わるいおかあさん

作家: はちゃこ
作家(かな): はちゃこ

わるいおかあさん

更新日: 2023/06/02 21:46
詩、童話

本編


4歳のあっちゃんは、お母さんのことが大好き。
ごはんも、お風呂も、おふとんも、いつも一緒です。

でも、あっちゃんは、お母さんの秘密を知っています。
一緒にお風呂に入るとき、いつも見ていたお母さんのおなか。
そこには、おへその下から縦に伸びた赤い傷がありました。

4歳のあっちゃんは、知っています。
赤ずきんちゃんや、七ひきの子ヤギ。
物語に出てくる悪いオオカミは、
お腹をチョキチョキして、石を詰められて、
最後は溺れて死んでしまうことを。

お母さんは、一体だれを食べたんだろう。
あっちゃんは、急に心臓がどきどきしてきました。

あっちゃんは、お母さんのおなかを調べることにしました。
おなかに向かって「おーい」と呼んでみました。
でも返事はありません。

耳をくっつけて、様子をうかがってみました。
お母さんのおなかが、小さくぐぅとなりました。
あっちゃんは、すごく心配になってきました。

「ねぇ おかあさんは ぶたさん たべたこと ある?」

「豚肉?食べるよ」

「とりさんは?」

「食べるよ」

「うしさんは?」

「食べるよ」

それを聞いて、あっちゃんは、とうとう泣き出してしまいました。
ぶたさんも、とりさんも、うしさんも、みんな食べちゃうなんて、
どの絵本のオオカミよりも、食いしん坊の悪いお母さんです。

お母さんは、あっちゃんが泣いたので、とてもびっくりしました。
でも、理由を聞くと、優しくこう言いました。

「あのね、ここには、昔、あっちゃんが入ってたの。
これは、あっちゃんが、おなかから出てきたときの傷だよ」

何ということでしょう。
お母さんは、あっちゃんまで食べていたのでした。

「いつ、あっちゃんを たべちゃったの!
ちゃんと ごめんなさい しなさい!」

あっちゃんはそう言って、お母さんをさらに困らせるのでした。
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