クリスマスローズ〜私を忘れないで
クリスマスローズ〜私を忘れないで
更新日: 2023/06/02 21:46恋愛
本編
「今日も遅いのかな…」
しばらくコールしたが、彼は出ない。
今日も残業か…それとも…
遠距離になってから、すれ違いが多くなった。
エンジニアの彼は残業が多く、朝早い私は彼が帰ってくる頃には夢の中だ。
「しばらく声聴いてないな…次はいつ会えるんだろう…」
夏に会って以来、スケジュールが合わず、師走となってしまった。
「クリスマス…どうするんだろう?会えるのかな…?」
仕事だから仕方がない。
疲れて帰ってきたら連絡する余裕はないんだろう。
そう思って、寂しい気持ちをぐっとこらえて、明るい話題を送る。
『ジャーン!今日はグラタン作ったよ!健斗の好きなポテトグラタン!』
写真も一緒に送った。
我ながらおいしそうにできた。
「また健斗に食べてもらいたいな…」
たぶん返事は朝、スタンプのみだろう。
いつものことだ。
今日はもう寝よう。
そう思った瞬間、既読がついた。
「あ…!帰ってきたのかな?」
『ごめん、遅くなって。電話していい?』
『うん!』
ワンコールですぐ取った。
「おかえり!」
「ただいま。いつも遅くてごめんな」
「ううん、大丈夫。今日も残業?」
「うん。今、新しいシステム開発のチームに入れてもらってるんだ。
俺まだ未熟だから、仕事が追いつかなくて…」
「大変だね…。でも、大事な仕事に携わってるんだから、期待されてるんだよ」
「そうだと良いけどな。頑張らなくちゃな」
「うん…。でも、ちゃんと睡眠も取ってね」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「あのね…」
「ん?どした?」
「ううん。なんでもない。お風呂入って、ゆっくり休んでね」
「ああ。ありがとう。ゆっくり話せなくてごめんな」
「そんなことないよ。声聴けて嬉しかった。ありがとう」
「うん。あ…なかなか返せないけど、LINE来るの嬉しいから、いつでも送って」
「うん。他愛のない話しか送ってないけどね(笑)また連絡するね」
「ありがとう。じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
久々に声が聴けて嬉しかった。
きっと彼には精一杯だったと思う。
でも…ほんとはもっと話したいし、クリスマスの相談もしたかった。
「寂しいなんて、言えないよ…」
頑張ってる健斗を知ってるから、ワガママを言って彼を困らせたくなかった。
「早く会いたいな…」
きっと彼も同じだと思いたい。
また、会えるよね…?
ー数日後ー
「やっべ…LINE返してなかった…」
通知に気づき、LINEを開く。
未読が溜まっていた。
恐る恐るメッセージを開くと、しょんぼりしたスタンプが目に入った。
いつも明るい七海なのに…寂しい思いをさせてるんだな…
『連絡できなくてごめん。ここんとこ仕事で煮詰まってて…寂しくさせてごめんな』
電話する余裕はなかった。
なんとかメッセージを返す。
『おかえり!大丈夫だよ!仕事大変だと思うけど、ちゃんとご飯食べてね』
七海からすぐ返事が来た。
待ってたのかな…
そういえば、クリスマス…
今年は平日だから、会いに行くのは難しい。
『今年のクリスマス、やっぱり会うのは難しいかも…ごめんな』
『気にしないで。だって平日だし、次の日も仕事でしょう?
今年は我慢する。その代わり、お正月は会えたらいいな』
『ごめんな』
『ううん。大丈夫。お仕事頑張ってね』
ークリスマスイブー
「独りぼっちのクリスマスか…」
せめてLINEでは明るくと思って、Merry Xmasのスタンプを送る。
既読はつかない。
ほんとにいつも残業なの…?
『ねぇ、去年あげたお花、どうなった?もう枯れちゃった?』
忙しい健斗が鉢植えを枯らさずに育てられるわけがない。
きっともう枯れてしまっただろう。
あの花は、私の気持ちだったのに…
「横山!もう帰っていいぞ!クリスマスくらい、彼女のとこ行ってやれよ」
「え?!いや…今年は会えないって言っちゃったんですよ」
「サプライズで会いに行ったら、きっと喜ぶぞ!あとは良いから、行ってこい!」
「先輩…!ありがとうございます!すみません!失礼します!」
今年は会えないつもりでいたから、プレゼントも何も用意していない。
こんな時間に空いてる店もないし…
LINEの通知に気づき中を見ると…
「花…あれは確か、クリスマスローズ……あ…!」
「もしもし、七海?今から行くから待ってて!」
「え…?!どういうこと?今年は会えないって…」
「仕事が思ったより早く終わったから、これから車走らせれば何とか今日中に着くから」
「でも…すぐ帰らなきゃならないのに、無理しないで」
「俺が七海に会いたいの!じゃ、あとで!」
俺は急いであの花を取りに家に戻った。
去年のクリスマス、七海から私だと思って育ててねと渡された花。
クリスマスローズ。花言葉は不安を和らげて。それと、私を忘れないで。
遠距離になることが決まっていたから、きっとこの花をくれたんだろう。
七海の方がきっと不安だったろうに。
「七海、待ってろよ。今度は俺がこの花を渡す番だ」
4時間後の七海の笑顔を想像しながら、俺は車を走らせた。
「好きだよ、七海」
普段は照れくさくてあまり言わないが、今日は会ったら言おう。
きっとそれが、一番のプレゼントだから。
ー完ー
0しばらくコールしたが、彼は出ない。
今日も残業か…それとも…
遠距離になってから、すれ違いが多くなった。
エンジニアの彼は残業が多く、朝早い私は彼が帰ってくる頃には夢の中だ。
「しばらく声聴いてないな…次はいつ会えるんだろう…」
夏に会って以来、スケジュールが合わず、師走となってしまった。
「クリスマス…どうするんだろう?会えるのかな…?」
仕事だから仕方がない。
疲れて帰ってきたら連絡する余裕はないんだろう。
そう思って、寂しい気持ちをぐっとこらえて、明るい話題を送る。
『ジャーン!今日はグラタン作ったよ!健斗の好きなポテトグラタン!』
写真も一緒に送った。
我ながらおいしそうにできた。
「また健斗に食べてもらいたいな…」
たぶん返事は朝、スタンプのみだろう。
いつものことだ。
今日はもう寝よう。
そう思った瞬間、既読がついた。
「あ…!帰ってきたのかな?」
『ごめん、遅くなって。電話していい?』
『うん!』
ワンコールですぐ取った。
「おかえり!」
「ただいま。いつも遅くてごめんな」
「ううん、大丈夫。今日も残業?」
「うん。今、新しいシステム開発のチームに入れてもらってるんだ。
俺まだ未熟だから、仕事が追いつかなくて…」
「大変だね…。でも、大事な仕事に携わってるんだから、期待されてるんだよ」
「そうだと良いけどな。頑張らなくちゃな」
「うん…。でも、ちゃんと睡眠も取ってね」
「大丈夫だよ。ありがとう」
「あのね…」
「ん?どした?」
「ううん。なんでもない。お風呂入って、ゆっくり休んでね」
「ああ。ありがとう。ゆっくり話せなくてごめんな」
「そんなことないよ。声聴けて嬉しかった。ありがとう」
「うん。あ…なかなか返せないけど、LINE来るの嬉しいから、いつでも送って」
「うん。他愛のない話しか送ってないけどね(笑)また連絡するね」
「ありがとう。じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
久々に声が聴けて嬉しかった。
きっと彼には精一杯だったと思う。
でも…ほんとはもっと話したいし、クリスマスの相談もしたかった。
「寂しいなんて、言えないよ…」
頑張ってる健斗を知ってるから、ワガママを言って彼を困らせたくなかった。
「早く会いたいな…」
きっと彼も同じだと思いたい。
また、会えるよね…?
ー数日後ー
「やっべ…LINE返してなかった…」
通知に気づき、LINEを開く。
未読が溜まっていた。
恐る恐るメッセージを開くと、しょんぼりしたスタンプが目に入った。
いつも明るい七海なのに…寂しい思いをさせてるんだな…
『連絡できなくてごめん。ここんとこ仕事で煮詰まってて…寂しくさせてごめんな』
電話する余裕はなかった。
なんとかメッセージを返す。
『おかえり!大丈夫だよ!仕事大変だと思うけど、ちゃんとご飯食べてね』
七海からすぐ返事が来た。
待ってたのかな…
そういえば、クリスマス…
今年は平日だから、会いに行くのは難しい。
『今年のクリスマス、やっぱり会うのは難しいかも…ごめんな』
『気にしないで。だって平日だし、次の日も仕事でしょう?
今年は我慢する。その代わり、お正月は会えたらいいな』
『ごめんな』
『ううん。大丈夫。お仕事頑張ってね』
ークリスマスイブー
「独りぼっちのクリスマスか…」
せめてLINEでは明るくと思って、Merry Xmasのスタンプを送る。
既読はつかない。
ほんとにいつも残業なの…?
『ねぇ、去年あげたお花、どうなった?もう枯れちゃった?』
忙しい健斗が鉢植えを枯らさずに育てられるわけがない。
きっともう枯れてしまっただろう。
あの花は、私の気持ちだったのに…
「横山!もう帰っていいぞ!クリスマスくらい、彼女のとこ行ってやれよ」
「え?!いや…今年は会えないって言っちゃったんですよ」
「サプライズで会いに行ったら、きっと喜ぶぞ!あとは良いから、行ってこい!」
「先輩…!ありがとうございます!すみません!失礼します!」
今年は会えないつもりでいたから、プレゼントも何も用意していない。
こんな時間に空いてる店もないし…
LINEの通知に気づき中を見ると…
「花…あれは確か、クリスマスローズ……あ…!」
「もしもし、七海?今から行くから待ってて!」
「え…?!どういうこと?今年は会えないって…」
「仕事が思ったより早く終わったから、これから車走らせれば何とか今日中に着くから」
「でも…すぐ帰らなきゃならないのに、無理しないで」
「俺が七海に会いたいの!じゃ、あとで!」
俺は急いであの花を取りに家に戻った。
去年のクリスマス、七海から私だと思って育ててねと渡された花。
クリスマスローズ。花言葉は不安を和らげて。それと、私を忘れないで。
遠距離になることが決まっていたから、きっとこの花をくれたんだろう。
七海の方がきっと不安だったろうに。
「七海、待ってろよ。今度は俺がこの花を渡す番だ」
4時間後の七海の笑顔を想像しながら、俺は車を走らせた。
「好きだよ、七海」
普段は照れくさくてあまり言わないが、今日は会ったら言おう。
きっとそれが、一番のプレゼントだから。
ー完ー