鳥居の先になにが見える? ~六十・ミルクエイジ~
鳥居の先になにが見える? ~六十・ミルクエイジ~
更新日: 2023/06/02 21:46SF
本編
俺は一般的な家庭に育った、ごく普通の高校生だ。
オヤジは中小企業のサラリーマン、オフクロは昼間だけパートに出る主婦、妹は反抗期真っ盛りの中学二年生。妹が拾ってきた猫のハルの、四人プラス一匹の、本当にごくごく普通の家庭だと思う。
「ただいま」
夜、リビングで寛いでいると、疲れた様子のオヤジがお土産をぶら下げ帰ってきた。何でも珍しい牛乳だそうだ。
「「「おかえり」」」
最近オヤジに対して当たりの強い妹だったがよろこんで挨拶してた。牛乳が好きだから嬉しいんだろう。ニヤニヤと妹を見ていると横っ腹を蹴られた。
「遊んでないで、お夕飯の支度手伝って」
オフクロに言われるがまま配膳を手伝い、少々遅めの食卓へ。食事の席ではもっぱら妹と母が喋り倒し、俺とオヤジはふんふんと頷くだけ。その後は風呂の入る順番でひと悶着あったがその程度で、日中遊んで疲れていた俺は、オヤジのお土産には目もくれず自室に戻った。この時期になると俺の布団に入り込んで湯たんぽになってくれるハルの存在がありがたい。俺は今日もありがとなーなんて声をかけつつ眠りについた。
そして、朝。
目覚めるとハルの姿はもうない。いつものことだと俺は寝ぼけ眼をこすりつつ階段を降りリビングの扉を開けた。
「おは――」
プァーン……プァーン……プァーン!
俺は全力で扉を閉めた。一瞬で目が覚めた。
……なんだ今のは。リビングの奥から圧倒的な量の光源が俺の網膜を襲い、耳朶を打つのは高らかに響くトランペット。しかもどこかで聞いたことのあるような音階。扉を閉めるとどちらも落ち着い……いや、若干光は隙間から漏れている。どういう状況なのかさっぱりわからないが、中を確認しないことには対処のしようがない。
俺は意を決して再度扉を開く。
プァーン……プァーン……プァーン! プァプァーン!! デンドンデンドンデンドンデンドン!!!!!
俺はそっと扉を閉めた。
いや、閉めちゃいけないのはわかっているんだ。でもどうしても閉めたくて仕方なかったんだ。無理だってこんなの、無理無理。ツァラトゥストラがなんか語っちゃってるんだもん! 俺の許容範囲を限界値振り切ってるって!
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「ああ、お前か。いやなんかリビングがおかしなことに――」
階段上から聞こえてきた妹の声に、俺は少なからず安心して振り返り。
階段上から降り注ぐ、圧倒的な量の光源に絶句した。
プァーン……プァーン……プァーン! プァプァーン!! デンドンデンドンデンドンデンドン!!!!!
そして語りかけてくる例のアレ。
光を背に降りてくる妹……らしき女は非常にグラマラスでセクシーだ。肌は輝くような白色で、はれぼったい真っ赤な唇と、ねむたげな大きな目、ゆるくウェーブしたブロンドを室内だというのに風になびかせながら俺の前に降り立つ。マンホールから吹く風にスカートをめくられそうな女優に激似だ!
「んん? どうしたの、坊や?」
坊や!? さっきお兄ちゃんって言ってたのに坊や!? 確かに身長が大きくなって見下ろされてるけども!
「なんの騒ぎだい、マイファミリー?」
俺が何も言えないでいると件のリビングから声が掛かり、ゆっくりと扉が開かれる。
プァーン……プァーン……プァーン! プァプァーン!! デンドンデンドンデンドンデンドン!!!!!
出てきたのは某缶コーヒーのCMに引っ張りだこな激渋ハリウッド俳優と、ローマで休日を満喫してそうな目の冴える女優さんに激似の二人組。開いた口が閉まらないとはまさにこのこと。今起こっている現象に頭が追いついていないのに畳み掛けるようにわけのわからないことが起こる。
そこで俺はリビングに転がっているビンを見つけた。昨夜親父が持ってきたお土産の牛乳ビンだろうか、見たことも聞いたこともない銘柄がしるされている。
「ギャラクシアンジャーニー???」
……おいおいおいおい!? まて、いや! 全くもって意味がわからん!!!
「にゃーん」
猫の声がリビングから聞こえた瞬間、謎の光が俺の視界を埋め尽くす。そして聞こえる例の……
プァーン……プァーン……プァーン! プァピーー!! プァプァプァー!!! プァー!!!! プァプァプァー!!!!!
もうわかった。自己主張の激しいBGMに訳ありに転がる牛乳ビン、様変わり……てゆうか別人と化した家族。もうわかったよ。なにがなんだか全然わからんがわかった。
これは夢だ。絶対にだ。なら俺も乗るしかない!
「俺は筋肉もりもりマッチョマンの変態野郎でよろしく、HΛL」
「NYAAAAN???」
0オヤジは中小企業のサラリーマン、オフクロは昼間だけパートに出る主婦、妹は反抗期真っ盛りの中学二年生。妹が拾ってきた猫のハルの、四人プラス一匹の、本当にごくごく普通の家庭だと思う。
「ただいま」
夜、リビングで寛いでいると、疲れた様子のオヤジがお土産をぶら下げ帰ってきた。何でも珍しい牛乳だそうだ。
「「「おかえり」」」
最近オヤジに対して当たりの強い妹だったがよろこんで挨拶してた。牛乳が好きだから嬉しいんだろう。ニヤニヤと妹を見ていると横っ腹を蹴られた。
「遊んでないで、お夕飯の支度手伝って」
オフクロに言われるがまま配膳を手伝い、少々遅めの食卓へ。食事の席ではもっぱら妹と母が喋り倒し、俺とオヤジはふんふんと頷くだけ。その後は風呂の入る順番でひと悶着あったがその程度で、日中遊んで疲れていた俺は、オヤジのお土産には目もくれず自室に戻った。この時期になると俺の布団に入り込んで湯たんぽになってくれるハルの存在がありがたい。俺は今日もありがとなーなんて声をかけつつ眠りについた。
そして、朝。
目覚めるとハルの姿はもうない。いつものことだと俺は寝ぼけ眼をこすりつつ階段を降りリビングの扉を開けた。
「おは――」
プァーン……プァーン……プァーン!
俺は全力で扉を閉めた。一瞬で目が覚めた。
……なんだ今のは。リビングの奥から圧倒的な量の光源が俺の網膜を襲い、耳朶を打つのは高らかに響くトランペット。しかもどこかで聞いたことのあるような音階。扉を閉めるとどちらも落ち着い……いや、若干光は隙間から漏れている。どういう状況なのかさっぱりわからないが、中を確認しないことには対処のしようがない。
俺は意を決して再度扉を開く。
プァーン……プァーン……プァーン! プァプァーン!! デンドンデンドンデンドンデンドン!!!!!
俺はそっと扉を閉めた。
いや、閉めちゃいけないのはわかっているんだ。でもどうしても閉めたくて仕方なかったんだ。無理だってこんなの、無理無理。ツァラトゥストラがなんか語っちゃってるんだもん! 俺の許容範囲を限界値振り切ってるって!
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「ああ、お前か。いやなんかリビングがおかしなことに――」
階段上から聞こえてきた妹の声に、俺は少なからず安心して振り返り。
階段上から降り注ぐ、圧倒的な量の光源に絶句した。
プァーン……プァーン……プァーン! プァプァーン!! デンドンデンドンデンドンデンドン!!!!!
そして語りかけてくる例のアレ。
光を背に降りてくる妹……らしき女は非常にグラマラスでセクシーだ。肌は輝くような白色で、はれぼったい真っ赤な唇と、ねむたげな大きな目、ゆるくウェーブしたブロンドを室内だというのに風になびかせながら俺の前に降り立つ。マンホールから吹く風にスカートをめくられそうな女優に激似だ!
「んん? どうしたの、坊や?」
坊や!? さっきお兄ちゃんって言ってたのに坊や!? 確かに身長が大きくなって見下ろされてるけども!
「なんの騒ぎだい、マイファミリー?」
俺が何も言えないでいると件のリビングから声が掛かり、ゆっくりと扉が開かれる。
プァーン……プァーン……プァーン! プァプァーン!! デンドンデンドンデンドンデンドン!!!!!
出てきたのは某缶コーヒーのCMに引っ張りだこな激渋ハリウッド俳優と、ローマで休日を満喫してそうな目の冴える女優さんに激似の二人組。開いた口が閉まらないとはまさにこのこと。今起こっている現象に頭が追いついていないのに畳み掛けるようにわけのわからないことが起こる。
そこで俺はリビングに転がっているビンを見つけた。昨夜親父が持ってきたお土産の牛乳ビンだろうか、見たことも聞いたこともない銘柄がしるされている。
「ギャラクシアンジャーニー???」
……おいおいおいおい!? まて、いや! 全くもって意味がわからん!!!
「にゃーん」
猫の声がリビングから聞こえた瞬間、謎の光が俺の視界を埋め尽くす。そして聞こえる例の……
プァーン……プァーン……プァーン! プァピーー!! プァプァプァー!!! プァー!!!! プァプァプァー!!!!!
もうわかった。自己主張の激しいBGMに訳ありに転がる牛乳ビン、様変わり……てゆうか別人と化した家族。もうわかったよ。なにがなんだか全然わからんがわかった。
これは夢だ。絶対にだ。なら俺も乗るしかない!
「俺は筋肉もりもりマッチョマンの変態野郎でよろしく、HΛL」
「NYAAAAN???」