鳥居の先になにが見える? ~六十四・イチゴシロップ殺人事件~

作家: 稲荷玄八
作家(かな): いなりげんぱち

鳥居の先になにが見える? ~六十四・イチゴシロップ殺人事件~

更新日: 2023/06/02 21:46
サスペンス

本編


 みんなを驚かせることが好きな俺はある日、かき氷のシロップを見て思いついた。
 このイチゴシロップの赤さなら、騙せるんじゃないかと。
 
 早速俺はイチゴシロップを大量購入。自ら浴びて友人に電話した。

「どうした~?」
「た、助けてくれ! 見たこともないオンナが家に入ってきて襲われて! やめろお前!」
「おい、大丈夫か! もしもし!」
「やばい、助け――」

 意味深な間を残して電話を切る。俺は自室に倒れこみ携帯電話は倒れ込んだ先に投げるようにしておいた。これで舞台は整った。後は友人が来るのを待つだけ。それで俺を発見し、泣き出したところでサプラーイズッ! ってな寸法だ。今からみんなのリアクションが楽しみだぜ!


 …………
 ……
 …
「……こいつ、寝てる?」
「寝てるね、いびき聞こえるもん」
「てかなにこの甘ったるい匂いは」
「血糊のつもりでイチゴシロップでもかけたんじゃね、アリが集ってる」
「うわ、まじだ。てかいたずらにしちゃ、度が過ぎてるよな今回」
「ああ、いい加減うんざりだな」
「……」
「……」
「……」
 … 
 ……
 …………


「昨夜、二階建てアパートの一室にて男性が倒れているとの通報があり救急隊員が駆けつけると血まみれの男性が意識不明の状態で発見されました。その後病院へ運び込まれ死亡が確認されました。なお、男性は大量の血を浴びているほかに、シロップのようなもので全身を汚されており、警察では事件として捜査を行っており――」

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