
「うん。前から食べてみたかったから」
 目の前にはデカイパンケーキがあった。
「ん。まあまあ美味いな」
「あっ、何で食べてるの」
「はあ?金は半分出してるからいいだろ」
「そうだけど、最初は私が食べたかった」
「知るかよ。ほら早く食わねーと全部食うぞ」
「だ、だめ!」
 ぱくっ。
「美味しい」
 その時の彼女の顔は少し笑っていた。
 普段感情表現が出来ず、常に同じ表情だったが今回はしっかりと笑っている。
 これなら。

 ある日の帰り道。
「今日で俺はお前の手助けを終わりにする」
「えっ?どうして?」
「もう大丈夫だと思ったからだ」
「私はまだ大丈夫じゃない。もっと修也と色んな事したい」
「駄目だ。最初に言ったはずだ。俺はあくまで手助けをするだけだって」
「……」
「じゃあな。頑張って相手見つけろよ」

 そんな無慈悲な別れから二週間。
 あいつが俺に関わってくる事は無かった。
 これでいい。あいつには同じ事になってほしくないからな。
「……見つけた」
 声の先には彼女が。雪花萌夢がいた。
「何の用だ」
「私、あれから自分で頑張ったの。人を好きになれる様に」
「そうか」
「でも、修也と過ごしてみたいに出来なくて。感情も出せなくて」
「……」
「だから私、修也じゃないとー」
「駄目だ!」
「どうして?」
「その選択をしたら必ず後悔する」
「本当にそうかなんて分からない。なんでそう言い切れるの?」
「……」
「……」
「昔、俺も眠り病だったからだ」
「えっ?」
「だからお前から病気の事を知った時は驚いた。それと同時にこいつはいつ治るか分からない病気と戦わなきゃならないんだって思った」
「それで私の手助けを?」
「最初はすぐにやめるつもりだった。けど昔の自分と重なって中々止めれなかった」
「……」
「お前が今言おうとしてる事は分かる。俺もあの時同じ気持ちだったから。だがそれは一時の気持ちだ。必ず後悔する。そうなる前に違う相手を見つけろ」
 
 チュッ
「これで君の病気は治ったよ。晴れて自由の身だね」
「ありがとう、ございます。でもお姉さんは」
「私の事はいいの。最初にもそう言ったでしょ。そういう契約だし」
「でも俺は、お姉さんの事が!」
「ありがと。でもね私は君の病気を治す為の道具でしかないの。だからその気持ちは偽物なの」
「何で、そんな事を……」
「これは君の為だよ。これからしっかり生活できる様に。そして……普通の恋ができる様に」

「それでも、私は修也の事が好き」
「くっ。俺はお前に同じ気持ちになってほしくない! 真っ当な恋をしてしっかり病気を治して普通の生活をしてほしい。だから俺なんかを選ぶな!」
「それでも! 私は修也を選ぶ。だって私の初恋だから」
「っ!」


「きっと私なんかよりいい人がいる。君を必要とする人が現れるから。その人を幸せにしてあげて。だから修也君、さよなら」

 あの時のお姉さんの悲しそうな顔は今でも覚えてる。
 だからこいつの悲しそうな顔と重なった。
 きっと心のどこかでは無意識にまだあの人の事を。

「この答えが後悔だとしても修也に教えてもらったこの感情が出した答えなら後悔しない」
「……はあ。分かったよ」
「ほんとー」
「ただし、俺はお前に恋心を抱いてない。いいな」
「うん。これからその気にさせるから。その後にこの病気を治す」
「ふん、精々頑張るんだな」
 こうして眠り姫の時は動き出した。
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