鳥居の先になにが見える? ~八・おかえりなさい~
鳥居の先になにが見える? ~八・おかえりなさい~
更新日: 2023/06/02 21:46ホラー
本編
近所の公園に異世界へ行ける場所がある。そんな噂が中学校で流れた。
子供たちの間ではそれはもう大盛り上りを見せたし、教師陣も噂の火消しに躍起になっていた。もちろんそんなものはないと誰もが思っている。
それが本当だと知っているのは俺だけ。何故なら俺は実際に異世界を知っているからだ。
件の公園で遊んでいたときのことだ。家に帰るのやだなーと一人ブランコをこいでいた時に、そいつは急に現れた。瞬きの刹那とはああいうことを言うんだろう。俺が呆気に取られていると、現れた人は俺に気がつき話しかけてきた。
「やあ、おはよう。あ、こっちではこんばんは、の時間かな?」
俺の第一印象はなんて胡散臭いやつなんだ、だった。見てくれは俺と同じ中学生。けれどどこか大人っぽい雰囲気を醸し出す男で、やけににこにこしてやがった。そんな輩が先のようなセリフを吐いたんだ、胡散臭い以外の何者でもない。けれど、次のセリフで怪しいと思った気持ちは全部吹き飛ぶことになる。
「異世界に興味ない?」
異世界。
その言葉を聞いたとき、心を掴まれた気がしたね。なんたって異世界。こんなつまんない日常とはまるっきり別の世界なんだ、心ときめかない方がおかしい。
だが、その男が言うには異世界もこことほとんど変わらないらしい。同じように義務教育が有り、政治があり、人は殺してはいけない。俺の想像する異世界とはまるで別物だった。
でも決定的に違うことがあると言う。それは言葉の意味があべこべなんだそうだ。
「おはようはこんばんは。ありがとうはごめんなさい。面白いでしょ?」
男はさもすごいだろうと話すが俺はほとんど興味を失っていた。何も面白くない。ただややこしいだけだ。
「行く? きっと喜ぶよ」
しかし俺ってやつはどこまで行ってもバカだった。こんなつまらない日常を過ごすくらいならちょっぴり刺激があったほうがいい。
肯定の意を伝えると男はいっそうニコニコ顔になって俺の手を掴んだ。最初に現れた場所にいくらしい。
「それじゃ、お幸せに」
意味のわからない言葉と共に背中に軽い衝撃を覚える。何をするのかと俺が振り返れば男の姿はそこにない。辺りを見回してみても人影はなく、白昼夢でも見ていたかのように忽然と姿を消していた。
この世界に嫌気のさした俺が見た夢だったのかもしれない。現にどう思い返してみても男の顔が思い出せない。とするならば、俺はとてつもなく下らない夢を見ていたということだ。
俺は家路についた。あんな馬鹿な夢を見るくらいだ、相当疲れているんだろう。帰って飯食ってさっさと寝よう。
家の明かりはついている。母さんがもう帰宅しているのだろう。
俺は玄関を開けて帰宅を告げた。
「いってらっしゃい、○○君」
0子供たちの間ではそれはもう大盛り上りを見せたし、教師陣も噂の火消しに躍起になっていた。もちろんそんなものはないと誰もが思っている。
それが本当だと知っているのは俺だけ。何故なら俺は実際に異世界を知っているからだ。
件の公園で遊んでいたときのことだ。家に帰るのやだなーと一人ブランコをこいでいた時に、そいつは急に現れた。瞬きの刹那とはああいうことを言うんだろう。俺が呆気に取られていると、現れた人は俺に気がつき話しかけてきた。
「やあ、おはよう。あ、こっちではこんばんは、の時間かな?」
俺の第一印象はなんて胡散臭いやつなんだ、だった。見てくれは俺と同じ中学生。けれどどこか大人っぽい雰囲気を醸し出す男で、やけににこにこしてやがった。そんな輩が先のようなセリフを吐いたんだ、胡散臭い以外の何者でもない。けれど、次のセリフで怪しいと思った気持ちは全部吹き飛ぶことになる。
「異世界に興味ない?」
異世界。
その言葉を聞いたとき、心を掴まれた気がしたね。なんたって異世界。こんなつまんない日常とはまるっきり別の世界なんだ、心ときめかない方がおかしい。
だが、その男が言うには異世界もこことほとんど変わらないらしい。同じように義務教育が有り、政治があり、人は殺してはいけない。俺の想像する異世界とはまるで別物だった。
でも決定的に違うことがあると言う。それは言葉の意味があべこべなんだそうだ。
「おはようはこんばんは。ありがとうはごめんなさい。面白いでしょ?」
男はさもすごいだろうと話すが俺はほとんど興味を失っていた。何も面白くない。ただややこしいだけだ。
「行く? きっと喜ぶよ」
しかし俺ってやつはどこまで行ってもバカだった。こんなつまらない日常を過ごすくらいならちょっぴり刺激があったほうがいい。
肯定の意を伝えると男はいっそうニコニコ顔になって俺の手を掴んだ。最初に現れた場所にいくらしい。
「それじゃ、お幸せに」
意味のわからない言葉と共に背中に軽い衝撃を覚える。何をするのかと俺が振り返れば男の姿はそこにない。辺りを見回してみても人影はなく、白昼夢でも見ていたかのように忽然と姿を消していた。
この世界に嫌気のさした俺が見た夢だったのかもしれない。現にどう思い返してみても男の顔が思い出せない。とするならば、俺はとてつもなく下らない夢を見ていたということだ。
俺は家路についた。あんな馬鹿な夢を見るくらいだ、相当疲れているんだろう。帰って飯食ってさっさと寝よう。
家の明かりはついている。母さんがもう帰宅しているのだろう。
俺は玄関を開けて帰宅を告げた。
「いってらっしゃい、○○君」