凍気

作家: 詩月 七夜
作家(かな): しづき ななや

凍気

更新日: 2023/06/02 21:46
詩、童話

本編


斬るような冬の冷気の中に
その身を置いたことはあるか

風が刃の如く凍み入り肌が裂けるような夜に
その身を晒したことはあるか

激情が無言に変わり
安堵が静寂へと凍りつく

そんな生命の持つ温もり全てを否定する
厳格な凍気の中で
わたしはヒトとして在らねばならぬ
魂という炎を絶やさずに
それを掲げて歩き行かねばならぬ
己が心音に希望を見出し
目映い朝日を見つめるまでは
ただひたすらに進まねばならぬ

そう わたしはヒトである限り
あらゆる凍気に負けてはならぬ

ならぬのだ
0