ハルとナツ

作家: R
作家(かな): あーる

ハルとナツ

更新日: 2023/06/02 21:46
恋愛

本編



ハルは、いつだって笑ってた。
自分が、春生まれだからハルって名前なんだと話す時も、どうせナツは夏生まれなんでしょ?とからかってくる時も。

2人の出会いを祝してお花見〜!とか言って、公園のベンチでお菓子広げたり、
夏には、ポタポタこぼしながらトリプルアイスを食べたよね。ナツ!口のまわりベタベタだよ!なんて、そんなチョコミントがベッタリ付いた笑顔で言われても。

だけど、ハルと出会って、暑くて大嫌いだった夏も、悪くないかな、なんて思い始めてた。

秋には、読書の秋だー!なんて言って、図書委員の子に追い出されるまで図書室で2人で過ごした。私が宿題やってるノートに、ハルが担任のへんな似顔絵描くから吹き出しちゃって怒られて(そりゃそうだよね)、次の日からは、やっぱり食欲の秋だよね!ってなって、毎日食べ歩きしたっけ。

もちろん、クリスマスだって2人で遊んだよね。別れ際、ハルと交換し合った小さなクリスマスプレゼントは、お互い絶対帰ってから開けること!って、何度も念を押された。
まあ、私もその方が助かるけど。柄にもなくメッセージカードなんて入れちゃったからね。

こんなにいつも私といてどうすんの?
彼氏でもつくったら?
2学期の始業式、風が気持ちいい学校の屋上で、私がそんな冗談を言った時も、

ハルはたしかに笑ってたんだ。
あんたも人のこと言えないじゃん。
そんな軽口叩きながら、2人で笑い合った。

でも、すこし悲しそうな笑顔に見えたのは、私の気のせいなのかな。私の声が少しだけ震えていたのには、まさか、気づいてない、よね。


あのクリスマスの日。
別れ際、ハルが寒いよ〜!って大げさに震えてみせるから、ちょっとはあったまるんじゃない?なんて、ふざけてほっぺにキスした私の顔は、溶けちゃうんじゃないかってくらい熱かった。
ちょっ!ナツ〜っ!?
って、ハルのあせった顔初めて見たかも。
2人で鼻とほっぺを赤くして、顔見合わせてさんざん大笑いした後、
ほんじゃあ、またな!
いつも通り、笑顔でハイタッチして別れた。

積もるほど雪が降った日で、帰ったら身体は冷え切ってた。気持ちはポカポカだったけど。なんてね。
いつもより長めにお風呂につかって、脱衣所に出ると寒くてくしゃみが出たから、急いでパジャマを着て髪を乾かした。

部屋に置きっぱなしのスマホが気になったけど、メッセージカードを読んだハルからどんな反応が返ってくるのかなって考えたら、ちょっと見るのがこわかった。だから、すぐには気付かなかったんだ、ハルからの返事も、ハルのママから何件も着信があった事も。



ハル、あんた本当にバカだよ。
最後のメール、私も、ってなに?
そのメール送ったすぐ後にハルは……

クリスマスプレゼントだって、私と丸かぶりじゃん。確かに、可愛いよねーって2人で見てたけど。ペアリングになっちゃってるし。

それ薬指にはめたまま、
ひとりで行っちゃうなんて、

ずるいよ、
ハル。


もっと、ずっと、
一緒にいられるとおもってた。

次の春も、夏も、秋も、冬も。


ハルは、いつだって笑ってた。
涙が止まらない今の私を見たら、きっとハルは、ナツは笑った顔が1番可愛いんだから〜、なんてまたおどけて笑っただろうね。

瞼に浮かぶのは、出会った時と変わらない、悪戯っ子みたいにニヒヒと笑う、私の大好きなハルの笑顔。

あんたの笑顔が大好きだよ、ハル。
0